相続財産の計算
不動産は「金銭的価値に置き換えるといくらになるか」という目安になる、相続税評価額を計算する必要があります。
不動産が土地であれば、以下のいずれかの方法で相続税評価額を計算しましょう。
「路線価×地積」
「倍率×固定資産税評価額」
不動産の建物部分は、固定資産税評価額をそのまま相続税評価額とします。
相続税額を計算するには、不動産以外の相続財産全体も計算に入れる必要があります。例えば、以下のような財産の計算を行わなくてはなりません。
現金、預貯金
預貯金は、原則として相続開始日の預金残高と、相続開始日に預金を解約した際に受け取ることのできる利子額との合計額が、相続税評価の基準です。
有価証券類
上場株式は原則として、「相続開始日の終値」「相続開始日のある月の終値の月平均額」「相続開始日のある月の前月の終値の月平均額」「相続開始日のある月の前々月の終値の平均額」の4つの価額のうち、最も低い価額を基準にして考えます。
家財・自動車
家具や電化製品、自動車などは、相続開始日の時点で同等の状態の品を購入すると仮定した場合の価額が相続税評価の基準です。
家具や電化製品については、個別または一式での評価となります。個別または一式の価額が5万円に満たない品は「一式で〇〇万円」など、まとめての評価が可能です。
自動車の場合は、車種や年式、グレード、走行距離などの状態を踏まえ、市場に出回っている中古車の中から同程度の自動車を買うとした場合の価額を参考にします。
美術品・骨董品
類似の状態のものと価値を比較することが容易ではない美術品や骨とう品は、基本的に専門家に鑑定を依頼する必要があるでしょう。
借地権
被相続人が借地権を有している場合は、借地権も相続税の課税対象となります。「更地の価額×借地権割合」で借地権の計算をしましょう。借地権割合が不明な場合は、国税庁ホームページの路線価図を参照すると分かります。
相続税の基礎控除額の確認
相続財産をすべて調べたら、次に相続税がかかるかどうかを調べましょう。
相続税には基礎控除額が設定されており、基礎控除額を超えた部分にのみ相続税が課税されます。もし相続財産全体の価額が基礎控除額以内に収まっていれば、相続税がかかることはありません。
相続税の基礎控除額は、以下の式で計算できます。
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
法定相続人という表現で分かりづらくなっていますが、これには養子や、相続放棄した人も含まれますので注意しましょう。
もし法定相続人が3人なら4,800万円以下、5人なら6,000万円以下の相続財産であれば、相続税の申告自体が不要になります。
相続税の計算
1.各人の課税価格の計算
相続人各自が取得した財産に、相続開始前3年以内の贈与や相続時精算課税制度を利用して贈与された財産を加えます。そこから債務や葬儀費用などを差し引いたものが、各人の課税価格です。
2.課税遺産総額の計算
各人の課税価格を合計し、相続税の基礎控除額を引きましょう。まだ残っているものがあるなら、それが課税遺産総額ということになります。
3.相続税総額の計算
課税遺産総額を、各相続人が法定相続分に従って取得すると仮定し、各相続人の取得金額を計算します。
次に、各相続人の取得金額に応じた相続税の税率をかけて相続税額を計算し、全員分の相続税を合計しましょう。これが今回の相続の相続税総額です。
4.各相続人の相続税を計算する
相続税総額を、各相続人が実際に取得した相続財産に応じて按分しましょう。これによって、各相続人の納める相続税が分かります。
なお、財産を取得したのが被相続人の一親等の血族および配偶者ではない場合、相続税は2割増されますので注意して計算しましょう。
不動産の相続登記は迅速に
不動産を相続することが決定した相続人は、できるだけ早いうちに不動産の相続登記を完了し、不動産を自分の名義に変更しておく必要があります。
元々身内の所有していた不動産だからと思うと、いつでも良いように感じてしまうかもしれません。しかし、相続登記を完了しない間は不動産の所有者がいないことになるため、何かあった場合に非常に厄介なことになります。
不動産は、せっかく相続した貴重な財産のはずです。確実に自分のものにすることを遅らせないようにしましょう。
まとめ
不動産の相続でも、相続財産の総額が相続税の基礎控除額に収まっていれば、相続税を支払う必要はありません。
不動産があることで、現金での納税が難しいほど高額な相続税が発生してしまった場合には、延納や物納について税務署に相談してみましょう。