相続不動産を売却した際の譲渡所得とは?
相続した不動産を売却した際には、売却によって得られた利益に対して所得税が課税されます。譲渡所得とは、譲渡、つまり売却によって得られた利益のことを指しており、譲渡所得に対して課税される所得税のことを、一般的に「譲渡所得税」と言います。
譲渡所得の計算方法とは?
譲渡所得を計算するためには、次の計算式に当てはめます。
譲渡所得=譲渡価額—取得費—譲渡費用—特別控除
譲渡価額とは、相続不動産を売却した時の金額のことです。ポイントとなるのは、取得費の部分で、比較的誤解している人もいるため詳しく解説します。
取得費というと相続不動産を「買った時の金額」だと認識している人が多いのですが、実際はちょっと違います。
相続不動産の取得費とは、土地と建物の購入代金、建築代金に加えて、購入の際に支払った仲介手数料、リフォーム費用、設備費用なども参入することができますが、一番のポイントは「建物の減価償却費」を差し引くことです。
建物については償却資産に該当するため、取得費を計算する際には減価償却費を建物の購入代金から差し引かなければなりません。
よって、厳密には取得費とは「買った時の金額」よりも低くなります。相続不動産が自宅だった場合の減価償却費の計算式は、次の通りです。
建物購入代金×0.9×償却率×経過年数=償却費(定額法)
相続不動産の取得費を計算するのに建物価格がわからない場合
このように、取得費を計算するためには建物部分の購入代金をもとに減価償却費を計算する必要があります。
不動産を相続や贈与によって取得した場合の購入代金については、亡くなられた被相続人や、贈与をした贈与者が不動産を購入した時の金額を採用するのですが、現実問題として情報が揃わなくてわからないというケースが多いのです。
では、相続不動産の購入代金がわからないときはどうすれば良いのでしょうか。
相続不動産の取得費を計算するケーススタディ1:建物価格がわからない場合
購入代金については、通常、不動産の売買契約書で確認をするのですが、被相続人の残した売買契約書が見つかった場合でも、土地部分と建物部分で価格を分けて表示していないケースもあります。
このような場合については、消費税から逆算して建物部分だけの購入代金を計算することが可能です。
建物価格=(消費税÷8%)+消費税
消費税については建物部分にしか課税されないため、売買契約書に記載されている消費税から建物価格を計算することができるのです。
なお、消費税については次のように税率が改定されているため、取得費を計算する際には相続不動産がいつ購入されたものなのかよく確認しましょう。
・平成元年4月1日~平成9年3月31日・・・3%
・平成9年4月1日~平成26年3月31日・・・5%
・平成26年4月1日~8%
相続不動産の取得費を計算するケーススタディ2:売買契約書が残っていない場合
相続不動産については、資料が全くなく、取得費を計算するために必要な売買契約書や売買代金がわかるものが一切見つからないこともあります。そのような場合には、標準建築単価を用いて、建物部分の取得費を計算することが可能です。
これは、建築年代別に構造ごとの標準的な建築費を国税庁が公表しており、その数値を基準に建物部分の取得費を計算します。
建築価額表を見ながら、相続不動産の標準建築価額を確認し、それに対して延べ床面積をかけることで、建物の取得費を算出することが可能です。
相続不動産は取得費を加算できる特例がある
譲渡所得の計算式を見ると分かる通り、取得費ができる限り高い方が、譲渡所得税を節税することができます。相続によって取得した不動産を売却した場合については、取得費に相続税を加算できる特例があり、通常の不動産売却よりも、譲渡所得税を節税することが可能です。
具体的には、相続や遺贈によって取得した不動産にかかる相続税額がある場合について、その相続財産を相続開始があった日の翌日から、相続税申告書の提出期限の翌日以後3年を経過するまでの間に売却した場合、取得費に一定の金額を加算することができます。
加算する金額の計算式は以下の通りです。
相続税額×売却した不動産にかかる相続税評価額/相続税額にかかる課税価格
要するに、相続不動産の価格割合分の相続税について、取得費に加算できるというわけです。ただし、3年という期限がありますので、相続不動産を売却する場合については、3年を経過するまでの間に検討することをおすすめします。
まとめ
今回は、相続不動産の譲渡所得の計算方法について解説してきました。相続不動産については、通常の不動産とは違い、取得費の計算にあたっては、亡くなられた相続人が購入した価格をベースに計算することがポイントです。
また、3年を経過するまでに売却することで、相続税の一部を譲渡所得税の計算における取得費に加算できるため、それなりの節税効果があります。
相続した不動産の売却を検討する際には、相続税の取得費加算の特例があることも考慮して、タイミングについて決めると良いでしょう。