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生前からできる相続税対策の基本とは

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相続税対策の3つの面

相続税対策は1種類ではありません。少なくとも、以下の3つの面から対策を考える必要があります。

・相続税の納税資金対策
・相続財産の評価額を下げるための対策
・相続財産の量を減らすための対策

では、1つずつ考えていきましょう。

 

対策1:相続税の納税資金を準備する

相続税に限らず、原則として税金は現金で一括納付しなければなりません。相続税においては、現金の代わりに不動産などを活用して相続税を納める「物納」などの方法もありますが、認められるケースは非常に稀です。

そこで、相続税を納めるための現金を準備しておく、という必要が生じます。

早めにこの対策を講じるべきなのは、財産のうち、現金の占める割合が少ない人です。財産のほとんどが不動産や動産、著作権などの無形資産なのであれば、納税資金の準備について、ぜひとも検討しましょう。

具体的には、不動産や動産の一部を売却するなどの方法で、現金を準備しておくことができます。さらに、生命保険に加入しておくことでも、相続開始後に相続人が受け取ることのできる現金を増やすことができるでしょう。

 

対策2:相続財産の評価額を下げる

相続税は、財産の評価額に応じて計算されます。評価額が高ければ相続税も高くなってしまうため、評価額を下げる工夫が必要です。

例えば、1億円の現金はそのまま1億円の価値があるとして評価されます。しかし、この1億円を現金のままにせず、土地や不動産などに換えれば、評価額は低く抑えられるのです。

仮に、1億円で同額の土地を購入した場合、それだけで相続税評価額は80%程度抑えられます。

そこにアパートなどを建築すれば、貸家建付地として、さらに20%ほど評価額を抑えることができるでしょう。

現金1億円のままで残す場合と比較すると、不動産に換えることで約6,000万円程度まで評価額を下げることができるのです。

また、都心の土地や不動産など、評価額が高くなりやすい不動産を所有しているなら、評価額を下げるための対策を検討しましょう。

土地は、建物を建てたり、分筆したりすることで評価額を大幅に下げることができます。あまり使用していない不動産なら、賃貸物件にすることで貸家建付地として評価額を抑えられるでしょう。

納税資金の点で不安があれば、売却を視野に入れることも考えてみると良いかもしれません。

 

対策3:相続財産を減らす

現金以外の財産も多く所有している人は、相続財産をいくらか減らすことができないか、検討すべきでしょう。財産そのものが減れば当然、相続税も抑えられます。

生前にできる相続税対策として効果的な方法のひとつは、生前贈与です。ただし、原則として、生前贈与には相続税よりも高税率な「贈与税」がかかってきます。

生前贈与に適用できる各種特例制度を理解しておくなら、効率よく相続財産を減らす上で有利になるでしょう。

特例には、贈与する相手や金額、贈与財産の使用目的などの条件があるものの、贈与税を抑える又は贈与税を非課税にして生前贈与する点で大いに役立ちます。

代表的な特例は、以下の5つです。

・小規模宅地等の特例
・教育資金の一括贈与の特例
・住宅取得資金の贈与の特例
・結婚・子育て資金の一括贈与の特例
・相続時精算課税制度

現金をそのまま財産として残すのではなく、生命保険の掛け金に充当することもできます。生命保険の死亡保険金には、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があるため、生命保険を活用することで相続税の課税対象となる財産を圧縮し、相続税を抑えることが可能です。

 

バランスの取れた相続税対策を

ここまで、相続税対策の3つの側面を解説してきました。これらの対策を財産の状況に合わせて講じることに加えて、よく考えたい重要な点があります。

いずれの対策も、適度に行う必要があるのです。

例えば、相続税の納税資金を作ることにばかり一生懸命になるなら、相続税評価額の減免のない現金という財産が増えすぎ、相続税額を吊り上げてしまう結果になります。

相続財産を減らし過ぎてしまえば、相続人が相続できる財産が減り過ぎ、相続人の生活に影響するかもしれません。さらには、被相続人となる自分の余生も困窮しかねないでしょう。

いくら相続財産の評価額を下げられても、納税のための現金が足りなくなってしまうと相続人は大変な思いをしますので注意が必要です。

 

まとめ

今回ご紹介した方法以外にも、養子縁組を活用して相続税の基礎控除を拡大するといった対策をとる方も少なくありません。

被相続人となる人が生前から相続税対策をしておくことで、相続人の負担は最小限になり、スムーズに相続を終えられるでしょう。

個々の状況によって、最適な相続税対策は異なります。相続税対策は専門家である税理士と二人三脚で行うのがベストです。