相続メディア nexy

相続メディア nexy

不動産の相続における持分と共有について

更新日:

不動産の共有持分の特徴について

相続不動産の共有とは、1つの不動産を複数の相続人で共有している状態をいいます。

例えば、相続人が兄弟2名の場合において、どちらが不動産を相続するのか話し合いで決着がつかないような場合に、兄1/2と弟1/2の共有持分を設定することで、2人で相続不動産を共有して相続するのです。

共有持分については、法定相続分で設定することができるため、遺産分割協議が難航するようなケースでは、その場しのぎの妥協案で共有を選択するケースが多く見受けられます。

共有持分と権利関係について

共有持分については、法定相続分に従って設定しますが、たとえ共有持分割合が少なくても、不動産の利用においては平等に扱われます。例えば、配偶者と被相続人の父親が相続人である場合、法定相続分は配偶者2/3、父親1/3です。

共有持分をこの割合で設定したとしても、父親も不動産全体について使用することができ、共有持分の割合によって、使用が制限されることはありません。

ただし、相続不動産がアパートなどの賃貸物件である場合、得られる家賃収入の取り分については、共有持分の割合に応じて分けることになります。

例えば、上記のケースで月額家賃収入が90万円の場合、60万円が配偶者、30万円が父親の取り分となります。

 

共有持分の発言権について

相続不動産を共有すると、共有持分の割合に応じて発言権が変わってきます。

変更・処分行為 (共有持分の全部が必要)

共有している相続不動産を売却したり、賃貸に出すような行為については、変更処分行為として、共有持分を有している相続人全員の同意が必要となります。

民法の条文については、以下のとおりです。

第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

よって、相続不動産を共有した後に、売却するとなると、共有持分を有している相続人全員の同意を得なければならないため、1人でも反対したら売却はできなくなってしまいます。

管理行為(共有持分の過半数が必要)

変更や処分行為よりも影響が少ない管理行為については、共有持分の過半数の同意によってすることが可能です。管理行為とは、具体的には明記されていませんが、共有物の性質を変更せずに収益を上げる行為や、交換価値を増加させる行為などが該当します。

民法の条文は次のとおりです。

第252条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。

保存行為(共有持分を持つもの誰でも可能)

保存行為とは、共有物を維持していくために必要な行為のことで、具体的には壊れた部分の修繕など、他の共有者に不利益が生じない行為をいいます。

民法の条文は次のとおりです。

第252条但書き
ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

このように、相続不動産を共有すると、共有持分の割合によってできることが制限されてきます。特に変更・処分行為については共有持分すべての同意が必要になるため、足並みが揃わないと売却できないという状況に陥る可能性があるのです。

 

持分を共有すると不動産の相続人が増える

相続不動産を共有すると、1つの不動産に対して共有持分を有する複数の相続人が所有者となります。

仮に、兄弟が1/2ずつで共有持分を相続した場合において、弟が死亡して相続が発生すると、弟の1/2の共有持分を子供が相続することになるのです。子供が2人であれば、共有者は3人に増えてしまいます。

このように相続を繰り返していくと、共有持分がどんどん分裂して、共有者が増えていってしまい、売却することが困難な状況になっていってしまうのです。

安易に相続不動産を共有すると、後の処理が大変ですので十分注意しましょう。

 

相続不動産を売却する場合

相続不動産を売却する場合、一旦共有持分で登記をして売却するケースがありますが、そうなると契約当事者が増えるため、売買の手続き自体が煩雑になる可能性があります。

そこで、遺産分割協議によって代表者を決めて、1人の相続人に単独で登記名義を変更し、売買契約を取り交わすというやり方が有効です。売却が完了したら、あらかじめ決めていた配分で代金を分配すれば、贈与税もかからず、問題なく遺産分割ができます。

 

まとめ

相続不動産を共有すると、持分割合に関わらず全体を使用することができますが、持分割合によってできる行為が異なることに注意が必要です。

また、共有すると二次相続などが発生するとどんどん共有者が増えていく可能性があるため、できれば共有以外の方法で遺産分割したほうがよいでしょう。