相続税 2020.11.20
相続税の寄付金控除とは?寄付金控除を受けたいと考える人のための計算や申告書の書き方について
被相続人から相続した財産を、国や地方公共団体等に寄付した場合、その財産について相続税の寄付金控除を受けられることになります。相続税の節税対策にもなるので、よく利用される特例だといえるでしょう。
ここでは、相続税の寄付金控除について、計算方法や申告書の書き方等を説明していきます。
寄付金控除を受けるための計算
まず、相続税の寄付金控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
1:相続の開始から10ヶ月以内に寄付を完了する
相続税の申告・納付は10ヶ月間のうちに行わなければいけないので、寄付もこの間に済ませる必要があります。
2:不動産は換金せずそのまま寄付する
相続税の寄付金控除を適用するためには、「相続財産を現状のまま寄付する」ことが原則となっています。
3:国や地方公共団体、寄付先として認められている団体や組織に寄付する
ふるさと納税や寄付専門窓口宛てに寄付するといいでしょう。
以上の条件を満たした寄付を行った場合、「寄付金額×相続税率」という計算式で相続税の寄付金控除額を求めることができます。ここで算出された金額は、寄付しなかった場合の相続税額から減額できますので、控除後の金額を求めることが可能です。
寄付を行った場合の相続税申告書の書き方
相続税の寄付金控除を受けるためには、相続税申告書に寄付した財産の明細書(第14表「暦年贈与財産、法人への遺贈、公益団体へ寄付した相続財産の明細書」)を添付して提出しなければなりません。
1:「寄付年月日」
実際に寄付を行った日付を、「寄付した財産の明細」には寄付の種類や細目、寄付財産の所在場所と数量、価格を記入します。
2:「公益法人等の所在地・名称」
寄付先の名称と所在地を書き入れ、「寄付した相続人等の氏名」欄には寄付した財産の相続人の名前を記載します。
3:「合計」
寄付した財産の総額を記入します。
ふるさと納税による寄付も対象となる
ふるさと納税を行うと、所得税や住民税の控除を受けられるのはよく知られた話ですが、相続税の寄付金控除も受けることができるのです。さらに、ふるさと納税の場合は返礼品を受け取ることができるため、非常にお得な節税方法だと言えるでしょう。
ただし、ふるさと納税を相続税の寄付金控除として認めてもらうためには、次の3つの条件を満たしている必要があります。
1:遺言による寄付ではないこと
2:相続税申告期限内に寄付を行い、申告書に寄付証明書を添付して提出すること
3:遺産分割協議を終えており、預金名義変更も済ませてあること
なお、サラリーマンで自ら確定申告を行う必要がない人の場合、利用条件を満たせば、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を使うことも可能です。寄付先が5ヶ所以内という制限はありますが、申請書を提出することで所得税と住民税の控除を受けられるようになります。
遺言による寄付には注意が必要
相続税の寄付金控除は、あくまでも相続人の意思によって行われなければ適用となりませんので注意しましょう。遺言書による寄付の場合は適用外となるのです。
これは、寄付金と相続税の課税・非課税の問題と大きく関わっています。相続人が寄付を行った場合、課税された相続財産額から減額が可能になりますが、遺言による寄付の場合はそもそも非課税扱いになります。したがって、遺言による寄付の場合は、そもそも相続税の寄付金控除として扱うことができません。
また、気を付けたいのが、家族や親族が経営する株式会社への寄付行為です。
寄付すれば相続税の寄付金控除が受けられる、と安易に寄付してしまうと、税務署から「節税目的ではないか」と疑われかねません。
結果として、相続税が通常通り課せられることになる可能性が出てきます。
なお、相続税の寄付金控除が適用されるのは、あくまでも公益性が高い法人相手の寄付に限られますので、寄付先がこれに該当するかどうかは、事前によく確認する必要があります。
もし、相続税の寄付金控除が適用にならない法人である場合は、遺言書に当該相手への寄付を記し、「遺言書による寄付」とするのが無難だと言えるでしょう。
まとめ
相続した財産をそのまま所有していてもいいのですが、少しでも節税につなげたいと思うなら、寄付を1つの手段として検討してもいいかも知れません。相続人による寄付行為が行われた場合は、相続税だけでなく、所得税や住民税についても節税効果があるからです。
ただし、すでに述べたとおり、寄付をする相手先の公益性や「遺言によるものかどうか」といったような制約がありますので、寄付行為を行う前には、相続税の豊富な取り扱い経験を持つ税理士等に相談するといいでしょう。
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