相続税 2021.10.13

コロナ禍で需要が高まる遺言書

高齢になり、人生の終わりを考え死と向き合うとき、家族や親族など、大切な人のために遺言書を残したいと考える方は多くなってきました。しかし、コロナウイルスが猛威を振るっている現在、高齢者に限らず、もっと若い世代でもいつ命を失ってもおかしくない状況です。
そこで今回は、コロナ禍における遺言書の意義や作成の注意点について詳しく紹介していきたいと思います。

記事ライター:棚田行政書士

コロナ禍における遺言書の意義

コロナに感染してしまった場合、隔離され、そのまま亡くなってしまうケースも珍しくありません。

残された家族は深い悲しみに襲われるでしょう。

そんな中でも、遺族は遺産相続の手続きを進めていかなければなりません。

その際、遺言書が残されている場合とそうでない場合とでは、相続に関する手続きや話し合いの煩雑さが全く違ってきます。

言うまでもなく、遺言書が残されていた方が遺族の争いは少なくなります。

また、ただでさえ揉めると言われている遺産相続ですが、家族が把握していない負債がある場合が一番厄介です。

借金など負債がある場合の遺言書

遺産相続というと、残された財産を相続し親族で分け合うイメージですが、実は借金や負債も相続の対象となります。

ですから、借金があることを誰にも告げることなく亡くなってしまった場合、相続人はプラスの財産だけでなく、何も知らずにマイナスの財産も相続することになるわけです。

コロナ禍により、このようなケースが増加しているとも言われています。

負債よりもプラスとなる財産の方が多い場合は良いですが、問題となるのはマイナスの財産、つまり借金などの負債の方が財産を上回っていた場合です。

負債があるままコロナで亡くなってしまったケース

まさか自分がコロナウイルスに感染し重症化してしまうとは思わず、遺言書の用意などはしないまま亡くなってしまった方もいらっしゃるでしょう。

そのようなケースを例に説明していきたいと思います。

 

コロナにより突然帰らぬ人となった故人は、遺言書を残していなかったので、相続人は民法で決められている通りの法定相続を選択したとします。

故人の財産は4,000万円でした。

故人には、妻一人、成人している子どもが一人いたので、法定相続分は、妻が二分の一、子が二分の一なので、2,000万円ずつです。

しかし、実は、故人には家族に伝えていない借金が5,000万円ありました。

この場合、借金も法定相続人である妻と子で二分の一ずつ、つまり2,500万円ずつ相続することになるのです。

故人に借金があるのを知らずに相続してしまったため、妻と子は債権者に対し、それぞれ2,500万円を返済しなければなりません。

2,000万円の財産も相続しましたが、それでも500万円足りず、妻と子は実質500万円ずつの借金を背負うことになったのです。

 

上記のケースの場合、もしその額がわからなくても、故人に借金があることを妻子が知っていれば、相続放棄、または限定承認という手段で借金の相続を回避出来ました。

※相続放棄とは?

相続放棄は、全ての財産を放棄する手続きです。

プラスの財産も、マイナスの財産も全て放棄することになるので、プラスの財産よりも借金の方が明らかに上回っているような場合に選択されます。

※限定承認とは?

限定承認は、相続したプラスの財産の限度内でマイナスの財産の支払いをする手続きです。

マイナスの財産の支払い後、財産が残った場合、それを相続することが出来ます。

もしかして借金があるかもしれないけれど、総額がわからないような時などに有効です。

 

上記のケースでは、プラスの財産もマイナスの財産も全て相続する単純承認をしてしまったので、妻と子は負債を背負うことになってしまいました。

相続放棄、限定承認ともに、相続開始から3カ月以内に選択する必要があり、期間内にどちらも選択しなかった場合は単純承認したとみなされますし、3カ月以内に単純承認をするという意思表示も可能です。

このように、コロナウイルスに罹患したせいで、借金があることを知らせる機会がないまま亡くなってしまった場合、大切な家族に迷惑をかけてしまうことにもなりかねないので、早い段階から遺言書を作成しておくのが重要なのです。

負債があるのならば、遺言書には、プラスの財産だけでなく、必ずマイナスの財産も記載しましょう。

その際、単に借金の総額を書くのでは不十分です。

誰(どこ)から、いくら借りているのか、借金が複数ある場合は、それぞれの詳細も明確にする必要があります。

 

遺言書ではなく、財産目録を残すことで対策も

とはいえ、いくらコロナ禍の世の中であるといっても、年齢的に今の段階で遺言書を残すなど考えられない、という方も多いでしょう。

そういう方には、財産目録を作成することをお勧めします。

財産目録とは、プラスの財産、マイナスの財産など、全ての財産を書き出したものです。

プラスの財産であれば、不動産、預貯金、現金、有価証券、貴金属、美術品、自動車などが挙げられます。

マイナスの財産は、借金や未払いの税金・家賃・医療費などですが、忘れがちなのが連帯保証人になっている場合はそれも必ず記載するということです。

連帯保証人は、債務者が返済不可能になった場合に代わりに返済しなければなりませんが、連帯保証人としての債務も相続の対象となるためです。

財産目録は、パソコンで作成することも出来ますが、全てのページに署名と押印が必要です。

 

まとめ

まだまだ先のことだと思っていた方にとっても、コロナ禍により、遺言書は出来れば健康なうちに用意しておきたいものになりました。しかし、人生の終わりと向き合い、自ずと遺言書を残す高齢者の方と、コロナ禍のせいで死と向き合わざるを得なくなった世代の方には大きな差があります。

まだ遺言書のことは考えられない方や、書くのに抵抗がある方は、財産目録だけでも作成しておくと良いでしょう。もしそれさえ面倒だと思う場合、「借金が〇万円ある」、という内容のメモを残しておくだけでも違ってきます。たとえ公的な力は無くても、そのメモを見た遺族は、相続する際に、単純承認、相続放棄、限定承認のいずれにするか慎重に選ぶことが可能になるからです。

いつ何があるかわからないコロナ禍ですから、亡くなった後に大切な家族に迷惑をかけないためにも、負の財産があることは元気なうちに必ず伝えておきましょう。

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