相続税 2019.09.30
相続税は分割払いできる?延納や物納のやり方について
相続税については現金一括での納付が原則ですが、相続税申告については納税額が非常に高額になる傾向があるため、一括納付が難しいケースもあります。
どうしても納税が難しい場合、分割払いや他の方法で納税することはできるのでしょうか。そこで今回は、相続税の分割払いである延納や、財産そのもので納税する物納について詳しく解説します。
相続税ならではのリスクとは
所得税や贈与税は所得や贈与に対して課税されるため、納税資金がいつ、いくら必要になるのかについて事前にわかります。
対して、相続税については以下の2つの要素があるため、納税資金対策をしておかないと、税金が払えないという状況を引き起こしてしまうのです。
・「死亡」というコントロールできないタイミングで納税義務が生じてしまう
・課税対象となる財産の範囲がとても広いことから、納税額が高額になりやすい
そこで気になるのが、相続税の分割払いです。
相続税は分割払いができるのか
相続税はいくら納税額が高額になったとしても、現金一括納付である点は同じです。ただ、突然の事故などで相続が発生してしまうと、納税資金が準備できず、納税できない可能性も考えられます。
では、相続税を分割払いで払うことは可能なのでしょうか。
相続税の分割払いは延納
相続税の一括払いがどうしてもできない場合は、分割払いである「延納」が認められる可能性があります。ただ、あくまでも現金一括が原則なので、任意に分割払いが選択できるわけではありません。
分割払いを利用できるのは、以下の要件に該当する場合に限られます。
・相続税が10万円を超える
・金銭による納税が困難な事情がある
・困難な金額の範囲内の延納である
・一定の担保を提供できる
・延納申請書を納税期限までに提出すること
担保にできるのは、不動産、社債、国債、地方債、その他有価証券など、一定の財産に限られます。ただし、延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以内であれば担保は不要です。
延納できる期間は、相続財産に対して不動産等が占める割合に応じて、5年、10年、15年、20年と期間が変わります。
このように、分割払いは、本当に納税に充てる現金がない場合に、足りない範囲の金額でしか認められません。
上記要件に該当する場合において、税務署長に許可されれば、分割払いによる相続税の納付が可能になります。
また、分割払いを利用すると、「延納利子税」が課税され、納税額自体は割高になってしまうため、現金一括で納付することを考えて早めから生命保険などを活用し、納税資金対策を講じておくことが重要です。
カード払いで分割も可能に
2017年1月4日から、相続税などの納税にクレジットカードが利用可能になったことをご存知でしょうか。相続税をクレジットカードで納税すれば、延納による分割払いが認められなかったとしても、クレジットカードの設定で分割払いにすることも可能です。
利用可能なクレジットカードの一部をご紹介します。
・VISA
・MASTERCARD
・JCB
・American Express
・Diners Club
分割でも厳しい場合はモノで払う
相続税を分割で払うことも難しい方については、財産そのもので納税する「物納」という方法が認められる可能性があります。
物納できる財産については、次のように優先順位が決められているため、納税者側が任意に物納する財産を選ぶことはできません。
第一順位1:国債、地方債、不動産、船舶
第一順位2:不動産及び上場株式等のうち物納劣後財産に該当するもの
第二順位1:非上場株式等
第二順位2:非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第三順位:動産
物納はいくらの納税になる?
物納によって納税できる金額は、物納財産の時価ではなく、相続税評価額となる点に注意が必要です。
不動産など、時価よりも相続税評価額の方が大幅に低い財産については、物納に充てるのではなく、実際に財産を売却して納税資金に充当した方が、納税効率がよくなります。
特に、小規模宅地等の特例など、相続税評価額を引き下げる特例を適用して申告した相続財産を物納に充てる場合、引き下げられた相続税評価額がそのまま物納の金額になってしまうため、あまりおすすめできません。
まとめ
相続税は、現金一括納付がどうしてもできない場合、分割払いでの納税が認められる可能性があります。
納税資金が準備できそうもないからといって、申告期限が過ぎたまま放置していると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが発生してしまいますので、十分注意が必要です。
延納や物納の手続きは非常に煩雑なので、できれば弁護士を代理人にして申請した方がよいでしょう。
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