遺言書の効力
基本的に亡くなられた方の財産を相続できるのは、民法で決められている法定相続人だけですが、遺言書に記載しておけば相続人以外の親族はもちろんの事、他人であっても遺産を取得させることが可能です。
これを遺贈といい、内縁の夫婦や愛人などに遺産を取得させる手段として用いられることがあります。
このように選択肢の幅が広がるというメリットがありますが、一方で仕組みをよく理解しないまま遺言をすると、かえって他人に迷惑をかけることもあるので注意が必要です。
包括遺贈で迷惑をかける
遺言書の内容としてよく見かけるのが、
「遺産の半分を〇〇に遺贈する」といった遺言書です。
遺言書の内容を細かく書くのが面倒という方は、このように割合だけを指定した遺言書を書く傾向があるのですが、このような遺言書のことを包括遺贈といいます。
包括遺贈は実質的に相続人と同じような状態になるので、指定された割合の中でどの遺産を取得するのかについて、他の相続人とともに話し合って決めることになるのです。
借金があるとヤバい
包括遺贈で盲点となるのが借金です。
通常、相続人以外の人に遺贈するケースというのは、ある種感謝のようなものでもあるので、プラスの財産を遺贈しても借金を返済してほしいとは思っていません。
ところが、包括遺贈で割合だけ指定して遺言した場合については、割合に応じた借金についても返済する義務を負うことになります。
このことを知らない人が多いので、安易に包括遺贈の遺言書を書いてしまい、相続発生後に遺贈された側が苦労するというケースが発生するのです。
特定遺贈なら回避できる
お世話になった人に借金を背負わせず、プラスの財産のみを渡したいという場合は、取得させる財産を指定して遺言する特定遺贈を利用する必要があります。
特定遺贈とは、一丁目1番地1号の土地というように取得させる財産を特定して遺贈することで、包括遺贈とは違いそれ以外の遺産には関わりません。よって、被相続人に借金があったとしても特段の影響を受けないのです。
相続人に遺贈できる
特定遺贈であれば借金の返済は回避できますが、遺贈を受けた人が相続人だとたとえ特定遺贈だとしても相続人としての地位に基づいて、法定相続分に従った割合については借金返済義務を負うため注意が必要です。
ペットに対する遺贈の裏技
遺贈は誰に対しても可能で、法人や団体に対して寄付することもできます。
ただ、時々ペットに遺贈したいという相談を受けることがあるのですが、残念ながらペットは法律上ものとして扱われてしまうので、いくら遺言書に書いたとしても遺産を直接的に取得させることができません。
ペットに財産を渡したい方へのアドバイス
ペットに直接遺産を取得させることができないので、たとえペットフード1年分を遺贈すると書いたところで効力はありません。とはいえ、自分の死後愛するペットが何不自由なく暮らせるのか心配なことと思います。
そのような場合は、負担付き遺贈という方法があります。
ペットに遺産を直接渡すことはできませんが、信頼できる人に一定の遺産を渡した上でその代わりにペットの世話をするよう指示することは可能です。
例えば、ペットを世話するために十分すぎる預金を遺贈する代わりに、生涯ペットの面倒を見るなどの負担を課します。このように直接的ではなく、人への遺贈を通して間接的にペットへ自分の遺産を渡すことは可能です。
まとめ
遺言書を書くことで残された家族がスムーズに相続しやすくなりますが、相続の基本知識を理解しないまま好き勝手な遺言書を書いてしまうと、かえって混乱を招くリスクがあります。
トラブルを回避するという目的を達成するためには、まず弁護士などの専門家に相談して、自分の意思を実現するためにはどんな遺言内容が適切なのかアドバイスを受けた方がいいでしょう。