遺言の効力と遺言の種類
・遺言により死後の財産の処分方法を決められる
人が亡くなった後、その人が持っていた財産は、民法上定められた相続人(法定相続人)が、民法上定められた相続割合(法定相続分)で相続することになります。しかしながら、自分の財産を死後どうするかについては、生きている間に遺言書を書くことにより、自分で決めることもできます。
相続の場面では亡くなった人の希望にできる限り従うものとされており、遺言があれば法定相続よりも遺言を優先することになっています。
・主に使われる遺言書の種類には2つある
遺言は民法に定められた方式に従って作成しなければ有効ではありません。民法には遺言の方式がいくつか定められていますが、このうち通常、我々が作成するのは、自筆証書遺言か公正証書遺言になります。
(1) 自筆証書遺言
遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自署し、押印して作成する遺言です。
<メリット>
紙とペンと印鑑があれば、思いついたときに手軽に作成でき、費用もかかりません。作成の事実や内容を秘密にすることも可能です。
<デメリット>
要件を満たしていなければ無効になることがあるほか、紛失や改ざんのリスクもあります。
(2) 公正証書遺言
公証役場に依頼して公証人に作成してもらう遺言になります。
<メリット>
公証人が作成に関与するので、形式や内容について問題がない遺言が作成できます。紛失や改ざんのリスクもありません。
<デメリット>
手続きが面倒で費用もかかります。また、証人の立ち会いが必要であるため、内容を完全に秘密にすることはできません。
遺言書の保管方法はどうする?
・自筆証書遺言の保管方法
自筆証書遺言を作成した場合に問題になるのが保管方法です。簡単に見つかるところに置いておけば、亡くなる前に誰かに発見され、内容を見られてしまう可能性があります。一方で、わかりにくいところに保管しておくと、亡くなったときに発見されず、遺言を書いた意味がなくなってしまいかねません。
自宅で保管するなら、金庫のほか、机の引き出し、タンスなどが考えられるでしょう。しかし、家族と同居している場合には、発見されたときに、改ざんされたり破棄されたりするおそれがあります。
銀行の貸金庫に保管することを考える人もいると思いますが、亡くなった後に貸金庫を開けるためには相続人全員の同意が必要になるため、かえって複雑なことになってしまいます。信頼できる友人・知人に預けるか、遺言預かりサービスを利用する方法を検討してみましょう。
・公正証書遺言の保管方法
公正証書遺言を作成した場合、遺言書の原本は公証役場で保管されることになります。そのため、公正証書遺言には紛失や改ざんのおそれがなく、自筆証書遺言ほど保管方法に神経を使う必要はありません。
ただし、遺言者には正本や謄本が渡されることになりますから、これの保管方法に悩むことがあります。専門家に公正証書遺言の作成を依頼した場合には、遺言預かりサービスが付いていることがあります。遺言の作成から保管まで任せることができるので、おすすめの方法です。
遺言預かりサービスを行っているところはどこ?
・信託銀行の遺言預かりサービス
信託銀行では、遺言信託という遺言預かりサービスを提供しています。遺言信託とは、遺言を作成するときに遺言執行者として信託銀行を指定しておき、相続開始後は信託銀行が財産の管理や相続手続きを行ってくれるというものです。
遺言信託を利用すれば、遺言預かりサービスも付いてきますから、遺言の保管方法に悩むこともありません。ただし、信託銀行の遺言信託は費用が高いというデメリットがあります。遺言預かりサービスだけを利用したい場合や、なるべく安価に済ませたい場合には、他のところを検討した方がよいでしょう。
・専門家の遺言預かりサービス
遺言作成のサポートは、弁護士、司法書士、行政書士といった国家資格をもつ専門家に依頼することができます。遺言の作成には法律的な知識が必要ですから、専門家に遺言作成をサポートしてもらうことで、万全の対策を行うことが可能になります。
専門家に遺言作成を依頼した場合、遺言執行者を依頼することもできます。また、専門家も遺言預かりサービスを行っていますので、作成した遺言を保管してもらうこともできます。守秘義務のある専門家に遺言を保管してもらえるだけでなく、亡くなった後の相続手続きも任せられるという安心感がありますのでおすすめです。