相続税 2020.01.15

相続税の基礎控除が減る!?不当減少養子ってなに?

相続税の節税対策として「養子縁組」を利用するケースがあります。
ただ、本来養子縁組は節税対策のためではなく、法律上の親子関係を作るために必要な場合にすべきもののため、節税のみを目的とした養子縁組はおすすめできません。

そこで今回は相続税対策で養子縁組したものの、税務署長から否定されたケースについて詳しく解説します。これから養子縁組を考えている方は、事前に読んでおくことをおすすめします!

記事ライター:棚田行政書士

養子縁組が相続税対策になるわけ

養子縁組を利用した節税対策を知らない方のために、仕組みだけ簡単に解説しましょう。

そもそも相続税には基礎控除という全ての人が利用できる控除額があり、次の計算式によって算出します。

3,000万円+600万円×法定相続人の人数=基礎控除額

例えば法定相続人が2人であれば4,200万円となり、法定相続人が増えるごとに600万円基礎控除額が上乗せされる仕組みとなっています。そのため子供の人数の多い方が、基礎控除額が引きあがり、相続税が節税できるのです。

そこで考え出されたのが養子縁組を使った基礎控除額の引き上げです。

養子縁組をするとたとえ血が繋がっていなくても、法律上は親子になるため法定相続人の人数が1人増えるのです。

例えば孫は法定相続人にはなりませんが、孫と養子縁組をすることで孫も実子と同じ扱いとなるため、法定相続人の人数に加えて基礎控除額を計算することができるのです。

法定相続人の人数に含められる養子の上限

養子縁組をするだけで基礎控除が増えていくので、相続税対策に悪用されないよう基礎控除額の計算に含められる養子の人数は次のように上限が規定されています。

・実子がいる場合は養子1人まで

・実子がいない場合は養子2人まで

よって、手当たり次第に養子縁組をしたところで、基礎控除については上限があるため注意が必要です。

普通養子については役所に書類を提出するだけで簡単にできるため、生前に節税を目的として孫などと養子縁組するケースを時々見かけます。

ただ、相続税の節税だけを目的として養子縁組をすると後に痛い目をみることになるため注意が必要です。国税庁のホームページにも、相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められる場合は、その原因となる養子の数は計算に含めないと記載されています。

 

養子縁組の節税が税務署長に否定された事例

被相続人であるXさんは、生前に相続税を少しでも減らそうと思い、娘婿と養子縁組をしていました。ただ、あくまでXが可愛いのは実子である娘Yなので、「すべての遺産は娘Yに相続させる」とする遺言書を書いて保管していたのです。

Xさんとしては相続税対策をしつつ、娘Yへの愛情はしっかりと貫き通したわけですが、残念ながらこの節税対策は税務署に通用しなかったのです。

相続税法63条「不当減少養子」とは?

本来養子縁組をするということは、養子を相続人にして財産を相続させたいという動機があるはずなのに、遺言書には養子に一切財産を相続させないような内容になっている場合は、税務署側に「養子縁組を節税対策のために使った」と受け取られます。

相続税法には、養子縁組を節税対策に使ったと考えられる場合については、税務署長の権限で養子の人数を相続税の基礎控除の計算から除外することができる、とする規定があるのです。

このように節税目的の不当な養子のことを税法上「不当減少養子」といいます。

養子縁組で揉める場合も

このように節税目的の養子縁組とわかると、もはや節税対策としての効果はありません。

ところが、養子として相続人である地位については否定されないため、養子は依然として相続人として存在することになります。

遺言書ですべての遺産を実子に相続させると記載している場合でも、養子は実子と同じように扱われるため最低限の取り分である「遺留分」を主張することができるのです。

被相続人からすれば節税目的でしかなかった養子縁組でも、養子からしてみれば相続人として可能な限り財産をもらいたいと思うことがあるため、実子と養子の間でバトルが発生してしまうことがあります。

養子縁組を節税対策で使うことは非常にリスクが高いので、手続き自体は手軽ですが節税目的では使用しないことをおすすめします。

 

まとめ

節税対策を検討している人の中には、孫を養子にしようと考えている方は多いのではないでしょうか。

孫を養子にすることで、相続を一代飛ばせるという大きなメリットはあります。しかし、目先の節税だけを目的にしてすべてを子に相続させる遺言書を書いてしまうと「不当減少養子」と指摘され節税効果が否定されてしまうため気をつける必要があります。

相続税対策は養子縁組ではなく、生前贈与や生命保険などを活用して対策を考えたほうがよいでしょう。

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