相続税を負担するべき人とは?法定相続人以外の人も含まれる?
法定相続人以外の人であっても次の条件に当てはまる人はすべて、相続税を負担するべき人です。
1.相続または遺贈により財産をもらった相続人
被相続人の死亡によって遺産相続の相続人となり、相続財産をもらう相続人は、原則として相続税を負担します。
2. 遺贈により財産をもらった、法定相続人以外の人
法定相続人以外の人、内縁の配偶者や友人、婿や嫁などが遺贈によって遺産をもらう場合にも、相続税がかかります。
相続放棄して、すでに相続人ではなくなっている人が、被相続人の生命保険金や死亡退職金として財産を受け取った場合にも「法定相続人以外の人」という条件が当てはまるため、相続税の負担をすることになります。
ちなみに、相続放棄した人がもらう財産に非課税枠は適用されることなく、もらった金額すべてが相続税の課税対象となります。
遺贈でかかる相続税に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【遺贈でも相続税はかかる!知っておきたい遺贈と相続税の基礎知識】
3. 死因贈与により財産をもらった人
「私が死んだらこの財産をあげる」という贈り主の意思表示を受け、受け取り主として「では、もらいます」という双方の意思に基づく贈与契約を結んでいる場合、贈与による財産にも相続税が加算されます。
死因贈与には贈与税がかかると勘違いされがちですが、死因贈与の場合の税金は相続税になります。
4. 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産をもらった人
相続時精算課税制度もその名前の通り、相続が発生した時に相続税が課税されます。
相続時精算課税制度を利用して贈与してもらった遺産はすべて相続財産に加算され、相続税が計算されます。相続財産に加算される時の価格は、贈与の時点での価格が適用されます。
相続税の基本的な計算方法とは
相続税の計算は、基本的に次の3ステップを踏んで進んでいきます。計算方法には、相続人も法定相続人以外の人も大きな差はありません。
・課税価格の計算
各相続人がもらった遺産のうち、相続税が課される財産を合計します。各相続人の課税価格が算出されたら合計し、相続税の基礎控除額を差し引きます。
・相続税の総額の計算
課税価格総額から、各相続人の法定相続分に応じた取得金額を算出して税額を求め、合計します。
・各人の納付税額の計算
最後に、各相続人の課税価格に応じた相続税額を計算し、各種控除や加算を行い、最終的な納付税額を求めます。
息子の嫁が保険金を受け取った場合の相続税
女性の平均年齢が男性よりも長いこともあり、夫が先だった後に夫の両親の介護を義理の娘にあたる妻が対応するというケースが増えているようです。このような場合、両親からすると献身的に尽くしてくれる嫁に自分の遺産を渡したいと思うことも多く、生命保険金の受取人に指定することも少なくありません。
そこで今回は、法定相続人ではない息子の嫁が保険金を取得する際の相続税について実際に計算してみたいと思います。
まずは全体の金額から算出する
相続税は相続人ごとに計算するのではなく、まずは全体の相続税を計算して求めます。
仮に相続財産と相続人が次の通りだったとします。
・相続財産2億円
・保険金5,000万円
・法定相続人は妻、子A、子B、保険金は息子の嫁が受取人
この場合、相続税の基礎控除額は次のようになります。
3,000万円+600万円×法定相続人3人=4,800万円
よって課税遺産総額は、2憶5,000万円-4,800万円=2億200万円
ちなみに、生命保険の保険金には500万円×法定相続人の人数分の非課税枠がありますが、適用できるのは法定相続人だけのため、今回の相続税計算では控除されません。
この課税遺産総額を法定相続分に従って按分計算します。
妻 2億200万円×1/2=1億100万円
子A 2億200万円×1/4= 5,050万円
子B 2億200万円×1/4= 5,050万円
次に、それぞれの金額に対して相続税を求めていきます。
妻 1億100万円×40%-1,700万円=2,340万円
子A 5,050万円×30%-700万円= 815万円
子B 5,050万円×30%- 700万円= 815万円
こうして算出したそれぞれの相続税額を合計すると3,970万円になります。
次に実際に遺産を受け取った割合に応じて、この相続税額を按分計算して振り分けていきます。
妻 3,970万円×0.4=1,588万円
子A 3,970万円×0.2=794万円
子B 3,970万円×0.2= 794万円
息子の嫁 3,970万円 × 0.2 = 794万円
これが各人の相続税になりますが、実はここから息子の嫁の相続税額は割り増し計算されることになります。
相続税の2割加算の対象
次に掲げる人が遺産を取得すると、先ほどの計算によって算出した相続税額に対して2割加算されます。
・孫
・兄弟姉妹
・子の配偶者
・愛人
・その他親族以外
これらの人については、生前に亡くなられた本人の財産形成に寄与している可能性が低いことから、通常の相続人に比較して相続税が割り増し計算になります。
例えば先ほどの事例の場合、実際の相続税は次のようになります。
794万円×0.2=158.8万円
794万円+158.8万円=952.8万円
このように納めるべき相続税がかなり割り増しになりますので注意が必要です。
2割加算は相続財産が高額になればなるほど、割り増しになる金額も大きくなりますので、遺贈を受ける際には十分注意しましょう。
法定相続人以外の遺産相続では、2割増の相続税がかかる
法定相続人以外の人が被相続人の財産を取得する場合には、相続税の納税額が2割加算されます。具体的には、次の立場に該当しない人について、2割加算の対象とされています。
・被相続人の配偶者
・被相続人の一親等の血族(子どもや両親)
・被相続人の代襲相続人となった直系卑属
つまり、被相続人の兄弟姉妹や祖父母、代襲相続人ではない孫、友人や内縁の配偶者などの法定相続人以外の他人が遺贈を受ける場合には、相続税額が2割増しになるということです。
一親等の血族には養子である子どもも含まれていますが、養子が被相続人の孫(孫養子)であり、代襲相続人ではない場合には、例外的に相続税2割加算の対象となってしまいます。
この場合になぜ2割加算が起きるのかについては、下順位の相続人が遺産を相続するのは偶然性が高いこと、子どもを飛び越して孫が財産を取得することで相続税の課税を1回免れるためとされています。
なお、法定相続人以外の人などが相続税の2割加算をされた後の相続税額が、その人の課税価格の70%を超える場合には、70%の金額を相続税額とすることになります。
つまり、どんなに高いケースでも相続税額は課税価額の70%までに抑えられるという意味になります。
まとめ
法定相続人以外の人への遺贈に対する相続税の2割加算は、税額の面でもかなり大きく影響します。
相続税の節税対策として孫養子が有効と考えられていた時期もありますが、孫養子の場合も2割加算の対象となってしまいますので、相続税対策としての孫養子を検討している場合は注意深く考慮しましょう。