相続税 2021.11.10
今話題の死後事務委任のメリットと注意点
自分が亡くなった後も、水道、ガス、電気、電話料金の精算や解約、税金の支払いなど様々な手続きがあります。
孤独死や高齢者の単身世帯が増えている今日、このような死後の事務手続きを他の誰かへ委任することのできる死後事務委任契約という制度が注目されています。
そこで今回は死後事務委任について、メリットや注意点などを交えながら詳しく解説していきたいと思います。
死後事務委任契約とは
自分が亡くなった後に発生するのは相続だけではありません。
死亡届の提出、公共料金の支払いや解約、医療費や家賃の支払い、クレジットカードの解約など、その他にも挙げたらきりがないくらいやらなければならない事務手続きが数多くあります。
葬儀をどうするかもその一つでしょう。
本人は亡くなっているのですから、これらの手続きを代わりに行ってくれる人が必要です。
そのため、生前にこれらの死後事務を行ってくれるよう誰かに依頼しておくのが「死後事務委任契約」です。
一昔前であれば、特にお願いせずとも主に家族や親族がこれらの事務手続きを行っていましたが、近年はおひとりさまが増加し、家族との交流がほとんどない方も多く、それに伴い事務手続きをやってくれる当てのない方も増加の一途を辿っているのが現状であり、死後事務委任契約が注目されているのです。
死後事務委任契約のメリット
自分の思い描く事後処理をしてもらえる
例えば、こういう葬儀にしたい、ここのお墓に入れてもらいたい、という希望があれば、その通りにしてもらえますので、今後誰がお墓を守っていくかという紛争を防ぐ効果もあります。
遺品にしても、これは残して誰に譲る、これは処分する、など予め決めておけば、死後に意図しない形で遺品が処理されてしまうのを可能な限り避けられるでしょう。
ただし、死後事務委任では財産の継承はできないことは覚えておいてください。
その後の相続がスムーズとなる
死後事務委任契約を結ばなかった場合、家族が死後の事務手続きを行うことになるので、残された大切な人たちが煩雑な手続きに追われることになります。
家族に迷惑をかけたくない方や、 家族とは理由あって不仲であるため、死んだ後に世話になりたくないという方もいるでしょう。
もし、死後事務委任契約を弁護士・行政書士・司法書士 などの専門家に依頼しておけば、家族に負担をかけることなく死後の事務手続きを行ってもらえるので、遺族はスムーズに相続の手続きに入れますし、そちらに集中することが出来ます。
死後事務委任契約の注意点
先ほども少し触れましたが、死後事務委任では財産の継承は出来ません。
財産を「誰に何をどれだけ分け与えるか」というのは、遺言書でなければ指定できないのです。
逆に、遺言書では、死後の事務手続きをどうするか、例え記載があったとしても強制する力はありません。
よって、遺言書と死後事務委任契約、両方準備することではじめて、自分の死後にどうしてほしいかという意思を伝えて確実に実行することが出来ると言えるでしょう。
死後の手続きや財産分与を網羅的に対策しておきたいのであれば、死後事務委任契約と遺言書、両方の用意をするべきです。
死後事務委任契約をおすすめするケース
家族に迷惑をかけたくない方は勿論ですが、死後事務委任契約を是非お勧めしたいのが、身寄りが無い方や、家族や親族とほとんど交流が無く、お互いどうしているのか近況も連絡先もわからないような方です。
家族など相続人がいれば、面倒をかけることにはなったとしても、死後の事務手続きはやってもらえますが、身寄りがない方の場合や家族と没交渉な方の場合、代わりに行ってくれる人がおらず、自治体に頼ることになり、希望通りの死後を迎えられません。
また、遠い親戚が見つかっても、遺骨を引き取ってもらえないケースも多いようです。
こういったことにならないためにも、特に家族がいない方には死後事務委任契約をお勧めします。
死後事務委任を誰にまかせるべきか
死後事務委任契約を結ぶ相手ですが、専門家でなければいけないという制限はなく、遠い親戚でも構いませんし、友人や知人でも大丈夫です。
しかし、死後事務委任契約の受任者は、預貯金を引き出すなどの権利が与えられているため、悪意を持って財産を引き出されて使い込まれてしまう場合があります。
いくら生前に良い関係を築いていて信頼できる人だと思っても、金銭が絡むと豹変してしまう人は残念ながら少なくないです。
ですから、弁護士・行政書士・司法書士など、業務を全うしてくれるその道の専門家に依頼するべきでしょう。
死後事務委任にかかる費用
費用の相場は、一概にこのくらいかかるとは言えず、依頼する内容によって大きく異なるでしょう。
また誰に、そしてどこに依頼するかによっても変わってきます。
支払い方法ですが、葬儀を行うための実費やその他の手続きにかかる実費とその報酬を、生前に預託金として預けておく方法が一般的であり、数十万~100万円以上が必要となると考えておいた方が良いでしょう。
まとめ
終活という言葉が浸透してきた現在、自分の死後、家族や他人に迷惑をかけないように準備しておきたいと思う方が増えてきました。
また、一人暮らしの方の孤独死や身寄りのない高齢者の死が社会問題となっており、そのような人たちにとっても、死後にやらなければいけない事務手続きを代わりに行ってくれる死後事務委任契約を結ぶメリットは大変大きいです。
しかし、遺言書と死後事務委任契約の両方を用意しておかなければ、自分の思い描く希望通りの死後の処理はしてもらえない可能性が高いと考えてよいでしょう。
死後事務委任は誰にでも依頼することが可能ですが、トラブルを回避し、不備の無いようにするためにも、専門家と相談して契約することをお勧めします。
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