相続税 2017.11.21
相続税と贈与税の違いを考慮した節税対策
財産を次の世代に移転させる際には、税金がどれくらいかかるかを考えておかなければなりません。亡くなってから財産を移転させると相続税が、生きている間に財産を移転させると贈与税がかかります。ここでは、相続税と贈与税の違いを考慮した節税対策について説明します。どちらを選んだら得なのかを考える際の参考にしていただければ幸いです。
贈与税は相続税を補完するもの
贈与税とは
贈与税は、1年間に贈与で取得した財産の額から基礎控除額110万円を差し引いた額に課税される税金です。贈与税については、相続税とともに相続税法に規定されています。というのも、贈与税というのは、生前贈与による相続税回避の防止を目的としたものだからです。
たとえば、夫が生きている間に財産を妻や子にすべて贈与してしまったとすると、夫が亡くなった時点では財産がゼロとなり、相続税が発生しないことになります。このような課税逃れができないように、相続税を補完するものとして贈与税が設けられているのです。
相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象
相続税は相続や遺贈によって取得した財産に課税される税金ですが、そういった本来の相続財産以外にも相続税の課税対象に含められるものがあります。その1つが、相続開始前3年以内の生前贈与になります。
被相続人が相続開始前3年以内に行った贈与の金額は、受贈者が相続や遺贈により財産を取得している場合には、相続財産に加算される扱いになります。このように、贈与であっても相続税がかかることがありますから、相続税と贈与税の違いはあれども、相続と贈与はひとまとめにして考えなければなりません。
相続税と贈与税は非課税範囲に違いがある
相続税と贈与税の基礎控除額の違い
相続税にも贈与税にも、取得した財産の額から無条件で差し引くことができる「基礎控除」があります。それぞれの基礎控除額は次のようになっています。
相続税の基礎控除額・・・3000万円+600万円×法定相続人の数
贈与税の基礎控除額・・・1年あたり110万円
相続税で最も基礎控除額が少なくなるのは法定相続人が0人の場合で、この場合の基礎控除額は3000万円になります。つまり、遺産が3000万円以下の場合には、相続税は一切かからないということです。一方、贈与税の基礎控除額は110万円ですから、相続税と贈与税の基礎控除だけの違いを見ると、相続税の方が非課税になる範囲が大きいように思うかもしれません。
しかし、相続は一度しかありませんが、贈与は何度でも行うことができます。贈与税の基礎控除は毎年利用できますから、年度を分けて贈与を行うことにより、非課税になる範囲を大きくすることができます。相続税と贈与税では税金を支払う回数にも違いがあるということも認識して比較する必要があります。
相続税と贈与税の配偶者優遇の違い
相続税では、「配偶者の税額軽減」として、被相続人の配偶者に大きな優遇制度が設けられています。配偶者が相続により取得した財産については、法定相続分相当額または1億6000万円のどちらか大きい額までは相続税がかからないことになっています。相続税における配偶者の税額軽減は、法律上の配偶者であれば、婚姻期間に関係なく適用されます。
一方、贈与税にも「配偶者控除」という優遇制度があります。贈与税の配偶者控除は、配偶者から居住用不動産またはその購入資金を贈与された場合に、最大2000万円を控除できるというものです。贈与税の配偶者控除を利用できるのは、婚姻期間20年以上の夫婦になります。贈与税における配偶者の優遇は、居住用不動産とその購入資金のみが対象となり、婚姻期間などの条件もあるという点が相続税との違いになります。
贈与税には様々な非課税特例もある
相続税の贈与税の違いとして、贈与税には非課税枠の大きい次のような特例が設けられているという点もあります。
①住宅取得等資金の非課税特例(最大1200万円まで非課税)
②教育資金の一括贈与の非課税特例(最大1500万円まで非課税)
③結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例(最大1000万円まで非課税)
相続税と贈与税の違いを考慮して節税対策を
贈与税の非課税枠を利用して節税する
相続財産の額が基礎控除額を超える場合には、相続税対策を考える必要があります。贈与税の基礎控除や配偶者控除、非課税特例を利用して生前贈与することにより、贈与税の負担を抑えることができます。相続税対策を考える際には、このような贈与税の非課税枠を使うことができないかどうかをまず検討してみましょう。
相続税と贈与税ではどちらが得か
相続税と贈与税には違いがあり、どちらが得かというのは一概にはいえません。相続対策については、相続財産や相続人の状況を考慮し、ケースバイケースで考える必要があります。具体的な節税対策を考えるときには、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
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