相続税 2022.02.16

離婚調停中に夫が死亡。妻は財産を相続できる?

夫が死亡したら、妻は夫の財産を相続できます。既に離婚を決めている夫婦でも同じなのでしょうか?今回は、離婚調停中に夫が死亡したケースを参考に、離婚するつもりの夫婦の相続について考えてみます。

記事ライター:ゆらこ行政書士

配偶者は相続で優遇されている!

相続では配偶者に大きな権利が与えられているのはご存じの方も多いでしょう。

配偶者は無条件で相続人になり、少なくとも遺産の2分の1を相続できます。配偶者には相続税の優遇もあり、相続した財産が1億6000万円以下なら相続税もかかりません。

このように手厚い保護のある配偶者ですが、実は配偶者の身分は不安定です。

当然ですが、離婚すれば夫婦ではなくなります。かつての配偶者も、離婚したら赤の他人。

元夫が亡くなっても、元妻は財産を1円も相続できません。

 

離婚が成立しない限り法律上は配偶者

夫婦ともに離婚したいという意見が一致していても、離婚が成立するまでに時間がかかることがあります。

たとえば、離婚の条件について争っている場合です。離婚の際の慰謝料や財産分与で折り合いがつかなければ、家庭裁判所で離婚調停を行って、条件を決めてから離婚するケースも多いでしょう。

離婚調停には数か月から1年程度時間がかかりますから、離婚調停をしている間に一方が亡くなってしまうことも、ないとは限りません。

離婚調停中に夫が亡くなった場合には、妻は財産を相続できるのでしょうか?

結論から言うと、離婚調停中であっても離婚が成立していない限り、妻は夫の財産を相続できます。

法律上は配偶者であることに違いないからです。もちろん、妻が亡くなった場合には、夫が妻の財産を相続できます。配偶者の税額軽減の優遇が受けられることも言うまでもありません。

 

離婚調停成立前に夫が事故で急死!

ここで、離婚調停中に夫が死亡したAさんの例を見てみましょう。Aさんと夫の間には成人している2人の子供(長男、長女)がいます。Aさんと夫は離婚には合意していましたが、財産分与でもめていました。

Aさんは夫婦の財産の2分の1の財産分与を夫に請求。しかし、夫はAさんが過去に浮気していたことを理由に財産を渡したがらず、調停が長引いていたのです。

ところが、調停が成立しないまま、夫が突然の事故で死亡。Aさんは夫の財産を相続することになりました。相続人は子供2人とAさんなので、Aさんの相続分は2分の1。

Aさんは夫と離婚して財産分与を受けるまでもなく、夫の財産の2分の1をもらえることになったのです。

 

離婚よりも相続の方が得!?

離婚の財産分与で請求していた財産も2分の1で、相続できる財産も2分の1ですから、同じではないかと思う人もいるかもしれません。

しかし、財産分与でもらえる財産は、婚姻期間中に夫婦が築いた財産の2分の1。夫が親から相続した財産などは含まれません。

一方、相続では夫が所有している全財産の2分の1をもらえます。

夫が結婚前からもっている財産、親から相続した財産、贈与を受けた財産など、すべてを合わせた夫の財産の2分の1となるので、もらえる財産は相続の方が多くなります。

 

つまり、妻のAさんにとっては、離婚して夫の財産をもらうよりも、離婚せずに夫の財産を相続する方が得ということです。

Aさんの場合には、夫の突然の事故で予想外の展開になりました。しかし、夫の寿命が近いことがわかっているケースでは、妻は早まって離婚しない方が賢明…とも言えるでしょう。

 

離婚を考えたら遺言書を書く

逆に、夫の立場では、離婚成立前に自分が死亡したら妻に財産が渡ってしまうのは納得いかないでしょう。離婚するつもりの配偶者に財産を相続させたくない場合、遺言書を書いておく方法があります。

相続のときには、遺言書が残されていれば、遺言書に従います。

たとえば、Aさんの夫が「長男に全財産を相続させる」という遺言書を書いていれば、妻のAさんには財産が渡らず、長男が全財産を相続することになります。

ただし、配偶者には遺留分という最低限の取り分があります。

Aさんの場合には4分の1の遺留分があるので、長男に対し遺留分の取戻しを請求できます。Aさんが遺留分を請求すれば、夫の財産の一部はAさんの元に渡ります。

 

生命保険の受取人変更や相続人廃除も

離婚に合意して離婚調停をしている状態でも、離婚成立までには時間がかかることがあります。

高齢の場合や余命宣告を受けている場合には、離婚成立前に相続となってしまう可能性も考えておいた方がよいでしょう。

離婚が成立しない以上、配偶者は相続人になります。配偶者に財産を渡したくない場合には対策が必要です。

遺言書を書く以外にもできることはあります。もし生命保険の受取人が配偶者になっていれば、受取人変更をしておきましょう。

配偶者に相続させたくない場合、家庭裁判所に相続人の廃除を申し立てる方法もあります。

廃除とは、相続人の相続権を奪う手続きです。廃除が認められるには、配偶者に相当悪質な行為がなければなりません。

浮気していたからと言って必ず認められるわけではありませんが、弁護士に相談してみるのがおすすめです。

 

まとめ

夫婦も離婚すれば他人になり、権利義務関係が多く変わります。

しかし、離婚調停中に夫が死亡しても、まだ離婚成立前なので妻は配偶者として財産を相続できます。

離婚調停になっている場合には、相続についても少し意識しておくとよいかもしれません。

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