相続した土地の名義変更に必要
遺言書のない遺産相続では、土地の相続登記(名義変更)の際に遺産分割協議書が必要です。遺産分割協議書は、遺産の分け方についての話し合いがまとまった時に作成する書面です。
遺産分割協議書の作成は相続人の義務とはされていないため、必ず作成しなければならないものではありません。しかし、土地の相続登記や預貯金の払い戻しなど、相続における種々の手続きで必要書類として提出を求められます。
遺産分割協議書の書き方
では、遺産分割協議書の書き方についてみていきましょう。遺産分割協議書の冒頭に記載すべき基本的な条項は、以下のようなものです。
1.タイトル(遺産分割協議書)
・被相続人の氏名
・被相続人の生年月日
・被相続人の本籍
・被相続人の死亡年月日
続きに、「平成〇年〇月〇日に死亡した被相続人〇〇の相続人全員は、被相続人の遺産を協議により下記の通り分割することに同意した」などの文言を記載します。
死亡年月日と被相続人の氏名、遺産分割を行う意思がはっきりと表されていれば、この通りの文言でなくても問題ありません。なお、ここで相続人全員の氏名も明記できればベストです。
次に、相続する財産の種類と相続人の氏名を記入します。例えば土地の場合、次のように記入できます。
下記の土地は相続人〇〇が相続する。
所在 東京都○○市○〇町〇丁目
地番 〇番地
地目 宅地
地積 ○○㎡
相続する財産すべてについて、「何を、誰が、どれくらい」相続するのかが分かるような書き方で記入することが重要です。
最後に、「上記の通りに遺産分割協議が成立したので、相続人全員の署名押印の上、各相続人は本協議書を所持する」などと記入して締めくくります。
相続人全員の住所氏名を連記し、実印を押印すれば、遺産分割協議書は完成です。遺産分割協議書が完成した日付を記入するのも忘れないようにしましょう。
遺産分割協議書に、決まった書式はなく、相続人の署名以外は、パソコンで入力したものでも構わないことになっています。
土地の情報は、登記の通りに
遺産分割協議書に土地のことを記入する時には、注意すべき点があります。土地についての記載は、法務局などで取得できる「登記事項証明書」にある通りに、一字一句相違ないよう記載するのがポイントです。
よく、遺産分割協議書に固定資産税評価証明書の内容を記載してしまったというミスが起こります。固定資産税評価証明書の内容が登記事項証明書と違っている場合もあるということは、あまり知られていません。
遺産分割協議書に記載された土地の情報が登記事項証明書の内容と違っている場合、相続登記の申請ができない可能性があります。遺産分割協議書の作り直しは大変な手間を要しますので、十分注意したい点です。
なお、「1番地の2」などの表記を「1-2」などに省略して記入するのは論外です。登記事項証明書を写すような意識で、一文字も相違ないように記入しましょう。
土地を分筆する際の遺産分割協議書について
土地を相続するケースでは色々な事情から、土地を複数個に分ける「分筆」の登記をする場合もあります。土地の分筆登記をする場合は、遺産分割協議書に「どの土地のどの部分を誰が相続するのか」について、明確に記入しなければなりません。
しかし、文章だけで土地の一部分を明確に示唆することは非常に困難であり、誤解を招きかねません。そこで、分筆された土地の遺産分割協議書には「測量図面」を添付することが求められています。
必ず、境界確定測量が完了した後の測量図面を添付しましょう。そうでなければ、土地の分筆登記を無事に完了できない可能性があるためです。
分筆登記ができない図面の一例には、測量を行っておらず、相続人自らがメジャーなどで単純にサイズを測っただけの図面が挙げられます。
土地の面積は、土地家屋調査士による測量でなければ正確には把握できないため、図面として有効なものではありません。
また、土地の境界確定がされていない図面も論外です。分筆登記の前には、隣接地の所有者と協議して土地の境界を確定しなければなりません。
土地の境界が不確かな図面を遺産分割協議書に添付しても、土地の分筆登記に際して行われる測量で寸法や面積の食い違いが判明してしまい、結局遺産分割協議書を作り直すことになるでしょう。
まとめ
相続した土地を自分のものにするために、遺産分割協議書は必要な書類です。遺産分割協議書の書き方に厳しい決まりはありませんが、誰の目から見ても遺産の内容や所在が明らかなように作成することが求められています。