相続税 2021.05.26
実はトラブルだらけの直筆の遺言書、ベストな対策を教えます
相続対策で遺言書を利用する人が増えていますが、その一方で遺言書があるが故のトラブルも増加しているようです。
そこで今回は、多くの人が利用している直筆による遺言書の落とし穴について具体例を交えて解説したいと思います。
自筆証書遺言とは
遺言書には法律で決められた様式が3種類あり、中でも利用者が多いのが自筆証書遺言です。
自筆証書遺言とは、遺言する人本人が直筆で書く遺言書のことで、非常に手軽に利用できて費用もかからないことから最も利用者が多いと言われています。
自筆証書遺言の弱点としては、相続が発生した時にすぐに遺言書を実行することができず、家庭裁判所で検認の手続きをしなければならないことが挙げられますが、実はそれ以上にもっと重大な落とし穴があることをご存知でしょうか。
検認手続きは手間がかかるものの、特段のトラブルにはなりにくいですが、実は遺言内容に問題が生じることがあるんです。
遺言書の内容で争った事例
遺言書の内容は法定相続分よりも優先しますが、それはあくまで法的なことであり、その内容を当事者である相続人らが納得するとは限りません。
相続人が長男と次男の2名だった事例において、遺言書の内容が財産の大半を長男に相続させるというものでした。この場合、次男が納得すれば何の問題もありませんが、納得しないとなるといろんな問題が出てきます。
遺留分侵害に対する請求
次男には民法で保護されている取り分である遺留分があります。今回のケースでは1/4が遺留分にあたることから、1/4を侵害する部分については遺留分侵害額請求によって長男から侵害した分の金銭を取り戻すことが可能です。
ただ、今回のケースでは次男がそれでは納得しないくらい怒っていて、遺言書の無効を主張する事態になってしまったのです。
遺言能力の有無の証明
遺言書が作成された当時、被相続人はすでに認知症にかかっていた頃だったため、次男としては長男が無理やり被相続人に自分に有利な内容の遺言書を書かせるよう仕向けたんだと考えたのです。
自筆証書遺言は、手軽でいつでも気軽に書けるというメリットがある反面、作成している様子が担保されていないので、認知症の人に無理やり書かせていたとしてもそれを立証することは極めて難しいのです。
実際、今回の事例でも次男は遺言書の無効を主張しましたが、それを客観的証拠によって証明することが難しく、最終的には長期間にわたって争った挙句に双方が妥協して和解して決着しました。
遺言書の無効を回避する公正証書遺言
今回の事例のように一部の相続人にとって不利となる遺言書を書く場合、相続発生後に遺言書の有効無効を争って法廷闘争になる可能性があります。
そこで対策としてオススメしたいのが、公正証書遺言です。公正証書遺言は公証役場で作成する遺言書で、自筆証書遺言とは違いいきなり作成できるわけではなく、事前に公証役場と打ち合わせをした上で、当日は証人2名と一緒に出向いて手続きをするという手間がかかります。
また、相続財産に応じて一定の手数料もかかるため、利用するハードルが若干高めです。
相続発生後の検認手続きが不要であるというメリットはよく知られていますが、実は先ほどの事例のように遺言能力の有無を争う事態になった際に、作成自体を公証役場の公証人立会いで行っているので、疑いを持つ相続人の主張を跳ね除けることができるのです。
もちろん、100%絶対かというとそうではありません。実際過去の事例ではそれでも被相続人の遺言能力が否定されたことがあります。ただ、少なくとも自筆証書遺言よりは相続人に対する説得力が強いので不要な争いを予防することができるでしょう。
まとめ
公正証書遺言は事前の準備やスケジュール調整が面倒なため、手軽な自筆証書遺言を使いがちですが、トラブルを防止するという本来の趣旨から考えた場合は、公正証書遺言のほうが確実です。
手配が面倒という方は弁護士に相談すれば、公証役場とのやりとりや証人の手配までやってくれますので、ぜひ利用してみましょう。
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