相続税 2021.04.07

法改正で創設された特別寄与料ってなに?

近年相続法が改正され、相続の制度について目まぐるしく変化が起きています。
相続税制の改正と合わせるとかなりの改正があったため、意外と知られていない改正も少なくありません。
今回取り上げるのもそんな相続法改正の一つ、特別寄与料です。
そこで本記事では、特別寄与料の詳細と従来からある寄与分との違い、請求方法について解説したいと思います。

記事ライター:棚田行政書士

特別寄与料とは

相続法の改正によって、2019年7月1日以降に発生した相続から特別寄与料が請求できるようになりました。寄与と聞くと、「従来からある寄与分と何が違うの?」と思う人もいるかもしれませんが、実は全く意味が異なります。

特別寄与料とは、亡くなられた方を生前に無償で療養看護その他労務の提供をしたことにより、亡くなられた方の財産の維持または増加について特別な寄与をした親族が、相続人に対して請求できる金銭のことです。

例えば、Aさん、Aさんの夫、Aさんの義理父の3人暮らしだったとします。

突然の病気で夫が死亡し、その後Aさんは高齢になる義理父の療養看護に尽くしました。

こういったケースは結構あると思います。

その数年後、義理父は死亡して相続が発生しました。

この場合、義理父の遺産は従来までの法律ですと療養看護に尽くしたAさんは、1円たりとも相続できません。なぜなら、Aさんは義理父の相続人ではないからです。

仮に夫が生存していれば、夫が相続することでバランスをとることも可能ですが、夫が先に死亡していると義理父の遺産を相続することができません。

では誰が相続するのかというと、夫の兄弟姉妹です。

要するに実の父親の療養看護をしてこなかった、夫の兄弟姉妹が遺産を相続して、療養看護を尽くしてきたAさんはそれをただ見ているしかなかったのです。

実際、このようなケースでAさんの住んでいる自宅が義理父名義になっていると、相続した夫の兄弟姉妹から立ち退きを迫られて住む場所を失うという、あまりにも理不尽な事態が起こる可能性があります。

 

これまでの寄与分との違い

法改正がされる前でも、寄与分というものが存在し、被相続人の療養看護などを尽くした場合に通常の相続分よりも多く相続することもかのうでした。ただ、従来からある寄与分には決定的な弱点があったのです。それは、適用されるのが相続人だけという点です。

つまり、寄与分として考慮してもらえるのは、あくまで法定相続人であることが前提だったので先ほどご紹介したような義理父の療養看護に尽くした人には寄与分が認められなかったのです。

創設された特別寄与料は、こうした相続人ではない「親族」にも療養看護などの見返りとして金銭の支払いを認めたという、非常に大きな意義のある改正になります。

ちなみに親族とは、6親等内の血族と3親等以内の姻族のことをいいます。

 

何をしたら特別寄与料がもらえるのか

特別寄与料を請求できる親族とは、次のいずれかの条件を満たしているもののことをいいます。

・被相続人に対して無償で療養看護その他労務の提供をしたこと

・そのことによって被相続人の財産が維持または増加したこと

療養看護とは、いわゆる介護などの行為でその人が療養看護を尽くしたことによって、本来発生していたヘルパーを雇う費用や、施設への入所費用などを払わなくて済んだ、という見えない経済的利益が発生しているから、その分を特別寄与料として看護した親族に支払いましょう、という考え方です。

また、その他の労務の提供とは、被相続人の経営していた飲食店において無休で働いてお店の経営に貢献したような場合が該当します。あくまで無償の場合なので、給料をもらって働いていたのであればそれは対象外です。

 

特別寄与料の請求方法

特別寄与料に該当する親族は、相続開始後相続人に対して請求することが可能です。

請求する金額については、法定相続分のような割合が決められているわけではないので、双方の話し合いによって額が決まることとなります。

考え方としては、療養看護であればもしも看護に協力していなかった場合に、どの程度の費用が発生していたのかを試算して請求していくことが考えられます。実務上、療養看護をしていたことを証明するのは難しいので、できれば看護の記録を日記などに記録しておくと立証がしやすいです。

 

まとめ

特別寄与料の創設によって、相続人以外でも遺産を取得できる機会ができたことは非常に大きな変化だと思います。ただし、実際に請求するとなると金額について争いになる可能性が十分考えられますので、今後特別寄与料を請求する可能性がある立場の方は、看護の記録やかかった費用などを必ず記録しておきましょう。

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