相続税 2020.04.06
あるはずの遺言書がない。遺言書を預かってもらう方法と新たな制度とは
相続対策で遺言書を書く人が増えているようで、書店でも遺言書作成フォーマットのようなものが販売されるようになりました。
ですがそんな中、せっかく作成した遺言書が見つからないというケースを度々耳にします。
そこで今回は、遺言書の保管をめぐるトラブル事例をご紹介しながら、ベストな保管方法を法改正情報も含めて解説したいと思います。
遺言書の種類を保管方法
遺言書と一言でいっても、種類が法律上3つ規定されていてそれぞれ保管方法が異なります。
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
・自筆証書遺言
もっとも安心確実と言われている公正証書は、公証役場で公証人という裁判官のOBのような人に遺言の内容を話して遺言書を作ってもらう方法で、原本を公証役場で保管してくれるのでとても安心です。
ただ、公正証書遺言を作成するとなると相続関係になり証人を2名公証役場に連れてきて立ち会ってもらったり、遺産額に応じて一定の手数料が発生したりといったハードルがあることから、利用している人はそこまで多くありません。
公正証書遺言以外の遺言書については、基本的に自己責任で保管をするしかないのが法改正前までの状況でした。
弁護士に預けていたのにトラブルになったケース
自筆証書遺言で作成した遺言書を、知り合いの弁護士に預かってもらっていた人がいました。実際、遺言書の保管サービスを行っている士業者は少なくありません。
自分で保管するよりも安心で信頼できるという面はあるかもしれませんが、実はこれ結構トラブルが起きています。
上記のケースで、実際に相続した後相続人が法律事務所に連絡を取ったのですが、弁護士自身も高齢で認知症を発症しており、保管していたはずの遺言書が見つからず相続人との間でトラブルになってしまったのです。
かなり大手の弁護士法人などであれば良いのですが、弁護士が数名の小規模な法律事務所の場合、弁護士本人が死亡したり認知症にかかってしまったりすると、もはや遺言書の安全は担保されません。
結局このケースでは遺言書が見つからず、訴えるにも弁護士本人が認知症なので諦めて通常の遺産分割協議をしたそうです。
このような事例は決して珍しくなく、自分で保管していたのになくしてしまったり、誰かに持ち出されて隠蔽、改ざんされたりするということもよくあります。
遺言書は作成することはもちろんですが、作成後の保管も非常に重要なのです。
法改正で自筆証書遺言を保管してもらえることに
このようなトラブル多発を受け、2020年7月10日から法改正によって自分の直筆で作成した自筆証書遺言についても法務局で保管してもらえる制度がスタートします。
この制度を利用すれば、面倒で費用が高額な公正証書遺言を作成しなくても気軽に法務局で遺言書を保管してもらえるようになります。(多少の手数料はかかります)
自筆証書遺言を保管してもらうまでの流れ
自筆証書遺言を自分で作成したら、そのまま本人が法務局に持ち込みます。
代理人による持ち込みはできません。
保管してもらう法務局は、次のいずれかから選択することが可能です。
・遺言者の住所地を管轄する法務局
・遺言者の本籍地を管轄する法務局
・遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局
持ち込まれた遺言書は本人確認を行った上で形式上の審査が行われ、問題がないことが確認されればそのまま保管してもらえます。
その後、相続が発生したら相続人等が法務局に遺言書の問い合わせをすることで、遺言書の有無や交付、閲覧などが可能です。
検認が不要になるおまけ付き
自筆証書遺言の保管制度を利用すると、相続発生後の検認が不要になるというおまけが付いてきます。
検認とは見つかった遺言書に改ざんなどがないか、家庭裁判所に申し立てて確認をする手続きです。
公正証書遺言以外は原則として検認を受けないと遺言書をもとに遺産分割することができないため、相続手続きが一旦ストップしてしまうのです。
今回始まる保管制度を利用すると改ざんのリスクがないことから、相続発生後の検認が不要になります。
よって、相続開始後速やかに遺産分割が進められるため、今後多くの方の利用が見込まれるでしょう。
まとめ
遺言書は単に作成すれば良いというものではなく、作成した以上はちゃんと保管しておく責任があります。
保管制度を利用すれば、安心安全に保管できるだけでなく、検認が不要になることから相続人にかかる負担がかなり軽減されますので、遺言書の作成を検討している方は是非活用してみてはいかがでしょうか。
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