相続税の更正の請求とは
相続税申告をした後に、申告税額が正しい税額よりも多すぎることに気がついて訂正する手続のことを「更正の請求」といいます。
相続税の計算はとても複雑で、税理士でも一筋縄ではいかないため、一度相続税申告をした後に税理士にセカンドオピニオンを依頼すると、相続税の払いすぎが発覚して更正の請求が必要になる場合があるのです。
相続税の更正の請求が必要になる原因
相続税の更正の請求は、単なる計算ミスだけでなく、次のようなことが原因で相続税の払いすぎが発生します。
・不動産などの財産評価の際に、減額できる要素を見落としている
・認知などによって相続人の人数に変更が生じた
・遺留分侵害額請求によって侵害額が確定した
・遺言書が見つかった
・遺贈の放棄があった
・未分割の遺産について分割が確定した
このような事実が発覚した場合は、更正の請求によって払いすぎた相続税の還付を受けることができます。
更正の請求の申告期限について
更正の請求については、次のような期限が設定されているため、間違いに気がついたら期限に間に合うように手続きをする必要があります。
・相続税申告期限から5年以内
・その事情を知った日の翌日から4ヶ月以内
また、小規模宅地等の特例などの減額特例を適用する場合は4ヶ月以内が期限となります。
基本的に納税額が多すぎても、税務署側から「多すぎるので返します」とは言ってきません。期限内に更正の請求をしなければ、たとえ払いすぎでも還付が受けられないため、十分注意しましょう。
修正申告と更正の請求の違い
一般的に相続税申告を間違えて訂正をすることを「修正申告」という人が多くいますが、すでに申告した内容を修正するという意味では、更正の請求と同じなのですが、修正申告の場合は、申告税額が正しい税額より少なかった場合にする申告のことをいう点で明確に異なります。
税金を多く申告している場合に行う更正の請求については、仮にしなかったとしても特段の問題は生じず、納税者が実質的に損をするだけです。ところが、税金を少なく申告している場合については、期限内に修正申告をしないとペナルティが課されることになります。
修正申告の期限とペナルティについて
修正申告については、法的に期限が定められているわけではないものの、相続税の申告期限までに修正申告がされなければ、のちに税務署の調査で発覚すると過少申告加算税などのペナルティが課税される可能性があります。
過少申告加算税は、増額する税額に対して原則10%が課税され、例外として当初申告した税額から増加する金額と50万円のいずれか多い金額を超える場合は、超えた税額の部分に5%が課税されるため、注意が必要です。
また、増加した税額に対して、原則として申告期限の翌日から修正申告した税額の納付日までの期間について「延滞税」が課税されます。
申告の間違いに気がついた税務署が独自に税務調査を行ってミスが発覚する前に、自主的に修正申告をすれば過少申告加算税だけ回避することが可能です。
一旦提出した申告書の取り下げ
相続税の更正の請求については、相続税のセカンドオピニオンによって発覚することが多いですが、ケースによっては相続税申告をした直後、間違いに自ら気がつくことも少なくありません。
特に税理士に依頼せず自力で相続税申告をした人の中には、提出した翌日にはミスに気がつくケースもあります。
相続税申告をしてすぐに間違いに気がついた場合については、修正申告や更正の請求ではなく、申告自体を取り下げてしまうということも可能です。
取り下げ書の書き方
一度提出した相続税申告書のミスに気がついたら、提出した申告書自体をなかったことにしてもらうことが一番手っ取り早いため、税務署長に対して「取り下げ書」を提出します。
取り下げ書に決まった書式はありませんが、次の事項について記載して提出することが重要です。
・納税者名
・納税地
・連絡先
・取り下げたい申告書を提出した日
・申告書を取り下げて処分して欲しい旨
このように取り下げしたい書類が明確に特定できるよう、情報を記載して税務署長あてに郵送で提出します。
ただし、相続税申告の取り下げはあくまで例外的な措置のため、取り下げ書を送る前に一度税務署へ連絡を入れて取り下げ書を送る旨を伝えておくとスムーズです。
また、取り下げによって申告期限を過ぎてしまうような場合だと、取り下げに応じてもらえず、修正申告や更正の請求をするよう指示される可能性もありますので、取り下げたい場合はできる限り早めに税務署に連絡を入れるようにしましょう。
まとめ
相続税の更正の請求と修正申告は、似たような名称ですが意味が全く異なる点に注意が必要です。更正の請求には期限がありますので、相続税の払いすぎが疑われる場合については、早めに税理士に相談して手続きに着手することをおすすめします。