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死亡直前の婚姻届。受理された時点て”意識不明でも有効?

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相続する「配偶者」には内縁の妻・夫は含まれない

相続のとき、亡くなった人の配偶者は必ず遺産を相続できることはご存じの方が多いと思います。配偶者の法定相続分は最低でも2分の1。亡くなった人に妻がいれば、その妻が財産の半分以上を相続することになるのです。

仮に故人が妻以外の人に財産を譲る旨の遺言書を書いていたとしても、妻には遺留分と言って最低限の取り分が保障されています。さらに、配偶者は相続税の課税においても優遇されており、1億6,000万円までの財産を相続しても相続税はかかりません。

相続の場面で圧倒的に優遇されている「配偶者」ですが、法律婚をした正式な妻・夫のみが該当します。たとえ夫婦同然に暮らしていても、内縁関係や事実婚のパートナーには相続権はありません。

 

内縁の妻に財産を相続させる方法は?

さまざまな事情で婚姻届を出せなかったけれど、事実上夫婦として長年暮らしている人もいるでしょう。いわゆる内縁関係です。法律婚はしていないけれど、自分の財産は内縁の妻に引き継がせたいと考える男性も多いのではないでしょうか?

内縁の妻は法定相続人ではありませんが、遺言書を書けば、内縁の妻に財産を相続させることができます。民法上の相続のルールよりも、遺言の方が優先するからです。

なお、遺言書を書く以外に、婚姻届を出す方法もあります。婚姻届を出して法律婚を成立させれば、内縁の妻は法律上の妻になります。なお、死亡直前に婚姻届を提出するケースを「臨終婚」と呼ぶことがあります。

 

内縁の妻を法律上の妻に。婚姻届を書いたが・・・

婚姻というのは、男女が婚姻の意思や届出の意思を持って役所に婚姻届を出すことにより成立します。ただし、婚姻届を出してすぐ死亡した場合には、婚姻の有効性が問題になったり、親族との間でトラブルになったりすることがあるので注意が必要です。

ここで、臨終婚をしようとしたある男性の話をしましょう。男性には20年連れ添った内縁の妻がいました。家族に結婚を反対されたけれど一緒になりかったため、事実婚状態を続けてきたのです。

あるとき男性は、ガンで余命数か月と宣告されました。死期が近づいていることを知り、長年自分の世話をしてくれた内縁の妻と正式に婚姻したいと考えた男性。内縁の妻に役所で婚姻届を取ってきてもらい、2人で署名捺印しました。

その翌日、妻は役所に婚姻届を提出。無事受理されてホッとしたのも束の間、妻は自分の携帯に病院から着信が入っていたことに気付きました。病院に電話してみると、夫の容体が急変し、今朝から意識不明とのこと。妻は慌てて病院に駆け付けましたが、そんな妻を待っていたように、夫は息を引き取ったのです。

 

実は財産を持っていた男性。妻は相続できる?

男性が亡くなった後の葬儀で、悲しみにくれる妻の前に現れたのが男性の弟。男性の親は既に亡くなっていて、唯一の兄弟が弟です。男性と弟は疎遠になっており、妻も弟と会ったのは初めてでした。

弟は妻の顔を見るなり、「兄は婚姻届を出したとき意識不明だったんだから、婚姻は無効だ!」と言いました。弟は、妻が遺産目当てで婚姻届を出したと決めつけ、「裁判を起こす!」と騒ぎ出しました。

聞くところによると、男性は実家の多額の遺産を相続したとのこと。そして、その遺産には手を付けず預貯金として持っていたのです。相続人は自分だけと思っていた弟は、突然配偶者が現れて納得がいかなかったのでしょう。妻は男性に遺産はそれほどないと思っていたのでびっくりしました。

 

婚姻届が受理された時点で意識不明でも可

婚姻が成立するためには、婚姻届が受理された時点で婚姻の意思が継続していなければなりません。もし婚姻届を書いた後、どちらかが婚姻を思いとどまったら、たとえ婚姻届が出されても無効になるのが原則です。

この事例で妻が婚姻届を出したとき、夫は意識不明でした。夫が婚姻意思を継続していたかどうか正確にはわかりません。婚姻は無効になりそうな気もします。

結論から言うと、この夫婦の婚姻は有効に成立していると考えられます。事実上の夫婦共同生活関係だった人が婚姻意思を持って婚姻届を書いた場合には、受理された当時意識を失っていたとしても婚姻は有効という裁判例があるからです。

婚姻が成立しているので、相続人は妻と弟の2人。相続分は妻が4分の3、弟が4分の1です。弟も裁判を起こす前に納得して大きなトラブルにはならず、妻は婚姻届を書いて財産を残してくれた夫に感謝しました。

 

まとめ

今回の事例では妻は無事財産を相続できましたが、臨終婚では問題が起こることも多くなります。内縁の妻がいる場合には、早い段階で遺言書を作成しておくのがおすすめです。遺言書を用意しないまま死期が迫ったときには、婚姻届を出せば財産を残せることも知っておくとよいでしょう。