相続税 2020.04.13
相続税申告で不要?拒否はできるのか
マイナンバー制度が開始されて以降、役所に提出する様々な書類に都度マイナンバーの記載を求められることが増えてきています。
マイナンバーから個人情報が漏れることを警戒して、マイナンバーを他人に極力知られないように気を付けている私たちからすると、たとえ役所だとしてもマイナンバーを書類に記載する際には躊躇するところです。
そこで今回は、相続税申告をする際のマイナンバーの取り扱いについて詳しく解説したいと思います。
相続税申告書にマイナンバーの記載は必要か
マイナンバーを他人に知られるリスクを少しでも低くするためには、できるだけ書類に記載する機会は少なくしたいものです。
それは相手が税務署だとしても同じですが、相続税申告書についてはマイナンバーの記載が必要になります。
ただし、マイナンバーの記載が必要になるのは相続人のマイナンバーであり、亡くなられた方のマイナンバーを相続税申告書に記載する必要はなく不要です。
いつからマイナンバーの記載が必要
相続税申告書にマイナンバーの記載が必要になるのは、平成28年1月1日以降の相続または遺贈によって財産を取得した場合における相続税申告書からです。
よって、今現在発生している相続税申告については、原則として相続人のマイナンバーの記載が必要になります。
当該事項は国税庁のホームページにも記載されているため、基本的にはマイナンバーの記載を拒否することはできません。
相続税申告とマイナンバーの問題点
現在は相続税申告に限らず、確定申告書にもマイナンバーの記載が求められていますが相続税申告書のある特徴から別の問題が浮上します。
毎年行う所得税などの確定申告書については、基本的に自分1人に対して確定申告書を1枚記入してマイナンバーを記載しますが、相続税申告の場合は相続人全員で1つの相続税申告書を作成することになるのです。
通常相続税申告書は、相続人が複数いる場合、相続税申告書に署名捺印しながら持ち回りで1つの書面を郵送などでリレー形式によって回していき相続税申告書を完成させます。
ということは、最初に相続税申告書に署名捺印した相続人はその時にマイナンバーを記載することになるため、その後に署名捺印する相続人にマイナンバーを見られることになります。
これを嫌がる方が時々いるようで、相続税申告書にマイナンバーを書きたがらない人がいるようです。
マイナンバーを知られたくない
1つの相続税申告書で申告すると、どうしても同じ書面に相続人全員のマイナンバーを記載する必要があります。そこで、どうしても見られたくない場合は、別々の相続税申告書を作成して申告するしかないでしょう。
そもそも相続税申告は、次のように規定されています。
(相続税法第62条)
同じ所轄税務署(申告書を提出する税務署)に複数相続人がいる場合には1の申告書に連名で申告することができる。
つまり、相続税申告は相続人全員で申告しなければならないわけではなく、上記の条件がそろっていれば1つの申告書でも申告できるというだけに過ぎないのです。
よって、マイナンバーを相続人に見られたくないという場合は、それぞれが別々の相続税申告書を作成して申告することもできます。
別々で相続税申告をする際の注意点
複数の相続人が1つの相続税申告書にマイナンバーを記載して申告する一番のメリットは、相続人同士の相違が発生しないということにあります。
複数の相続人が別々にマイナンバーを記載した相続税申告書を作成して申告すると、税務署側は1つの相続について複数の相続税申告書が提出されることになるため、提出された相続税申告書をそれぞれ引き合わせて、違っているところがないか確認をされるのです。
そのため、相続人間で作成した相続税申告書の内容に相違があると税務調査の対象になるというリスクを抱えることになります。
よって、別々に相続税申告をしてマイナンバーを記載する際には、申告書の内容について相続人同士ですり合わせをしておくことが大切です。
税理士に提出を依頼する方法も
相続税申告を別々に行いたい場合、税理士を統一していれば相続人同士の相違を避けられます。
遺産分割でトラブルになっていなければ、同じ税理士に相続税申告書の作成と提出を依頼することで、マイナンバーを他の相続人に隠しつつ、ミスのない相続税申告が可能になります。
実務的にも相続税申告書の作成は非常に高度な知識と経験が求められるため、相続人の方が自分でやるのではなく相続税に強い税理士に依頼したほうがよいでしょう。
まとめ
相続税申告書には相続人のマイナンバーの記載が必要ですが、他の相続人に知られたくない場合は個別に相続税申告をするといった回避策があります。
ただ、相続税申告を別々に行うと税務調査のリスクが高まるため、できるだけ同じ税理士に統一して相続税申告書を提出してもらった方がよいでしょう。
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