相続税 2019.12.16

生前贈与と相続、不動産取得税が有利なのはどっち?

相続対策を検討する場合、相続税について強く意識するかと思いますが不動産については相続税だけではなく、「不動産取得税」についても頭の片隅にでも入れておく必要があります。

実は、不動産取得税は贈与と相続で金額に大きな差が生じるため、不動産の生前贈与などの対策を実施する前に課税の仕組みについて知っておくことが重要です。

そこで今回は、贈与や相続における不動産取得税の課税の仕組みについて詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

不動産取得税とはどんな税金?

そもそも不動産取得税とは不動産を取得した時に課税される税金ですが、もう少し詳しく解説すると次のような時に不動産取得税が課税されます。

【不動産取得税が課税される時】

・不動産を買った時

・不動産を交換した時

・不動産を新築した時

・不動産を増築した時

・不動産の贈与を受けた時

このように不動産の「取得」の中に含まれているのは、売買、交換、新築、増築、贈与だけで相続については対象外となっているのです。

不動産取得税の計算方法

不動産取得税は次の計算方法によって税額が決まります。

不動産取得税額=固定資産税評価額×4%

標準税率は4%ですが、現在は下記のような特例が適用できます。

・土地及び住宅:3%(2021年3月31日まで)

・住宅以外の家屋:4%

また、宅地については固定資産税評価額の1/2とする特例が2021年3月31日まで適用可能です。

不動産を新築した場合の特例制度

不動産を新築した場合の不動産取得税については、建物と土地それぞれについて以下のような特例を受けることが可能です。

建物

建物を新築した場合については、不動産取得税の計算において固定資産税評価額から1,200万円が控除されます。

適用対象となるのはマイホームやセカンドハウス、賃貸マンションなど住宅全般で、課税床面積については50㎡以上(戸建以外の賃貸物件については40㎡/戸以上)です。

また、認定長期優良住宅に該当する住宅を取得した場合については、100万円多い1,300万円の控除を受けられます。(2020年3月31日まで)

土地

土地については、下記のいずれか多い方の金額について不動産取得税から控除されます。

・45,000円

・(土地1㎡当たりの固定資産税評価額×1/2)×(課税床面積×2(200㎡まで))×3%

土地については基本的に取得から3年以内に建物を新築した場合や、借地に建物を新築した人が、新築後1年以内に当該土地を取得した場合で、建物の特例の適用要件を満たしていれば適用可能です。

相続は不動産取得税が非課税

相続によって不動産を取得したとしても、不動産取得税は一切課税されません。

つまり、不動産取得税の面だけでいえば不動産を生前贈与すると不動産取得税が課税される分不利ということになります。

ただ、贈与については相続とは違いタイミングを予測することができるほか、「住宅取得等資金の非課税制度」や「配偶者控除」など様々な特例制度があるので、たとえ不動産取得税が課税されるとしても生前贈与した方が節税になる場合もあるのです。

よって、不動産を生前贈与するか相続するかについては不動産取得税のみならず、贈与税や相続税についても総合的に考える必要があるでしょう。

 

相続でも不動産取得税が課税されることがある?

このように相続によって不動産を取得した場合については、原則として不動産取得税は非課税ですが「相続時精算課税制度」を適用している方については、例外的に不動産取得税が課税されるため注意が必要です。

相続時精算課税制度とは?

生前贈与をすると基礎控除額である年間110万円を超えた部分については贈与税が課税されます。

この制度のことを「暦年課税制度」といい、基本的になにも手続きをしなければ暦年課税制度に従って贈与税が課税されるのですが、別途手続きをすることで「相続時精算課税制度」に切り替えることも可能です。

相続時精算課税制度とは、生前贈与によって納税が必要になる贈与税を課税しないようにして、相続が発生した際にまとめて相続税を課税するという制度で、一度適用すると暦年課税制度には戻れません。

簡単にいうと、贈与税を相続まで先送りするということです。

高齢者の預金が多い日本において、生前贈与による贈与税を相続の際の相続税に先送りすることで、次の世代への生前贈与を促して経済を回転させようというのが狙いのようです。

相続時精算課税制度を使うと不動産は贈与扱いになる

相続時精算課税制度を適用して不動産を贈与した場合、相続の際に相続税が課税されることとなりますが、税務上は相続ではなく贈与によって不動産を取得した扱いになるため、不動産取得税が課税されます。

制度の名称に「相続」と入っていますが、扱いとしては贈与なので注意しましょう。

 

まとめ

今回は不動産を贈与、相続した場合における不動産取得税の扱いについて解説してきました。

不動産取得税の金額自体は相続税や贈与税に比べるとそこまで高額ではないものの、課税される時期がずれるため忘れたころに請求されることに注意が必要です。

不動産取得税は取得した時ではなく、取得後半年から1年以上経過してから納税通知書が届くことが多いので、売買や贈与によって不動産を取得した場合は不動産取得税が課税されることを覚えておきましょう。

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