土地の相続手続き完了までの期間を短縮すべき理由
相続手続きの期間の始点は、被相続人の死亡です。一方、相続手続きの期間の終点は、相続税の申告と納付が完了した時点と言えます。土地の相続手続きのみで考えると、土地の「相続登記」の完了によって期間終了となります。
土地の相続登記とは、被相続人名義の土地を相続人名義に変更するための手続きです。
いつまでに完了すべきという期間の定めはありませんが、できるだけ早く、どんなに遅くとも相続期間が終了する前には、終わらせておきたい手続きです。土地の相続登記をしない限り、土地を売却することも担保にして融資を受けることなどはできません。
また、相続登記には、手続きを急ぐべき別の理由もあります。相続登記をしない限り、土地についての権利を正当なものにできないという点があるからです。
通常、不動産の登記は登記義務者(売主など)と、登記権利者(買主など)が共同で行うのが原則です。しかし、相続登記の場合、登記義務者はすでに死亡している被相続人です。そのため、登記権利者が単独で申請することが認められています。
遺産分割協議または遺言により土地を相続する相続人は、いずれも登記権利者となり、法定相続分についての相続登記は、各相続人が独断で行うことができてしまうのです。
つまり、土地の相続登記手続きをせずに長期間放置しておくなら、他の相続人が勝手に相続登記を済ませ、自分の持分だけを売却してしまうことも有り得るということです。
一度、相続登記をされてしまえば、土地を取り戻すことは非常に困難です。持分を勝手に登記した相手に登記の取り消しを求めるとしても、持分をすでに売却してしまったのであればもう取り返しがつきません。
問題の土地は売却先との共有物となり、何をするにも売却先の同意が必要になってしまいます。
遺産分割協議や遺言によって土地の相続が決定していると思っていても、相続登記を完了するまではただの内定に過ぎません。極力短い期間で、相続登記を完了させなくてはならないのです。
土地の相続手続きの流れ
では、相続期間の開始から相続手続きの期間終了までの流れを、ダイジェストでご紹介しましょう。
1.遺言書の有無を確認する
遺言書で、「○○の土地は○○へ相続させる」などの明確な指示がある場合は、遺言書で指名された相続人は単独で相続登記ができます。遺言書があれば遺産分割協議も行わずに済むため、相続期間が開始したら、まずは遺言書の有無を確認しましょう。
2.相続人の調査
遺言書が見つからなければ、相続人たちが自力で相続を進めていくことになります。相続人となる人を一人残らず把握するために、被相続人の出生から死亡までの期間の戸籍すべてを集め、隅々まで調べます。
3.土地の権利関係の調査
被相続人の財産であると認識していた土地が、実は他人との共有物だったというケースもあります。
権利関係が明らかになっていない状態では、意味のある遺産分割協議はできません。どんな場合でも、必ず固定資産課税台帳などを調べ、被相続人以外の権利者がいないかどうかを確認しましょう。
ここまでの手続きを、相続期間の開始から約3か月以内の期間で完了させることが望ましいです。
4.遺産分割協議を行う
法定相続分を基準として、誰がどの遺産を相続するのかを話し合って決めます。遺産分割協議には、相続人全員の出席または意思表示が必要です。
各相続人の取り分が決まる遺産分割協議は、相続手続きの中で最も長期間を費やすことになる可能性があります。
5.相続登記
遺産分割協議が成立し、土地を相続する相続人が決定したのであれば、速やかに相続登記を行いましょう。遺産分割協議から相続登記までの期間が空けば空くほど、前述のようなリスクが大きくなります。最小限の期間内に手続きを済ませましょう。
土地の相続手続きは、この時点でいったん区切りを迎えます。ここまでの手続きを、遅くとも相続期間の開始から9か月以内には終えたいところです。
6.相続税の申告と納付
最後に、相続税を申告して納付します。
ここまでの手続きを、相続期間の開始からおよそ10か月以内に終了させることが求められています。
土地など、評価額を計算する必要のある財産があると、相続税関連の手続きにはある程度の期間を要します。専門家に依頼する場合は、さらに期間に余裕を持たせる必要があるため、すべての手続きを前倒しするような意識で、早めに済ませることがポイントになるでしょう。
まとめ
相続手続き全体を終了させる期間の目安は約10か月とされていますが、土地の相続登記は極力早く済ませることが重要です。相続した土地を本当に自分のものにするために、速やかに相続登記手続きを完了させましょう。