相続税 2021.06.23

夫婦への贈与で大幅節税が実現した事例

相続対策をしたいけれど、賃貸経営など面倒なことはしたくないという人は多いのではないでしょうか。
実際私に相談に来られる方の多くは、対策はしたいもののできるだけ手間をかけたくないという希望が多いように感じます。
そういう人におすすめなのが、配偶者への贈与です。
贈与なんてして贈与税が余分にかかるだけでは、と思うかもしれませんが、実は特例をうまく使えば大きな節税効果があります。
そこで今回は、夫名義の自宅を妻に贈与して節税になった事例について詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

自宅を妻へ贈与して節税

人の財産のうちかなりの割合を占めるのが、不動産であり自宅であると言われています。

土地付き一戸建ての所有者が死亡して相続が発生すると、場所や広さによってはかなりの相続税負担となることがよくあります。

今回ご紹介する事例も、夫名義の自宅とその隣接する広大な敷地に夫婦が住んでいる状況で、夫が病気がちになり相続が不安になって対策を考え始めた方です。

このようなケースの場合、何も対策をしないまま相続が発生すると、高額な相続税が発生する可能性があります。

この場合、小規模宅地等の特例が適用されれば相続税は抑えられますが、自宅の敷地が広かったこともあり、やはり何らかの相続税対策は必要な状況でした。

通常、このような場合、考えられる対策としては賃貸経営です。

借入を起こしてアパート経営をすることで節税対策にする話はよく聞くと思いますが、現実的にはそれを実際にやる人は一握りで、多くの人は面倒に感じて敬遠します。

今回のご夫婦も賃貸経営という経験がない分野に不安を感じ、別の対策を模索されていました。

そんな時におすすめなのが、配偶者への居住用不動産の贈与です。

夫名義の自宅を妻名義に変更して贈与すれば、夫が死亡したとしても相続税を大幅に節税することができます。ここでポイントになってくるのが贈与税です。

実は贈与税の税率は相続税よりも高いので、単に贈与をするだけだと節税にならないこともよくあります。ただ、今回のように配偶者へ居住用不動産を贈与する場合、特例が適用できるので2,000万円の贈与まで非課税なのです。厳密には、贈与税の基礎控除110万円もプラスできるので、全部で2,110万円を非課税にて贈与ができるのです。

今回の事例では、夫と妻どちらが先に死亡しても相続税が不利にならないよう、自宅の持ち分を半分に分けて、そのうちの1/2を妻に贈与することにしました。このように不動産は登記簿上の持ち分を分けることで、不動産自体を分割しなくても法的には贈与できるのです。

これにより、2,110万円の特例を最大限活用して自宅の持ち分を妻に贈与したことで、相続発生時の相続税を大幅に抑えることに成功しました。

 

自宅の贈与はとても簡単

今回の相続税対策がおすすめである理由、それは登記手続きだけで簡単に贈与できるということです。

例えばアパートを建てるとなれば、銀行からお金を借りたり、土地の形を整えたり、などやらなければならないことが多々発生します。

対して自宅の贈与については、物理的に何かを動かす必要は全く登記上の手続きを行うだけで贈与ができるのです。登記手続きの実務については、司法書士に依頼するだけです。

ただし、税務上は贈与税がかからなくても登記はしますので登録免許税や不動産取得税といった税金はかかるので、費用について予め確認しておく必要はあるでしょう。

遺産分割対策にもなる

配偶者の居住用不動産の特例を使って贈与することは、節税だけでなく遺産分割対策としても有効です。近年、配偶者居住権という権利ができたくらい、相続発生後は配偶者と残された子供たちとの間で自宅の居住をめぐって争いになることが多々あります。

事前に贈与しておけば、そのようなトラブルもなく、死後も安心して配偶者が自宅に住み続けることができるのです。

実際、節税対策としてではなく遺産分割対策として生前贈与を活用する人はいます。

 

まとめ

今回の事例のように、自宅の持ち分を贈与するだけでも一定の相続税の節税効果があるので、土地活用などの節税対策を敬遠されている方はぜひ検討してみることをおすすめします。

また、相続税負担が重くない場合でも、将来の遺産分割における争いを回避するために、生前から贈与を計画的に行うことも非常に効果的です。進めるにあたっては専門家のアドバイスが重要なので、まずは相続税に強い税理士に相談しましょう。

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