相続税 2020.09.30

相続税対策で生命保険が役立つわけとは

相続税対策というと生前贈与を中心とした節税対策のイメージが強いかもしれませんが、実はもう1つ重要な対策があります。
それは納税資金対策です。
相続税はいくら節税対策をしても、ご家庭の資産状況によっては必ず相続税が発生することから、事前に納税資金対策を講じておくことがとても大切になります。
そこで本記事では、相続税の納税資金対策としての生命保険の活用について解説したいと思います。

記事ライター:棚田行政書士

生命保険が有効なわけ

相続税は現金一括納付が基本となるので、節税対策と合わせて納税資金対策についても同時並行で進めておくことが大切です。

相続財産の中に不動産が占める割合が多い方の場合、相続財産を使って相続税を納税することが難しく、相続人自身が手出しでお金を準備しなければならないことが多々あります。

相続不動産を売却するという方法もありますが、不動産を売却するためにはある程度の時間がかかりますし、急いで売却すればある程度の価格交渉には応じなければならなくなり、結果として安値での売却になるリスクもあるのです。

そのため、何らかの形で相続人の手元に相続税の納税資金が準備できるように対策をとることが必要になります。

貯蓄すると大変

貯蓄をするという方法もありますが、いつ発生するかわからない相続のために貯蓄するとなると、目標設定がしにくくなるので仮に貯蓄を始めたとしても相続発生時に予定していた額を貯められるかどうかはわかりません。

また貯蓄した金額はその間資産運用に回せなくなるので、資産形成上も非常に効率が悪くなります。かといって、親のお金で貯蓄すれば結局は相続税の課税対象になってしまうので、節税対策にはなりません。

生命保険のメリット

被相続人を被保険者及び保険料負担者、相続人を受取人に指定して生命保険に加入することで、死亡時にあらかじめ決めておいた死亡保険金が支払われるので、それをもって納税資金に充当することができます。

終身保険に加入していれば、いつ相続が発生したとしても決まった金額が死亡保険金として支払われるので、自力で貯蓄するよりも確実です。

死亡保険金には非課税枠がある

このようにして加入した生命保険によって支払われる死亡保険金については、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、生命保険にはもともと「500万円×法定相続人の人数分」の非課税枠があるので、その範囲内であれば相続税は一切かかりません。

よって、あらかじめ非課税枠を予想してその範囲の死亡保険金で契約をすれば、支払われる死亡保険金に相続税がかからないよう調整できるのです。

保険料自体も被相続人が負担するので、納税資金対策と節税対策を同時にできるということになります。

 

遺産分割の対象にならない

死亡保険金のメリットは非課税枠だけではありません。

死亡保険金はみなし相続財産ではありますが、受取人固有の財産として扱われることから遺産分割協議の対象からは外れます。

つまり、遺産分割協議に関係なく受取人が自由に使えるということです。

そのため万が一相続発生後の遺産分割協議が長引いたとしても、受取人はそれに関係なく死亡保険金を納税資金に使えます。

仮に相続人以外の人が受取人だったとしても同じです。

 

生命保険の契約方法に注意

生命保険は相続対策にとても使い易いといえますが、契約の仕方を間違えると効果が最大限発揮できません。

例えば、被相続人が被保険者だったとしても保険料負担者と受取人が相続人になっていると、死亡保険金には相続税ではなく所得税が課税されることになります。

また、保険料負担者と受取人が違う場合は贈与税の対象になるといったように、被保険者、保険料負担者、受取人が誰になるのかによって、死亡保険金に課税される税金が変わってくるのです。

相続税の非課税枠を使うのであれば、被相続人に保険料を負担してもらう必要がありますので気を付けましょう。

 

相続人以外が受け取る場合の注意点

相続人以外の人が死亡保険金を受け取る場合は、相続税申告に注意が必要です。

例えば、愛人が受取人に指定されている場合、愛人は保険金だけ受け取って遺産分割協議には参加しませんが、相続税については課税されるため、相続税申告書の作成に協力してもらう必要性が出てきます。

ところが、相続人以外の人が死亡保険金を受け取るケースというのは、相続人と揉めることが多いのでこれがうまくいきません。このような場合は、相続税申告書の作成が簡単にいかなくなるので、税理士に相談することをおすすめします。

 

まとめ

生命保険は相続税対策ととても相性がいいといえますが、契約形態を間違えると節税効果が得られなくなる可能性がありますので十分注意が必要です。

保険会社の担当者の中には、こういった課税関係をよく理解していないケースもありますので、必ず自分自身で確認しましょう。

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