相続税 2017.12.18
相続税の配偶者控除とは?メリットや注意点を知っておこう
相続税の基礎控除額が引き上げられ、相続の際の相続税が気になる方も増えたことと思います。ところで、相続税には配偶者が優遇される「配偶者の税額軽減」(配偶者控除)という制度があるのをご存じでしょうか?ここでは、相続税の配偶者控除について、メリットや注意点を説明していきます。
相続税では配偶者に大きな優遇がある
配偶者は1億6,000万円まで相続税の心配がない
相続税における配偶者控除とは、正式には「配偶者の税額軽減」という制度になります。この制度により、被相続人の配偶者は、相続の際に取得した財産について、次の(1)、(2)のどちらか多い金額までは相続税が課税されません。
(1) 1億6,000万円
(2) 配偶者の法定相続分に相当する金額
相続の配偶者控除により、配偶者が取得した相続財産の額が1億6,000万円以下の場合には、配偶者には一切相続税がかからないことになります。つまり、被相続人が残した財産の額が1億6,000万円に届かないようなケースなら、配偶者は1人で全財産を相続しても、相続税の心配はありません。
また、配偶者の取得した額が1億6,000万円を超える場合であっても、配偶者の法定相続分以下であれば、相続税はかかりません。たとえば、相続財産が多い場合には、配偶者の法定相続分が5億円ということもあるでしょう。このような場合でも、法定相続分を超えていない限り、配偶者には相続税はかからないことになります。
相続税の配偶者控除では婚姻期間は関係ない
贈与税にも配偶者控除と呼ばれる制度がありますが、贈与税の配偶者控除には婚姻期間20年以上という条件があります。一方、相続税の配偶者控除では、婚姻期間の制限はありません。法律上の婚姻をしていれば、たとえ婚姻期間が1日であっても、配偶者の税額軽減の適用を受けられます。
なお、法律上の婚姻をしておらず、事実婚や内縁関係である場合、相続税の配偶者控除が受けられないのは、贈与税も相続税も同じとなっています。
相続税の配偶者控除のメリット
配偶者は自宅を安心して相続できる
夫婦で住んでいる自宅は、どちらか一方の名義になっていることも多いはずです。たとえば、夫名義の家を夫の死後に妻が相続する場合、もし相続税の配偶者控除がなければ、妻の相続税の負担が大きくなってしまいます。相続税を納税するために、自宅を売却しなければならないとなると、妻は住む場所を失ってしまうことになります。
相続税の配偶者控除があるおかげで、被相続人の配偶者は、相続税の心配をすることなく、財産を相続することが可能になります。配偶者は通常、被相続人の財産形成に大きく貢献しているはずですから、こうした優遇が認められているのです。
配偶者に多く相続させれば節税になる
相続税の配偶者控除により、配偶者は財産を相続しても、ほとんどの場合相続税がかかりません。つまり、配偶者の相続額を多くすれば、相続税額を減らすことができます。配偶者控除の枠内でできるだけ配偶者に多く相続させるよう遺言を書いておけば、配偶者に相続税がかからないだけでなく、他の相続人の相続税額も減らすことが可能になります。
相続税の配偶者控除で注意しておきたい点
配偶者控除適用前に相続税額が発生するなら申告要
遺産の額(課税価格の合計額)が基礎控除額を超えている場合には、相続開始を知ったときから10ヶ月以内に、相続税の申告を行わなければなりません。相続税の配偶者控除を適用すれば納税額がゼロになる場合でも、期限内の申告は必須になります。
申告時に遺産分割未了なら配偶者控除は適用できない
相続税の申告期限までに遺産分割が終わっていない場合には、法定相続分で相続したものと仮定して相続税額を計算します。ただし、相続において配偶者控除の対象になるのは実際に取得した財産になりますから、未分割の財産について配偶者控除は受けられず、相続税の納付が必要になります。なお、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割ができれば、配偶者控除を適用して相続税を再計算し、納め過ぎた税金の還付が受けられます。
相続税対策で利用するなら2次相続のことも考える
夫婦に子がいる場合、夫の死亡時の相続(1次相続)で妻が取得した財産は、妻の死亡時の相続(2次相続)では子が取得することになります。この場合、2次相続では配偶者控除が使えないだけでなく、1次相続より相続人の数が1人減るので基礎控除額も少なくなってしまいます。
1次相続で妻の相続額を多くしてしまうと、2次相続で子が相続する額が大きくなってしまい、子の相続税の負担が大きくなることがあります。つまり、配偶者控除により1次相続の相続税額は抑えられても、トータルで発生する相続税額は逆に増えてしまう可能性があります。配偶者控除により相続税対策を行うなら、将来の2次相続のことまで考えておくことが大切です。
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