相続税 2021.06.09
法的効果なしでも書いておくべき付言の効果とは?
遺言書の相談に来る人の多くは、遺産の分け方や相続税を気にする人が多いのですが、実は一番大切なことは遺言書を書く人の気持ちだったりします。
特に相続人が複数いる場合は、遺言書を書いても内容によっては遺留分侵害でもめることも少なくありません。そんなとき効果を発揮するのが付言です。
そこで今回は付言の意味や活用事例、成功事例などについて解説したいと思います。
効力なしでも絶大の効果がある付言とは
遺言書に書いた内容は法定相続分よりも優先されることから、遺言書を書くことは相続対策として非常に有効であると言われています。そんな中、遺言書に記載した事項の中で法的効力を持たないものがあるのです。
それが付言です。
付言とは簡単にいうと、遺言書を書く人の気持ちを書き連ねた部分のことです。
遺言書はただの手紙とは違い、財産の詳細や遺産の分け方を事細かに記載する法的な文書であることから、作者本人の気持ちなんて書く必要がないのでは、と思うかもしれませんが、実は決してそんなことはありません。
遺言書は無機質だからこそ
遺言書の最大の弱点、それは無機質で気持ちが伝わらないことにあります。
例えば、遺産を相続人同士均等に分けるような遺言書であれば、相続発生時も特段の問題は発生しない可能性が高いですが、通常遺言書を残すケースというのは、そもそも将来もめそうだから書くので、遺産の分け方が均等ではない記載内容の方が多いのです。
そうなると、取り分が少ない相続人にとってその遺言書は邪魔でしかありません。
となればその相続人は全力で遺言書の執行を阻止するでしょうし、被相続人が生前に認知症や痴ほうだったような場合であれば遺言書作成時の遺言能力をめぐって全面的に争うということも考えられます。
そんな時に効果が発揮されるのが、法的効力のない付言です。
付言は遺言書の最後の部分に書くことが多く、基本的になぜそのような遺言書を書くに至ったのかの気持ちを書きます。気持ちですから書いたところで法的な効力はありませんが、心理的作用として少ない取り分になる相続人の気持ちを納得させられる可能性はあります。
付言の具体例
ここからは実際に作成した遺言書をベースに、付言の具体例についてお伝えしたいと思います。
例えば、相続人が息子兄弟3人のケースで次男にすべての財産を相続させるとした場合、次のような付言が想定されます。
【付言】
次男へ、次男にもかかわらず長男に変わって最後まで私の面倒を見てくれてありがとう。とても感謝しています。介護施設に入れてもよかったのに、最後まで自宅で看護してくれたことは本当にうれしかったです。これからも兄弟の良き相談相手になってあげてください。長男へ、過去の過ちを反省して正しい道へ進んでください。そして三男へ、次男のいうことをよくきき、幸せな人生を送ってください。
私は次男のおかげで生前、何も寂しい思いをすることなく過ごしてきました。
そこで遺産については、すべて次男に任せます。これらの遺産は、私が施設に入所せずに済んだことで形成できたものなので、次男のおかげです。ですから、長男も三男も遺留分を次男に請求しないようにしてください。
このような感じです。
例えば、この遺言書に付言がなく、単にすべての遺産は次男に相続させるとだけ遺言書に書かれていたら、長男や三男は納得しなかったかもしれません。
看護したケースは特に重要
遺言の付言が効果をより発揮するのが、先ほどのような看護が必要だったケースです。
相続人のうちの1人に看護の負担が集中している場合については、付言でそのことをちゃんと書いて他の相続人に知らしめることがとても効果的です。
これは相続人に限りません。
例えば、義理の娘が亡き夫の両親の看護をするというケースでは、相続発生時義理の娘には相続分がないので、遺言書で一定の財産を遺贈することもよくあります。
このようなケースでも、付言が記載されていれば他の相続人に納得してもらいやすくなるでしょう。
まとめ
このように付言は書いても書かなくても法的な効果は変わりませんが、トラブル防止という観点からすると絶対に書いておくべきです。
別に手紙で書き残しておくよりも、遺言書と一体にした方が紛失や隠ぺい、改ざんといったリスクを回避できますので、ぜひ付言を活用してみてください。
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