マンションの持分の相続が発生するとどうなる?
マンションを父と長男がそれぞれ2分の1ずつの持分で共有していたところ、父が亡くなり、父の相続人が長男と次男の2人であるケースを例に考えてみましょう。
遺産分割前のマンションの持分は?
父が亡くなったら、父の持分2分の1を長男と次男の2人が相続します。長男と次男の相続割合はどちらも2分の1ですから、長男と次男が相続する持分は、次のようになります。
(長男)1/2×1/2=1/4 →マンション持分の4分の1を相続
(次男)1/2×1/2=1/4 →マンション持分の4分の1を相続
長男は元々、マンションの2分の1の持分を持っているため、遺産分割が終わるまでは、長男、次男の持分は次のようになります。
(長男) 1/2+1/4=3/4 →マンションについて4分の3の持分あり
(次男) 1/4 →マンションについて4分の1の持分あり
マンションを長男の単独名義にする方法は?
相続が発生した後、遺産分割をしなければ、マンションは長男4分の3、次男4分の1の割合で共有ということになります。
マンションを長男の単独名義にしたい場合には、次男と遺産分割協議を行い、父の持分である2分の1全部を長男が取得することについて、次男の同意を得なければなりません。
マンションを共有のままにしておくデメリットとは?
父のマンション持分を長男1人が相続することに次男が同意しない場合には、マンションは長男と次男の共有のままとなります。マンションを共有にしておくことも可能です。
ただし、共有の不動産は、共有者全員が合意しなければ売却等の処分ができません。長男と次男の意見が食い違えば、せっかくマンションを持っていても、思うように活用できない可能性があります。
また、長男または次男が亡くなり相続が発生した場合には、それぞれの相続人が共有者として加わることになり、権利関係が複雑になってしまいます。
相続したマンションを共有のままにすると、問題を先送りしてしまうことになります。マンションの相続が発生したときには、できるだけ共有にしない方向で検討した方がよいでしょう。
マンションの持分を相続する手順はどうなる?
相続発生後、マンションの持分を相続するまでの大まかな流れは次のようになります。
1 遺産分割協議により持分を相続する人を決める
相続人全員で遺産分割のための話し合い(遺産分割協議)を行って、マンションの持分を誰が取得するかを決めます。
相続人の中に被相続人とマンションを共有していた人(上記の例では長男)がいる場合でも、マンションが自動的に相続人のものになるわけではありません。必ず遺産分割協議を経る必要があります。
2 遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で話し合いがまとまれば、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には相続人全員が署名し、実印を押印した上で、相続人全員の印鑑証明書を添付しておきます。
3 法務局で持分の相続登記をする
登記申請書と必要書類(戸籍謄本、被相続人の除票、持分を相続する人の住民票、遺産分割協議書、固定資産評価証明書など)を用意し、法務局で相続登記(持分移転登記)を行います。
持分移転登記では、登記申請書を作成するときに、次のような点に気を付けておく必要があります。
(1)登記の目的
通常の所有権移転登記の場合には「所有権移転」と書きますが、持分移転登記の場合には「甲山太郎持分全部移転」というふうに、被相続人の氏名を記載して持分移転であることを明確にします。
(2)相続人
「持分2分の1 乙山次郎」のように、相続人の氏名の前に取得する持分を明記します。
(3)登録免許税
相続登記の登録免許税は、対象となる不動産の固定資産評価額の1,000分の4です。マンションの持分移転の場合には、次のようになります。
マンションの固定資産評価額×相続により移転する持分×4/1,000
マンションの持分を相続した後売却はできる?
マンションの売却には共有者全員の合意が必要
マンションの持分を取得しても、マンション全体を自由に処分できるわけではありません。他の共有者がいる場合、マンションを売却するには、共有者の同意を得る必要があります。
自らの持分については売却できる
共有者がいる場合でも、自分の持分については他の共有者の承諾なしに売却できます。しかし、マンションの持分だけを購入する人は普通いませんから、売却は実際には困難です。
相続したマンションの持分を売却したい場合には、他の共有者に買い取ってもらうのが現実的であると言えます。