相続税 2017.12.14
相続税と贈与税の税率について
平成27年1月、相続税法の大改正が実施されました。特に大きな改正ポイントは、基礎控除額や税率に関しての内容です。しかし、「相続税より贈与税の方が税率は高いらしいけれど、贈与税の方が得だという話も聞いたことがある」「そもそも、相続税と贈与税にどんな違いがあるのか分からない」など、漠然としたイメージを持つ方も多いことでしょう。
この記事では、相続税と贈与税の違いと、相続税と贈与税の税率について解説します。
相続税とは
相続税とは、亡くなった方が遺した財産を遺族などが相続した場合や、遺言によって財産を受け継いだ場合に課される税金です。相続税は、基礎控除額よりも多い遺産がある場合に課されます。
相続税基礎控除額の計算式
「3,000万円+600 万円×法定相続人の数=相続税の基礎控除額」
相続税の課税対象となる金額を算出する手順は、次の通りです。
1.相続した財産の価額と、相続時精算課税の適用を受ける財産の価額を合計します。
2.上記1. の金額から債務、葬式費用、非課税財産を差し引いて、遺産額を算出します。
3.遺産額に相続開始前3年以内の暦年課税に係る贈与財産の価額を加算して、正味の遺産額を算出します。
4.上記3.の金額から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を算出します。上記3.で計算する正味の遺産額が基礎控除額を超えない場合には、相続税はかかりません。
課税遺産総額が算出できたら、相続税の税率を適用して税額を計算します。次のような手順で行います。
1.課税遺産総額を法定相続分どおりに取得したものと仮定し、それに税率を適用して各法定相続人別に税額を計算します。
2.上記1.の税額を合計したものが相続税の総額です。
3.上記2.の相続税の総額を、各相続人、受遺者及び相続時精算課税を適用した人が実際に取得した正味の遺産額の割合に応じて按分します。
4.上記3.から各種税額控除を差し引いて、実際に納める税額を計算します。
贈与税とは
贈与税とは、贈与者が生前に他の人に財産を贈与した場合、その財産に対して課される税金です。贈与税も、他人から譲渡された財産に対する課税という意味では相続税と趣旨は同じであるため、相続税と贈与税は混合されやすくなっています。
贈与税は、相続税を逃れたいので生前に財産を贈与しようという故意の課税逃れを防ぐ目的で設けられた税制です。つまり贈与税は、相続税の弱点を補うための存在と言えるのです。
そのため、贈与税の税率は相続税の税率よりも高くなっています。また、相続税と贈与税の大きな違いは、相続させる側の人が存命中なのか、故人なのかと、税率の差です。
贈与税の計算ではまず、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の価額を合計します。続いて、その合計額から基礎控除額110万円を差し引き、残った金額に贈与税税率を乗じて税額を計算します。
贈与税の基礎控除額は年間1人当たり110万円まで適用されますが、この贈与税の基礎控除は、贈与を受ける側の人1人あたりの合計金額110万円までという意味になります。この贈与税基礎控除の枠内で生前に財産を贈与することで相続税対策も可能です。
例えば相続対象の親族が合計で10人いる場合、1年に1,100万円、10年なら1億1,000万円の財産を贈与税非課税で贈与できます。
しかし、10年間に渡って毎年110万円の同じ金額の贈与を定期的に行った場合、最初から1億1,000万円を贈与する意思があったのに贈与税を逃れるために分散贈与したと見なされ、結果的に贈与税が課される場合があります。
対策としては、毎年贈与金額を変更したり、現金だけでなく株式など贈与したりして、財産の種類を変更し、贈与税を課税されないよう工夫する必要があります。また、あえて110万円を少しだけ超える贈与をして贈与税申告をして証拠を残すという方法も有効です。
相続税の税率について
ここでは、相続税の税率を表で紹介します。相続税の税率は、次のように定められています。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | 無し |
1,000万円~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円~ | 55% | 7,200万円 |
贈与税の税率について
ここでは、贈与税の税率を表で紹介します。贈与税の税率には、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者への贈与に適用される「特例税率」と、特例税率に該当しない「一般税率」の2種類の税率があります。
「特例税率」
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 無し |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円~ | 55% | 640万円 |
「一般税率」
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 無し |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円~ | 55% | 400万円 |
このように相続税と贈与税の税率は微妙に異なります。また、適用できる控除制度も違うため、節税対策を講じる際には、控除制度を効果的に適用することを心がけましょう。
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