相続税 2021.12.22

夫が亡くなったら妻のへそくりにも相続税がかかる!?

主婦の方なら、夫からもらった生活費をへそくりし、自分のお小遣いにしているかもしれませんね。ところで、夫のお金をへそくりしたら、夫が亡くなったときに相続財産とみなされ、相続税の課税対象になるのをご存じでしょうか?今回はへそくりを預金し、税務調査で指摘されてしまった主婦の事案をご紹介します。へそくりのある方は、注意しておいてください。

記事ライター:ゆらこ行政書士

相続財産が基礎控除額以下なら相続税はかからない

結婚50年の夫婦。この度夫が亡くなりました。夫婦の間に子供はいません。夫には親も兄弟もいないので、相続人は妻1人。

遺産分割の話し合いをする必要もないので、妻は1人で遺産相続手続きを進めることにしました。

夫名義の財産は、自宅不動産だけ。結婚当初に購入したもので、現在の評価額は土地・建物合わせても2000万円ほどです。相続財産の額が大きくないので、妻は相続税もかからないものと考えていました。

ちなみに、相続税がかかるのは、相続人が残した財産が、次の計算式で算出される基礎控除額を超える場合です。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

法定相続人は妻1人なので、基礎控除額は3600万円。相続財産が2000万円の不動産だけなら、相続税はかからないことになります。

 

妻の預金にも相続税がかかる!?

妻が自宅の名義変更手続きを終えてホッとしていた頃、税務調査が入り、相続税の申告漏れを指摘されました。

妻は「相続税はかからないはず…」と反論しましたが、税務調査官は「銀行に預けてある妻名義の預金も相続税の課税対象になる」と説明。妻は言葉を失いました。

結婚以来ずっと専業主婦だった妻は、自分で稼いだお金がありません。

早くに結婚したので、結婚前の預金もほとんどなし。実家の親から生前贈与や相続によりもらったお金などもありません。

妻名義の銀行預金は、夫から毎月もらっていた生活費のうち、残った分をへそくりしたものでした。

 

50年の間に貯めたへそくりは3000万円!

妻は結婚当初から自分の貯金がないことに不安を感じ、生活費はできるだけ節約して、余った分を自分名義の口座に入れていたのです。

こうして50年間で貯めたへそくりはなんと3000万円。

「夫は自宅以外の財産を残してくれなかったけれど、このへそくりがあるので多少は安心できる」と妻は思っていました。

「元々は夫から受け取った生活費ですが、夫は生活費の残りは好きに使っていいといつも言っていました」と妻は再度反論。

しかし、税務調査官は「この預金の原資はご主人が稼いだお金ですから、名義預金となります」と指摘し、妻は追徴金をとられる結果になりました。

名義預金とは、口座の名義人と実質的にお金を持っている人が異なる預金です。

相続の際には、名義預金も相続税の課税対象になるとされています。

もし名義預金を課税対象外とすると、家族の名義で預金すれば、簡単に相続税を逃れられるからです。

 

配偶者には相続税の優遇がある

このように、相続の世界では、夫が稼いだお金は夫のものという扱いです。

妻がコツコツ貯めたへそくりも、結局は夫の財産として相続税の課税対象になります。

へそくりを相続財産に含めて基礎控除額を超えるなら、申告しておくことが大切です。

なお、基礎控除額を超える相続財産があっても、配偶者には税金が発生しないケースが多くなっています。

配偶者の税額軽減制度により、配偶者が相続した財産が1億6000万円以下もしくは法定相続分以下なら、配偶者は無税になるからです。

本事案では相続人は妻1人ですから、へそくりした預金も結局は妻が相続します。

自宅不動産と合わせても、妻が相続する財産は5000万円。妻は相続税を払う必要はありません。

配偶者の税額軽減を受けるには、相続税の申告が必要です。最初からへそくりも相続財産として申告していれば、妻は税金も発生せず、ペナルティをとられることもなかったのです。

 

へそくりが名義預金にならないようにするには?

今回の事案では、妻がへそくりをこっそり預金していたため、名義預金とされてしまいました。

実は、へそくりを名義預金にしない方法もあります。毎月のお小遣いとして、夫から贈与を受ければいいのです。

夫から正式に贈与された現金は、妻の財産となり、それを預金しても名義預金とはなりません。

贈与を受けると贈与税の心配がありますが、年間110万円までの贈与なら非課税です。

ただし、贈与であるという証拠を残しておかなければなりません。

贈与の証拠を残すには、贈与契約書を作成しておくのが最も安心です。

 

高額のへそくりがあるなら相続税に注意

夫の稼いだお金をへそくりしても、夫の相続が発生したときには夫の財産とみなされてしまいます。

こっそりへそくりせずに、夫にお小遣いをもらえるよう話をし、贈与契約書を作っておくと安心です。

夫に内緒のへそくりがあり、相続税がかかりそうなら、正直に申告しておきましょう。

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