不動産を相続しても相続税がかかるとは限らない
相続税課税の有無は相続した財産の合計額で決まる
相続のときに払わなければならない税金と言うと、誰もが思いつくのが相続税でしょう。相続税は、相続した財産の合計額が、次の基礎控除額を超えるときにかかります。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば、亡くなった人に妻と子2人がいる場合、法定相続人は3人ですから、基礎控除額は
3,000万円+600万円×3=4,800万円
となります。
不動産の価格によっては相続税がかからないこともある
不動産を相続した場合でも、不動産を含めた相続財産の合計額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
たとえば、相続財産が不動産だけで、法定相続人が3人の場合、不動産が4,800万円以下なら、相続税は払わなくていいということです。
不動産の相続税評価額は、不動産の取引価格(時価)よりも低いのが通常です。また、被相続人の自宅を相続した場合には、小規模宅地等の特例により、土地の評価額が大幅に下がります。不動産を相続しても、相続税がかからないこともあるということです。
不動産を相続しても不動産取得税はかからない
不動産取得税とはどんな税金?
不動産を取得したときには、不動産取得税についても意識しておきましょう。不動産取得税は、不動産の所有権を取得したときにかかる都道府県税です。
不動産取得税の税率は、不動産の固定資産評価額に対して4%です。ただし、土地と居住用家屋については、当面の間3%の軽減税率が適用されます。
不動産取得税の納税方法は、普通徴収です。不動産を取得したら、通常、都道府県から納税通知書が送られてきます。納税通知書を受け取ったら、指定されている期限までに納税しなければなりません。
不動産を相続により取得したときには不動産取得税はかからない
不動産を取得しても、取得した原因によっては不動産取得税がかからないことがあります。
通常の売買や贈与により不動産を取得したときには、不動産取得税の課税対象です。一方、相続や財産分与(清算的なもの)で不動産を取得したときには、不動産取得税はかかりません。
相続人以外への特定遺贈の場合には不動産取得税がかかる
被相続人の遺言により、不動産の遺贈を受けているケースもあるでしょう。遺贈には特定遺贈(財産を指定して行う遺贈)と包括遺贈(財産の割合を指定して行う遺贈)の2種類があります。
不動産取得税は、包括遺贈のときにはかかりません。一方、特定遺贈の場合には、受遺者が相続人か、あるいは相続人以外かで不動産取得税の課税の有無が変わります。
特定遺贈の受遺者が法定相続人の場合には、不動産取得税はかかりません。一方、法定相続人以外へ特定遺贈が行われている場合には、不動産取得税の課税対象になります。
不動産の相続でかかるその他の税金
相続登記をするときに登録免許税がかかる
不動産を相続したら、法務局で相続登記を行って、不動産の名義変更をする必要があります。相続登記の申請をするときには、登録免許税がかかります。
登録免許税は、相続登記に限らず、登記申請の際に課税される国税です。登記の種類によって課税標準や税率が変わります。
相続登記の登録免許税は、不動産の固定資産評価額の0.4%です。相続登記を申請するときには、税額分の収入印紙を購入し、登記申請書に貼付して納税します。
相続した不動産を売却するときに譲渡所得税がかかる
相続した不動産を売却する場合には、譲渡所得税という税金がかかることがあります。譲渡所得税は、不動産の売却によって得られる譲渡益(譲渡所得)に課税される税金です。
譲渡所得は、次の計算式により計算します。
課税譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)
取得費とは、不動産を取得したときに払った代金、譲渡費用とは売却の経費です。取得費がわからない場合には、譲渡価格の5%を概算取得費とすることができます。
なお、相続した不動産を売却した場合、相続税申告期限から3年以内の売却であれば、払った相続税の一部を取得費に加算することが可能です。
また、空き家になっている実家を相続した場合、建物をリフォームするか解体して更地にして売却すると、譲渡所得税の課税において3,000万円の特別控除が受けられます。