相続税 2020.03.06

誤解しているとヤバい。配偶者居住権ってどんな権利?

2020年4月から民法の改正で新たに「配偶者居住権」という権利が創設されます。
巷では配偶者が夫名義の家に相続後も引き続き住み続けることができる権利と認識されていますが、実は重要な部分の知識が欠けている方が多くて心配しています。

正しい知識がないと、せっかく権利が創設されてもその恩恵を受けることができません。

そこで本記事では、誤解が多い「配偶者居住権」のポイントについてわかりやすく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

配偶者居住権とはなにか

そもそも配偶者居住権とは、相続が発生した際に被相続人名義の自宅に住んでいる配偶者に対して与えられる権利で、引き続きその自宅に住み続けることができるという効果があります。

本来であれば自宅の所有権自体を相続すればよい話なのですが、相続が発生した際に相続財産の大部分を自宅の価値が占めるケースが多く、なかなかそうはいかないケースが多いんです。

配偶者居住権を作ったわけ

例えば、預金1,000万円、自宅3,000万円が相続財産で相続人が妻と子の2人だとします。

法定相続分は半分ずつなので単純に分割すればよいのですが、子が自宅を売却して現金化しようとしていることから、妻としては単独で自宅を相続することを望んでいます。

ところが妻が自宅を相続しようとすると、本来は2,000万円ずつ分ける必要があるので妻から子へ1,000万円分現金で支払う必要があるのです。

そもそも夫婦の生活費は共有していることが多いので、預金の1,000万円全額を子に持っていかれるだけでもつらいところを、追加でさらに1,000万円も支払うとなると現実的には不可能になります。

このように配偶者が自宅を相続することで、他の財産を一切相続できなくなるという問題が多く発生していたのです。

 

配偶者居住権が必要な家庭

ここまでの記事を客観的に読むと、単純に「子が譲ってあげればいいのに」と思った人は多いのではないでしょうか。

法定相続分という民法の規定はあるものの、絶対的な基準ではないので相続人同士で譲り合いができるのであれば全く別の方法で分割してもよいのです。

ところが、妻と子で子が前妻の連れ子だったりすると妻と子では血縁関係がないので相続でもめてしまうことがよくあります。

わかりやすくいうと、被相続人が離婚と結婚を繰り返していた方でその都度お子さんがいるような場合は遺産分割で譲り合うことが難しいので妻が自宅を追い出されそうになる事態が発生しやすいです。

 

配偶者居住権と所有権

配偶者居住権とは簡単にいうと、従来からある自宅の所有権という権利を「所有する権利」と「住む権利」の2つに分けてそのうちの住む方の権利のことをいいます。

配偶者居住権は原則として終身、つまり配偶者が亡くなるまで自宅に住み続けることができますが、別途取り決めをすれば任意の年数で設定することも可能です。

配偶者短期居住権との違い

配偶者居住権を理解するうえで最も重要なのが、配偶者短期居住権との違いです。

実は今回の法改正で創設されたのは、配偶者居住権と配偶者短期居住権がありそれぞれの違いを理解することがとても重要になります。

配偶者短期居住権とは、相続発生時に被相続人名義の自宅に住んでいる配偶者に対して「自動的に」認められる権利で、相続開始から6ヶ月もしくは遺産分割が確定するまでのどちらか遅い方の日まで、引き続き自宅に住み続けることができる権利です。

ここまで聞くと、配偶者居住権は配偶者短期居住権よりも自宅に住み続けられる期間が長いだけでしょ、と思うかもしれませんが、そうではありません。

配偶者居住権は亡くなるまで住み続けられるという強い権利ではあるものの、配偶者短期居住権のように自動的に認められる権利ではないのです。

ここを誤解している方がとにかく多いので、改正民法が施行されてから混乱が起きるのではないかと心配しています。

 

配偶者居住権がもらえる3つケース

配偶者居住権は自動的に認められる権利ではなく、次の3つのうちいずれかに該当する場合にのみ権利が認められます。

・遺産分割協議において相続人全員で合意して設定した場合

・遺言書で設定した場合

・死因贈与した場合

親族間の仲が悪い場合に遺産分割協議で権利を設定することは現実的に難しいので、実質的には遺言書や死因贈与によって配偶者居住権を設定しておかなければ、配偶者はこの権利を取得できません。

つまり、配偶者居住権で残された配偶者の生活を守るためには、必ず「事前対策」が不可欠だということです。

 

まとめ

配偶者居住権は配偶者の生活を保護するためにも非常に重要な権利ですが、必ず事前対策が必要になりますのでなにもせずに権利が取得できると誤解しないよう注意が必要です。

何もしなくても取得できるのは、配偶者短期居住権だけなので短い期間しか居住が保証されません。配偶者居住権であれば登記もできますので、配偶者が生きている間は安心して住み続けられます。

今から対策を考えている方は、弁護士に相談して遺言書の作成を検討することをおすすめします。

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