農地の相続税の納税猶予制度とは?
日本は食料自給率が低いこともあり、農地など作物を育てる土地の存続についてとても気を使っています。農業を営んでいた人が亡くなられてそのままあとを継ぐ人がいないと、日本の農地面積はどんどん少なくなってしまいます。
日本の農地面積は年々減少する傾向に
日本における農地の減少は深刻で、農林水産省の「耕地及び作付面積統計」の資料によると、統計が開始した昭和35年から農地面積は減少の一途をたどっています。
そこで国としてはできるだけ農地を次の世代の人に引き継いでもらえるよう、農地にかかる相続税について納税を猶予する制度を設けたのです。
なぜ相続税の納税免除ではなく納税猶予なのか
相続税については様々な控除制度や非課税制度がありますが、「納税猶予」という特例はあまり聞きません。
では、なぜ農地については納税猶予なのでしょうか。
農地の相続税の納税猶予は実質的に免除?
農地にかかる相続税の納税猶予は、相続人が以下のいずれかに該当するまで一生懸命農業を続ければ納税猶予ではなく納税が免除されます。
・農地の相続人が死亡した時
・農地を相続してから20年経過した時
・農地を受け継いでくれる後継者に一括で生前贈与して、贈与税の納税猶予の特例を受ける時
農地の相続税を単に免除としてしまうと、その後農業を営んでもらえない可能性もあるため、上記の期間きっちり農業を営んでもらったうえで納税を免除するという仕組みになっているのです。
相続税が納税猶予される農地と期限
相続税の納税猶予が受けられるのは、以下のいずれかに該当する農地で相続人が農業を継続した場合です。
・市街地区域内の生産緑地
相続人が死亡するまで納税猶予
・市街地調整区域内の農地等
申告期限から20年もしくは相続人の死亡、いずれか早い方まで納税猶予
従来までは上記のような運用でしたが、平成30年の法改正により三大都市圏の特定市以外の区域内の生産緑地地区内の農地等について、20年から死亡するまでに改正されました。
農地の相続税納税猶予、改正のポイント
農地の相続において相続税が納税猶予、実質的に免除となる当該規定は相続人にとって非常にメリットの大きい制度でしたが、一方で耕作という点においては懸念される点がありました。
相続税の納税猶予を適用するためには、相続した農地を相続人が耕作しなければならず、他人に貸し付けると納税猶予の対象から除外されていたため、相続人が高齢の場合に他人に農地を貸して耕作してもらうという選択ができなかったのです。
つまり、相続税の納税猶予を受けるために意欲のある若い世代に農地を貸し出すことができない状況でした。
この点について平成21年と24年に段階的に改正が行われ、他の農業事業者に貸し付けた場合でも一定の要件のもと、相続税の納税猶予が受けられるようになったのです。
農地の相続税の納税猶予、平成30年改正のポイント
平成30年に税制改正が行われ、相続税の納税猶予を受けている人が認定都市農地貸付けまたは農園用地貸付けを行った場合でも一定の要件を満たせば引き続き納税猶予が受けられることになりました。
また、納税猶予の適用対象となる都市営農農地等の範囲についても、特定生産緑地である農地や田園住居地域内にある農地が追加されました。
相続税の納税猶予を受けられる農地の定義をわかりやすく
相続税の納税猶予が受けられる農地の定義については基本的に農地法上の農地の定義のことを意味しているのですが、このほど農地法が改正され若干変更となりました。
農業委員会に届出している農作物栽培高度化施設の底面とするために、土地の全部をコンクリートで覆って農作物栽培高度化施設を設置して作物を栽培する場合でも、引き続き相続税の納税猶予の適用が受けられるようになったのです。
ただし、農業委員会に届出を出していない場合については、農地法上の農地として扱われないため注意しましょう。
まとめ
今回は農地の相続税納税猶予について詳しく解説してみました。
農地については、相続後も農地として営農する、もしくは他人に貸して耕作し続けることで、実質的に相続税が免除されます。
また、農地については売買する際に行政機関の手続きが必要になりますので事前に税理士や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。