相続税 2018.03.19
相続税申告における預貯金の扱いについて
遺産相続においては、預貯金を相続する機会があることがほとんどでしょう。基本的に預貯金は現金と価値が変わらないものの、相続税申告に際して行う財産の評価においては、現金とは違う評価をする必要があります。
ここでは、色々な預貯金の評価方法、預貯金を相続する場合の相続税で気をつけたい点などについて解説します。
預貯金の評価額を算出してから、相続税額を計算する
遺産相続において、相続税を納めるために重要な手続きが、相続財産の評価です。相続税は課税対象になる財産の評価額に応じて算出されるため、財産の評価額が低ければ相続税も安くなり、高ければ相続税も高くなります。
預貯金を含めた相続財産の評価は、相続が発生した時の時価を基準として判断されます。
預貯金に関しては、金融機関に預けているというだけで現金とほぼ変わらない価値を持っているわけですが、国税庁の「財産評価基本通達」の基準に従って財産評価をする必要があります。
普通預金の相続税評価
預貯金のうち、普通預金および通常貯金は、原則として相続開始日の預入残高がそのまま評価額となります。
取引のある金融機関に預貯金の残高証明書を発行してもらえば、普通預金の相続税評価は完了します。預貯金の相続税申告では、残高証明書に記載の残高を申告します。
預貯金の既経過利息が多額になる場合は、既経過利息から源泉徴収額を引いた額を加えて、相続税の評価額を求めます。
既経過利息とは、その時点で口座を解約した場合に支払われる利息のことです。源泉徴収額である20.315%を差し引いた額となります。
定期預金の相続税評価
預貯金の中でも、定期預金や定期郵便貯金など貯蓄性の高い預貯金は、普通預金とは異なる方法で相続税の評価額を計算します。定期預金の預貯金の場合は金融機関の預入残高に、既経過利息から源泉徴収額を引いた額を加え、相続税の評価額を求めます。
外貨預金の相続税評価
預貯金の中に外貨預金がある場合には、残高を円に換算して相続税の評価をする必要があります。この際に使用する為替レートは、相続税を納税する人が取引している金融機関が公表する「対顧客直物電信買相場(TTB)」を基準とします。
円換算のタイミングは、相続税の納税時期です。もし相続税の課税時期に対顧客直物電信買相場がない場合は、相続税の課税時期前の相場の中で、相続税の課税時期に最も近い日の相場を基準として換算します。
貸付金債権の相続税評価
預貯金の中に、被相続人の貸付金や売掛金、未収金などがある場合は、貸付金債権として相続税の評価額を計算します。貸付金債権は、元本と相続開始日までの経過利息を加えた金額が相続税の評価額となります。
貸付信託、証券投資信託の相続税評価
預貯金というかどうかは微妙なところですが、相続する預貯金に貸付信託や証券投資信託が含まれている場合もあるでしょう。
貸付信託の場合は、発行した信託銀行などが相続開始日に買い取ると仮定した場合の買い取り価格が、相続税の評価額になります。
この買い取り価格は、元本と既経過収益(相続開始日の前日までの期間の収益の分配金)の合計額から、買い取り割引料を差し引いた金額です。既経過収益と買い取り割引料は、各金融機関によって異なります。
証券投資信託の場合は、相続開始日に解約請求または買い取り請求を行った場合に、証券会社などから支払われる金額を相続税の評価額とします。
預貯金の相続税評価に関する留意事項
預貯金は、ほとんどの被相続人が保有しているものです。
預貯金の相続で留意したいこととして、その口座の名義人が被相続人ではないとしても、実質的に預入残高が被相続人のものと見なされる場合には、その口座の残高も相続税の課税対象となってしまいます。
相続税の申告漏れとして税務署から指摘されるケースの半数ほどが、名義の違う銀行口座によるものです。
子どもが進学・結婚する時のために蓄えておいてあげようと、被相続人があえて家族に知らせないで家族名義の口座を作っている場合も多いので、財産調査の際に配偶者や子どもの名義にしている預貯金がないかどうかもよく確認しましょう。
まとめ
預貯金の場合は現金と異なり、利息などを計算して相続税の評価額を求める必要があります。また、被相続人が家族へのサプライズプレゼントとして、家族名義の預貯金を作っていることも珍しくありません。
相続税を申告した後に見つかると追加で課税される可能性もありますから、相続財産の調査は慎重に行いましょう。
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