相続した土地を使わない場合放置していてもいい?
土地の所有者になれば義務や責任が発生
親が持っていた土地を相続により取得することがあります。相続した土地が遠方にある場合などは、土地を使う予定もなく、そのまま放置してしまうこともあり得るでしょう。
土地を使っていなくても、所有者である限り、様々な義務や責任が発生します。土地の所有者には固定資産税が課されますから、税金を支払わなければなりません。
土地の所有者には、土地が安全であるように、きちんと管理しておく責任もあります。土地に生えた雑草や置いてある物で他人に迷惑をかけるようなことがあれば、損害賠償責任を問われることもあります。
相続した土地を使わない場合には、売却してしまった方が、メリットが大きいことがあります。相続した土地は放置しておかず、自分で活用するか、売却するかをしっかりと検討しましょう。
土地を売却する前に相続登記が必要
相続した土地を売却する場合、亡くなった人名義のまま売却することはできません。一旦自分の名義に変更してから、売却手続きを行う必要があります。不動産の名義変更は、法務局で相続登記をすることによって行います。
土地を売却しない場合でも、相続登記は必要です。土地を自分名義に変えておかなければ、他人に貸すなどして活用することができません。そのため、将来売却する段階になって相続登記をしようとしても、スムーズに手続きできないことがあります。
土地の相続が発生したら、早い段階で相続登記手続きをしておきましょう。
土地を売却により譲渡したときにかかる税金とは?
土地の譲渡所得に対して譲渡所得税が課税される
土地を譲渡したことにより「譲渡所得」が発生している場合には、譲渡所得税の課税対象になります。譲渡所得とは、土地の売却代金から土地を取得したときの代金(取得費)、売却の経費(譲渡費用)を差し引いた売却益のことです。
譲渡所得税は、以下の計算式で算出される課税譲渡所得に税率をかけて算出します。土地を売却すれば、必ず税金が発生するわけではありません。
課税譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
相続した土地については、被相続人が取得したときの代金が取得費になります。取得費が不明な場合には、売却価格の5%を取得費とすることができます。
譲渡費用には、土地の売却のときにかかった仲介手数料、印紙代、登記費用などが含まれます。
譲渡所得税の税率
譲渡所得税の税率は、長期譲渡所得か短期譲渡所得かで変わります。
①長期譲渡所得(土地の所有期間が5年を超える場合)
税率20%(所得税15%+住民税5%)
②短期譲渡所得(土地の所有期間が5年以下の場合)
税率39%(所得税30%+住民税9%)
※さらに、所得税額の2.1%の復興特別所得税が加算されます。
相続により取得した土地を譲渡した場合には、被相続人が土地を取得した日から譲渡した年の1月1日までの所有期間で、長期か短期かを判断します。相続した土地については、税率の低い長期譲渡所得になるケースが多いということです。
譲渡所得税には特別控除がある
譲渡所得税を計算するときには、譲渡所得から差し引きできる特別控除額があります。代表的なものが、マイホームを売ったときの特別控除で、マイホーム特例とも呼ばれます。
マイホーム特例では、居住用財産(自宅の土地・建物)を譲渡した場合に、3,000万円の特別控除が受けられます。
相続した土地が親と一緒に住んでいた自宅の敷地で、相続後に売却した場合には、マイホーム特例により譲渡所得税の負担が軽くなることになります。
確定申告が必要
譲渡所得税が課税されるケースでは、確定申告を行って納税する必要があります。確定申告は、土地を売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間に行います。
ただし、譲渡所得税が課税されないケースの場合、原則として確定申告は必要ないですが特別控除を受けたい場合は確定申告をする必要があるので注意しましょう。
土地を売却する際は複数の不動産会社から査定をしてもらう
相続した土地を売却する場合は、不動産会社に依頼することになると思いますが、その際、どのくらいの価格で売却可能なのかは、複数の会社から査定してもらいましょう。
会社によって、査定額に数百万の開きがでることがあるからです。
少しでも高く査定してくれた不動産会社に依頼したいところですが、担当者が誠実な対応をしてくれているかどうか、信頼できるかどうかを重要視する方が良いでしょう。
いくら高く査定してもらっても、その根拠が説明できないような会社はやめた方が賢明です。
土地を相続後に売却する場合、節税になる方法とは?
相続税申告期限から3年以内に売却
相続した土地を相続税の申告期限から3年経った日までに譲渡した場合には、支払った相続税額の一部を譲渡所得税の取得費に加算できる特例があり、相続税がかかるケースでは、相続税申告期限から3年以内の売却で節税になります。
相続した空き家はリフォームするか更地にして売却
空き家になっている実家の土地・建物を相続した場合、空き家を耐震リフォームするか、更地にして土地を売却すれば、譲渡所得税の3,000万円の特別控除が受けられ、譲渡所得税の負担が軽くなります。
出来るだけ正確な取得費を知る
不動産を購入した時の代金である取得費ですが、相続で取得した土地の場合、「親が購入したものなので取得費がわからない」という方が多くいらっしゃいます。
取得費がわからない場合は、税金が高くなってしまう可能性が高いです。
譲渡所得税は、譲渡所得に税率をかけて計算するため、「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で求められる譲渡所得が低いほど税金は少なくてすみます。
取得費がわからない場合は、売却額の5%を取得費とすることになるため、実際の取得費よりも低く算出されてしまうことが多いです。
取得費が低くなるということは、譲渡所得が高くなるので、譲渡所得税も高くなってしまうのです。
ですから、出来る限り正確な取得費がわかる資料を集め、取得費が低く計算されてしまうのを防ぐ必要があります。
不動産購入時の売買契約書があれば一番良いですが、見つからない場合、以下のような方法があります。
・過去の通帳があれば、記帳内容から推察出来る場合があるので探してみる
・住宅ローンの契約書から取得費が分かる可能性があるので探してみる
・当時仲介してくれた不動産会社に連絡を取る
・抵当権の設定額から購入時の価格を推測する
・市街地価格指数を調べることで土地の取得費を割り出す
これらの方法で見つかった資料や情報があった場合、取得費としてみなすことが出来るのかを税務署に相談しましょう。
譲渡費用を余すことなく計算する
前項で説明したように、譲渡所得は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で求められるため、正確な取得費を知るだけでなく、譲渡費用も漏れなく計算した方が節税に繋がります。
譲渡費用には、土地の売却のときにかかった仲介手数料、印紙代、登記費用をはじめ、売却のための広告料、測量費、鑑定料、借家人がいた場合は立退き料、負担した場合は買主の登記費用、建物の取り壊し費用、買主との交渉のために使用した交通費なども含まれますので、そういった費用も全て譲渡費用として計算しましょう。
ただし、抵当権抹消費用や引っ越し代などは含まれないので注意してください。
また、ケースによって異なる場合があるので、譲渡費用として認められるかどうかは税務署に確認し判断を仰ぎましょう。
低未利用土地の特別控除を利用する
令和2年に「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」が創設され、個人が、都市計画域内にある低未利用地を500万円以下で売却した場合、譲渡所得から100万円を控除することが出来るようになりました。
低未利用地とは、空き家や空地、空き店舗などや、資材置き場、野ざらしの駐車場など、ほとんど利用されていない土地のことです。
つまり、相続した空き家を売却し、500万円以下であれば、100万円の控除が受けられるということです。
ただし、控除を受けるためには要件があり、特に注意しなければならないのが「売った年の1月1日において、所有期間が5年を超えること」でしょう。
その他の要件は、国税庁の「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」、こちらのページをご覧ください。
ふるさと納税を利用する
自治体へふるさと納税をすると、寄付金額のうち2,000円を超える金額が住民税から控除され、所得税の還付を受けることが出来ます。
譲渡所得には、所得税と住民税がかかるので、このふるさと納税を利用することで節税になるのです。
ふるさと納税の最大の魅力は、節税をしながら寄付をした自治体の名産品や特産物などの返礼品を受け取ることができるところでしょう。
控除には上限額がありますが、所得が多いほど上限額も増えますので、相続による土地を売却し、所得税が多くかかる場合はふるさと納税での節税効果も高くなります。
まとめ
土地を相続した後に売却する場合は、譲渡所得税がかかる場合があるので注意が必要です。
しかし、マイホーム特例をはじめとした特別控除もありますし、節税方法もあるので、自分がどのような控除や特例を受けられるのか、要件などを確認し、出来るだけ譲渡所得税がかからないようにしましょう。