幸せな生活に突然の相続
XさんはYさんと婚活サイトで知り合い結婚しました。
夫Yさんは再婚者で、前妻Aとの間に子供Bもいるとのことでしたが、前妻Aが引き取っていて慰謝料がないことや、養育費の負担はあるもののYさんの収入が1,000万円以上あって金銭的に問題なかったことから、安心して結婚しました。
その後、XとYの間には子供Zが生まれ幸せな家庭生活が続いていました。
ところが、ある日Yさんが仕事に出かけた際、突然の心臓がマヒしてそのまま息を引き取ってしまったのです。
妻Xさんは悲しみにくれました。何しろ、子供Zはまだ5歳でこれからという時ですし、教育費もこれからたくさんかかる時期です。ただ、夫Yは収入が多かったので預金が1億円ほどあり、妻Xは亡き夫Yに心から感謝していました。
妻Xは夫Yの相続人は配偶者である自分Xと、実の子Zの2名で遺産は1/2ずつ分ければ問題ない、子Zは未成年だから事実上自分が1億円を管理してZの学費などを工面しよう、そう考えていたのです。
ところが、相続税の申告手続きを税理士に相談した際に、妻Xは衝撃の事実を知らされることになります。
離婚しても子Bも相続人になる
税理士に相談して、亡くなった夫Yの出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本などを取得したところ、税理士が前妻との間に生まれている子Bの存在に気が付いて、妻Xにこう告げたのです。
「Xさん、Yさんには前妻さんとの間に子Bさんがいるようです。この方も法律上はYさんの実子なので法定相続人になります。連絡先はわかりますか?」
妻Xは愕然としました、もう何年も前に離婚している前妻の子Bは相続人になるとは思ってもいませんでした。妻Xは確認するように税理士に質問しました。
「離婚していても、相続人になるのですか?」
「はい、前妻Aは離婚しているので当然相続人ではありませんが、前妻との間に生まれた子BはYさんと血がつながっているので、たとえ親が離婚したとしても相続人になります」
「・・・、じゃあ取り分はどれくらいあるのですか?」
「お子さんZと同じです。ですから、相続分は妻Xさん1/2、子Zさん1/4、子Bさん1/4となります」
「そんなの納得できません」
まさか、一度もあったこともない前妻の子に遺産を取られるとは想像もしていなかったXさんは困惑しましたが、税理士に促されYのスマホの電話帳などからBの携帯電話番号を探し出し、しぶしぶ連絡を取りました。
子Bは未成年だったものの
子Bは高校生で未成年でしたが何とか連絡を取ることができました。
すると、すぐに前妻AからXさんに連絡がきたのです。
「息子Bから話は聞きました。法定相続分は必ずいただきますので、Yの財産目録をデータで送ってください」
妻Xさんは前妻の強気の態度を不快に感じましたが、しぶしぶ送ることにしました。
すると前妻Aからまた電話がありました。
「あなたが今住んでいる家は、もともと私が気に入って購入したものです。ちょうど財産の1/4くらいの価値はあるはずなので、その家を息子Bが相続するので出て行ってください」
さすがのXさんもこの話に激怒し、完全に対立関係になってしまいました。
結局、お互い弁護士を立てて裁判で争うことになってしまったのです。
再婚相手との相続のリスク回避策
今回の具体例のように、夫が突然死してしまったようなケースについてはなかなか相続のリスク管理は難しいところです。ただ、再婚者の場合はこのように前妻との間で激しいバトルが繰り広げられてしまう可能性があるので、何等か対策をとっておく必要があります。
生前贈与などで対策を
子供がいる再婚者と結婚した場合で、その子供と同居していないような場合、自分や実子の相続財産をできるだけ確保しておくためには、できるだけ生前贈与によって再婚者に遺産が集中しないよう分散させることをおすすめします。
もちろん再婚者本人の希望次第ですが、後妻やその子供に多く相続させていいのであれば、遺言書を書くよりも早めに細かく生前贈与しておく方が確実です。
遺言書だと結局遺留分でもめてしまうことが多いので、そこまで確実な対策にはなりえません。
まとめ
再婚者と結婚する時は、前妻との間に子供がいると万が一の時に相続になりえるということに注意が必要です。そしてほとんどのケースで前妻が相続に口を出してきます。
完全にトラブルを回避することは難しいですが、連絡先くらいは最低限把握しておきましょう。