親の土地を相続する権利は兄弟で平等
兄弟全員が親の相続人になる
親が亡くなったとき、子は必ず相続人になり、親の財産を相続することになります。戦前の家督相続の時代には、親の財産は長男が相続していました。しかし、現在では、親の財産を相続する権利は、どの子も同じです。
息子と娘で相続できる財産の割合が変わるわけでもありません。兄弟(姉妹)みんな同じ割合の相続権を持ちます。ここでいう兄弟には、異母兄弟や異父兄弟も含まれます。会ったことがない兄弟でも、親の相続人としては同じ立場になります。
土地は簡単に分けることができない
現金や預金と違い、土地は簡単に分けられるような性質のものではありません。兄弟が何人もいる場合、親の相続の際に、土地の分け方でもめてしまう可能性があります。
土地は共有にすることもできますから、親から相続した土地を兄弟で同じ持分ずつ共有することも可能です。しかし、兄弟で土地を共有することは、トラブルを招く原因になることがあります。
たとえば、兄弟の一人が土地を売りたいと思っても、他の兄弟全員が同意しなければ、実際に売ることはできません。土地の上に建物を建てたい場合でも同様に、兄弟全員の同意が必要になるのです。
相続において兄弟で揉めるケース
遺言書が残されていない
亡くなった親が遺言書を残していれば、遺言書に従って相続をすればよいだけなので、兄弟間で揉めるようなことにはなりません。一方、遺言書が残されていない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行って遺産の分け方を決めなければならず、兄弟間で揉めてしまいがちです。
遺産が不動産に偏っている
遺産の中に現金や預金がたくさんあれば、兄弟間で公平に分けやすくなります。しかし、遺産が不動産に偏っている場合には、分けるのが困難です。土地の場合には分筆して分ける方法もありますが、土地の上に建物が建っていれば権利関係が複雑になってしまいます。建物に関しては、物理的に分けることはできません。遺産に含まれる不動産の割合が多いほど、揉めやすくなるのです。
不動産を共有にすることもできますが、兄弟で不動産を共有することは、トラブルを招く原因になることがあります。たとえば、兄弟の一人が土地を売りたいと思っても、他の兄弟全員が同意しなければ、実際に売ることはできません。土地の上に建物を建てたい場合でも同様に、兄弟全員の同意が必要になります。不動産を共有にしても問題が解決するわけではないのです。
兄弟で親とのかかわり方に違いがある
兄弟と言っても、親とのかかわりは同じではありません。たとえば、兄は家を出て行ってずっと戻ってこなかったけれど、弟は親の近くで献身的に親を支えてきた場合、弟は兄に財産を渡したくないと思うでしょう。兄弟間で親とのかかわり方が違うと、不平等感を感じて揉めやすくなります。
異母兄弟や異父兄弟がいる
親が再婚している場合には、異母兄弟や異父兄弟がいることがあります。全くかかわっていなかった異母兄弟・異父兄弟でも、亡くなった親の子供であれば、相続の場面ではかかわらなければなりません。異母兄弟や異父兄弟との遺産分割協議がスムーズにいかず、揉めてしまうこともあります。
遺産が空き家になった実家だけ
一人暮らしだった親の残した財産が実家の土地・建物だけで、子供は全員遠方に住んでいるといったケースでは、空き家になった実家を誰が相続するかで揉めてしまいがちです。古い実家の土地や建物には資産価値がなく、売却しようにも売れないことがあります。実家を相続すれば管理の手間や固定資産税の負担が発生してしまいますし、建物を取り壊すにも費用がかかります。空き家になった古い実家は、兄弟のうち誰も相続したがらないことも珍しくないのです。
親の土地を兄弟で分ける方法
遺産分割協議で土地を相続する人を決める
兄弟で親の土地を相続する場合には、遺産分割協議をして、土地を誰が相続するかを決めます。なお、もう一人の親が生きている場合には、同じく、相続人として遺産分割協議に加わってもらう必要があります。
現物分割による分け方
遺産分割協議では、相続人全員が法定相続分相当の遺産を取得できるように分けるのが原則です。兄弟の一人が土地を取得する場合には、他の兄弟は土地と同等の財産を取得できなければなりません。
たとえば、長男、長女、次男の3人が相続人の場合、長男が2,000万円の土地をもらい、長女が預金2,000万円、次男が株式2,000万円をもらうというふうに分けることになります。このような遺産分割の方法を「現物分割」といいます。
換価分割による分け方
遺産分割で長男が土地をもらうと、他の兄弟がもらうものがなくなってしまうということもあります。この場合には、土地を売却してお金に換え、お金を兄弟で分ける方法があります。このような遺産分割の方法を「換価分割」といいます。
換価分割を行った場合には、譲渡所得が発生し、譲渡所得税がかかることがあります。譲渡所得税は、相続人全員に対してかかります。ただし、土地が親の自宅の敷地で、親と同居していた兄弟がいる場合、その兄弟は3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。
代償分割による分け方
親の遺産は土地しかないけれど、その土地を親が事業に使っており、事業を手伝っていた長男が取得したいというようなケースもあります。
この場合には、長男から他の兄弟に相続分相当のお金(代償金)を払って、兄弟全員の取得額が平等になるように分ける方法があります。
遺産を取得した人が代償金を払うことにより他の相続人の取り分を調整する方法は、「代償分割」と呼ばれます。代償分割では、代償金に充てる現金が必要になるので、土地を相続する長男が現金を用意できなければ、実現困難になります。
親の土地を兄弟で相続する際の注意点
遺産分割協議をしなければ土地は共有のまま
亡くなった親の土地がある場合、相続人全員で遺産分割協議を行って土地を誰が相続するかを決めなければなりません。しかし、相続手続きは面倒な上に費用もかかるため、遺産分割協議を行わず、そのまま放置してしまうことはよくあります。
遺産分割が終わっていない土地は、相続人全員の共有状態です。上にも書いたとおり、兄弟で土地を共有していると、トラブルを招くことが多くなります。また、もし兄弟のうちの誰かが亡くなって次の相続が発生すれば、土地に対して権利を持つ人が増えてしまい、さらに争いになる可能性が高くなります。
亡くなった親の土地については、相続人である兄弟全員で速やかに遺産分割協議を行って、相続方法を決めましょう。
相続する人によって相続税が変わる
親の土地を兄弟で相続する場合、兄弟のうち誰が相続するかによって相続税が大きく変わることがあるので注意しておきましょう。というのも、小規模宅地等の特例という相続税の特例があるからです。
相続税を計算する際に、土地の評価を8割減額できるのが、小規模宅地等の特例です。小規模宅地等の特例は、亡くなった人名義の自宅の敷地や事業用店舗の敷地に適用されます。
小規模宅地等の特例は、誰が親の土地を相続しても適用されるわけではありません。土地を取得する相続人の要件があります。
たとえば、兄弟のうち、親と同居していた人が土地を相続すれば、相続税申告期限まで所有と居住を継続することにより、特例を受けられます。一方、親と同居していた人がいるのに、他の兄弟が土地を相続した場合には、特例の適用は受けられません。
また、親と同居していた人がいない場合でも、持家がある人が土地を取得すると、特例の適用は受けられません。
相続税がかかるケースでは、兄弟のうち小規模宅地等の特例が適用できる人が土地を相続するようにして、相続税を節税することを検討しましょう。
既に亡くなっている兄弟がいればその子供が相続人になる
兄弟の中に亡くなった親よりも先に亡くなっている人がいる場合、代襲相続によりその子供(被相続人の孫)が相続人になります。つまり、亡くなっている兄弟を除外して遺産分割協議を行えばよいわけではなく、亡くなった兄弟の子供を加えて遺産分割協議を行わなければなりません。亡くなっている兄弟に複数の子供がいれば全員が相続人になるため、相続人の数が増えることもあります。
代襲相続により相続した人は、本来相続人になる人の相続分を引き継ぎます。たとえば、兄も弟も生きていれば相続分は2分の1ずつになるケースで、兄が既に死亡しておりその子供が2人いる場合には、兄の子供1人あたりの相続分は4分の1です。
相続税の基礎控除額は相続人の人数が増えるほど大きくなるので、代襲相続があれば基礎控除額が増えることもあります。相続税がかかると思っていたケースでも、代襲相続により課税対象でなくなることもあるので注意しておきましょう。
まとめ
親の土地を兄弟で相続する場合には、揉める要素が多々あります。実際に相続が発生してから争いにならないよう、親が生きている間に遺言書を書いてもらうなどして相続対策をしておくのが有効です。相続税がかかるケースでは、相続税を節税するための対策も考えておきましょう。