税務署と税理士どっちに相談すべき?
贈与税について相談する先としては税務署と税理士がありますが、そもそもどっちに相談するべきなのか判断がつかないという人も多いのではないでしょうか。そこでここでは、自分一人で処理できることなのか、それともどちらかに相談をした方がいいのかその判断基準について詳しく解説したいと思います。
税務署に相談すべきケース
「どうせ相談するなら、費用がかからない税務署に相談すればいいのでは」と思う人もいるのではないでしょうか。確かに税務署に直接相談するのが一番確実で、かつ費用も掛からないから一石二鳥のように感じるかもしれません。確かに税務署に相談をすれば、無料で丁寧に教えてくれますが1点注意点があります。
それはズバリ、教えてくれるのは手続きの流れだけだということです。例えば相続税対策としてこれから生前贈与をしていこうと思っているとします。税務署に相談に行けば、贈与をした場合の基礎控除額や贈与税申告のやり方、申告期限、納付の仕方などについては丁寧に教えてくれます。ところが、
「不動産と預金どっちを贈与した方が節税になりますか?」
といった節税に関するアドバイスなど、その人にとってどうすることがベターなのかについての各種アドバイスやサポートについては一切受けられません。時々税務署の窓口で節税について質問している人を見かけますが、税務署に節税対策に聴いても無駄です。一切教えてくれません。税務署はあくまで一般論として、パンフレットやホームページなどに記載されている手続きの概要を丁寧に説明してはくれますが、「アドバイス」という部分についてはノータッチになります。
税務署に聴けば間違いないはウソ
税務署に相談した人の中には「税務署に相談してこう言われたから間違いない」と信じ込んでいる人がいるのですが、実は税務署に相談したとしても安心はできません。
「だって税務署から言われたとおりにやっているんだから、万が一あとで指摘を受けたとしても税務署に言われた通りやっているだけ、といえば筋が通るから大丈夫だろう」
こう考えている人がいますが、たとえ税務署に相談した時に言われた通りに生前贈与をやっていたとしても、それが必ずしも正しいとは限りません。なぜなら、税務署に相談して回答されている内容というのは、税務署の公式見解ではないからです。あくまで窓口の人の説明であって、税務署がそれに責任を持ってくれるというわけではありません。ですから、税務署に相談してやっているから安心という考え方は間違っているのです。
文書回答サービスを利用する
税務署に相談した履歴を残したい場合は、「事前照会に対する文書回答手続き」を利用する方法があります。これは申告期限等の前に具体的な取引等に係る税務上の取り扱いに関して文書による回答を求めることができる制度で、一定の資料を準備して申請することで得利用することが可能です。原則として3ヶ月以内に回答してもらえますが、内容によっては回答の対象外となる場合もあります。いずれにしても時間がかかるため、生前贈与対策などの相談には向いていません。
税理士に相談すべきケース
手続きの流れや概要などを説明する税務署に対して、税理士というのはいわば納税者のアドバイザー的な存在になります。すなわち、どのように生前贈与をすることが自分にとって最も節税になるのか、ひいては相続税まで含めて考えた場合今どう動くことがベストなのか、そういった個別具体的なアドバイスをしてくれるのが税理士です。
よって、これから生前贈与をして相続税を節税していきたいと考えている人であれば、相談する先は税務署ではなく税理士でしょう。税理士はその責任においてアドバイスをしてくれますので、税務署のように責任を負わないということではありません。もちろん、節税対策は無数にありますしその組み合わせもさまざまなので、何が一概によいとはいえませんが、少なくとも本人が理解して選択できるよう、適切なアドバイスをしてくれます。
税務署なら無料で贈与税の相談ができる
税務署では、贈与税などの国税についての相談を受け付けています。各税務署で税についての相談窓口が用意されており、誰でも無料で相談することが可能です。相談方法としては、電話相談と面接相談がありますが、面接相談については事前の予約が必要です。
・税務署で電話相談する方法
所轄の税務署または最寄りの税務署に電話し、自動音声案内に従って電話機を操作します。まず、用件として「1」(税金に関する一般的な質問や相談)を選択します。続いて、相談する内容として、「3」(譲渡所得、相続税、贈与税、財産評価)を選択します。電話相談センターの税務相談官につながれば、相談を聞いてもらうことができます。通話料については自己負担になります。
・税務署で面接相談する方法
面接相談希望の場合にも、まず所轄の税務署または最寄りの税務署に電話し、自動音声案内に従って用件「2」(面接での相談の事前予約など)を選択します。税務署の受付担当の職員につながったら、面接日時の予約をし、予約した日時に税務署に出向いて相談を聞いてもらいます。
・税務署に贈与税の相談をするメリット
税務署に相談するメリットといえば、無料で気軽に相談ができるという点です。電話の場合は、匿名での相談も可能です。
・税務署に贈与税の相談をするデメリット
税務署の無料相談では、あくまで一般的な内容しか教えてもらえません。また、税務署は平日昼間しか開いていませんから、仕事をしている人などはなかなか相談できる時間がないこともあります。なお、税務署は税金をとる側ですから、節税対策について相談することはできません。
税理士に贈与税の相談をすれば節税対策もできる
税金のスペシャリストといえば税理士です。税理士は税金の申告の代理、税務書類の作成、税務相談などの業務を行っていますので、贈与税について相談することもできます。
・税理士の選び方と相談方法
税理士といっても、それぞれ得意分野があります。贈与税について相談したいなら、相続対策や生前贈与に詳しい税理士を選ぶのがよいでしょう。身近な人が利用している税理士を紹介してもらう方法もありますが、広告やインターネットで税理士事務所を探すことも可能です。
相談したい税理士が見つかったら、電話やメールで問い合わせをし、相談方法や費用を聞いてみましょう。問い合わせのときの対応も参考になりますので、信頼できると感じたところに相談するのがおすすめです。
・贈与税について税理士に相談するメリット
税理士に贈与税の相談をするメリットとして、贈与税の申告を代理してもらえるという点があります。現金のみの贈与であれば、贈与税の申告はそれほど難しくはありません。しかし、不動産や株式の贈与や、特例が適用できるケースなどでは、申告が複雑になってしまうので、税理士に依頼した方がスムーズです。
また、税理士に贈与税について相談すれば、相続まで見据えたトータルな節税対策が可能になります。贈与税というのは相続税を補完するために設けられた税金ですから、贈与税と相続税はセットで考える必要があります。贈与税の申告時に信頼できる税理士を見つけておけば、将来の相続にも備えることができます。
・贈与税について税理士に相談するデメリット
税理士に贈与税の相談をするデメリットは、費用がかかるということでしょう。贈与税の申告を税理士に依頼することになれば、財産の額に応じた報酬も支払う必要があります。
贈与税についてのその他の相談先
税務署、税理士以外に贈与税について相談できる窓口としては、次のようなところが考えられます。
・市区町村や税理士会の無料税務相談
市区町村では、定期的に税理士による無料税務相談を行っていることがあります。住民であれば利用できますので、問い合わせてみましょう。また、各地の税理士会でも無料税務相談会を行っています。
・弁護士等税理士外の専門家
相続対策については弁護士、司法書士、行政書士に、ライフプランについてはファイナンシャルプランナーに相談することもできます。これらの専門家に相談した場合にも、贈与税について一般的な内容を教えてもらえることがあります。
税理士以外の専門家に相談した場合にも、税務については税理士と連携して対応してもらえるケースがほとんどです。専門家同士のネットワークがあり、ワンストップで対応してもらえる事務所を選んで相談するとよいでしょう。
税務署と税理士どっちに相談するか判断のポイント
税務署も税理士もどちらも税金の専門家ですが、状況によって適切な方に相談することが重要です。具体的には次の通りです。
税務署に相談した方がいいケース
・贈与税申告のやり方がわからない
・贈与税の計算方法がわからない
税理士に相談した方がいいケース
・効率的な節税対策を知りたい
・生前贈与についてアドバイスがほしい
このように、節税など個別具体的なアドバイスを受けたい方は、税理士に相談することをおすすめします。