相続税 2020.12.23

誰が相続税納税義務者になるのか

相続開始後の遺産分割協議を経て、いざ相続税の申告と納税のタイミングとなった時、「いったい誰が納税するのか」という点で立ち止まってしまう相続人は少なくありません。
ここでは、誰が相続税納税義務者に該当するのか、連帯納付義務とは何か等について、わかりやすく説明します。

記事ライター:棚田行政書士

納税すべき人と基礎控除について

相続税納税義務者とは、相続税を納付する義務を負った人のことを指しています。

被相続人から遺産を相続したり遺贈を受けたりした人がこれに当たるのです。

さらに詳しく分類すると、相続税納税義務者は次の2種類に整理することができます。

1:居住無制限納税義務者または非居住無制限納税義務者

国内外全ての遺産を対象にして納税義務を負う相続税納税義務者をいいます。

2:居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者

国内の遺産に対してのみ納税義務を負う相続税納税義務者いいます。

基礎控除について

納税する上で知っておかなければならないのが、相続税の基礎控除です。

相続した遺産総額が「3,000万円+(600万円✕法定相続人の人数)」で算出される金額内であれば、全額が控除され相続税を納める必要はありません。

逆に、基礎控除額を少しでも上回る場合は、相続税納税義務者は相続税の申告と納付を行う必要が出てきます。

ただし、算出のもとになる遺産の価値を評価する作業は、非常に難しいものだといえるでしょう。一般的に相続税納税義務者だけで申請をすすめることは難しいことも多いため、相続税納税義務者となる人は早い段階で弁護士等に相談し、間違いのない対応をすべきなのです。

 

基礎控除以外に適用可能な特例とは

遺産を相続した人のうち、およそ9割の人が非課税になっていますが、残る10割弱の人は、相続税納税義務者として相続税の申告と納付を行っている状況です。

どちらの人も、基礎控除を適用させたうえで納税額を算出しているのですが、実際には、基礎控除以外にも複数の特例が用意されています。したがって、非課税となる人も相続税納税義務者も、基礎控除以外の特例を適用した上で納税義務を負うかどうかが決まってくるのです。

特例の具体例

基礎控除を除く相続税の特例について整理していきます。

1:配偶者控除

配偶者を亡くした相続税納税義務者については、今後の生活を支えるために、相続税が軽減されます。被相続人の遺産は、夫婦がともに築き上げたものであるからです。相続する遺産総額が1億6,000万円か法定相続以下であること、内縁等ではない正式な配偶者であることが条件となってきます。

2:未成年者控除

未成年が法定相続人として相続税納税義務者に含まれる場合は、1年あたり10万円の控除を受けることができ、これは未成年が20歳を迎えるまで継続します。

3:贈与税額控除

被相続人の生前3年以内に贈与された財産については、基本的に相続税の課税対象ですが、すでに贈与税を納付済みであれば控除を受けることができます。

4:障害者控除

法定相続人である相続税納税義務者が一般の障害者か特別障碍者かによって扱いが変わってくるので注意しましょう。一般障害者の場合は1年あたり10万円の控除を、特別障害者の場合は1年あたり20万円の控除を受けることができ、いずれも満85歳まで継続します。

5:相次相続控除

直近10年以内に複数の相続があった場合、相続税の負担を軽減するために、一定の割合で今回の相続税からの控除が可能です。

6:外国税額控除

遺産が海外にも存在し、現地の法に基づき相続税相当の課税がある場合は、日本国内における相続税額が軽減されます。

 

連帯納付義務は共同相続人共通の責任

相続税は、本人が相続した分に対して課税され税金を納付するのではなく、あくまでも遺産全体に対して課税された額を納付するものです。

通常は、遺産分割協議を経て各相続税納税義務者の相続分が決定し、各相続税納税義務者が相続税を納めます。しかし、誰か1人でも納付を怠った場合、不足分については連帯責任として相続人全体に対して請求されることになるのです。これを、連帯納付義務といいます。

 

まとめ

相続税を納めるためには、相続開始後10ヶ月の間に遺産の評価と遺産分割協議を完了していなければなりません。

ですが、被相続人の葬儀に始まり片付けなどの雑務も数多く控えていますし、家族の疲労も極限に達している状況だともいえます。そのような中で、「財産の評価」「遺産分割協議」といった、専門知識や労力を伴う手続きは簡単ではありません。

このため、相続について経験豊富な税理士に早期に相談し、できるだけ負担を少なくスムーズに手続きを終えられるよう行動すべきでしょう。

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