相続税 2022.04.11
故人の電子マネー残高が100万円!相続できる?
主に「〇〇ペイ」と呼ばれる電子マネー。電子マネーは事前に現金をチャージして使うタイプのものが主流なので、高齢者も多く利用しています。亡くなった家族の持ち物を整理していて、電子マネーの存在に気付く人もいるはずです。
今回は、電子マネーの相続について説明します。故人の電子マネーを発見したらどうすればいいのかを知っておきましょう。
故人の電子マネーに高額が残っているかも!?
相続が発生したときには、亡くなった人の財産について、相続人が引き継ぐ手続きをしなければなりません。そのために、まずは相続人の残したすべての財産を洗い出す必要があります。
銀行預金や株式などは当然財産に該当します。クレジットカードは買い物を後払いにしたりお金を借りたりするためのものなので、財産的価値はありません。
ならば、「〇〇ペイ」と呼ばれるQRコード決済や、乗車券としても使える交通系ICカードなどのいわゆる「電子マネー」はどうでしょうか?
電子マネーは現金と同様に使えますから、財産的価値があるはずです。
キャッシュレス化の流れにより、電子マネーは近年急激に浸透してきました。特に、電子マネーを利用している高齢者は珍しくありません。
高齢者の場合、審査に通らずクレジットカードを持っていなかったり、クレジットカードそのものに抵抗があったりします。高齢者がキャッシュレス化に対応するために、電子マネーなら都合がよいのです。
「財産的価値があると言っても、電子マネーの残高なんてせいぜい数千円か数万円じゃないの?」と思う人もいるかもしれません。
電子マネーのチャージ額の上限は各社で異なり、多くは5万円程度ですが、中には100万円チャージ可能なものもあります。残高が数千円なら放置しておくという人も、数十万円や100万円なら見過ごせないでしょう。
電子マネーは相続できる可能性あり
電子マネーには財産的価値があるので、預貯金と同じように相続人が相続できてもおかしくはありません。実際のところどうなのでしょうか?
電子マネーは最近普及した新しい決済手段なので、電子マネーの相続については法律やガイドラインがまだ整備されていません。各電子マネー会社によって対応が異なるのが現状です。
明確な基準を設けないまま、その都度状況に応じた対応をしているケースも多くなっています。そのため、まずは電子マネー会社に相続の可否を問い合わせる必要があります。
電子マネーを相続できる扱いにしている会社は、かつてはほとんどありませんでした。
しかし、本人が亡くなったら電子マネーは失効とすると、消費者に一方的に不利な契約となり、消費者契約法に抵触するおそれがあります。
こうしたことから、電子マネーを相続可能とする会社が徐々に増えてきています。
電子マネーの相続について明記されていない場合でも、遺族が申し出れば払い戻しを受けられる可能性はあります。特に、残高が多い場合にはあきらめず、電子マネー会社に相談してみましょう。
電子マネーも遺産分割や相続税の対象になる
電子マネーを相続できる場合でも、発見した遺族が勝手に払い戻しして自分のものにするわけにはいかないことも知っておきましょう。
この場合、電子マネーも相続財産となり、遺産分割の対象になります。相続人が複数いる場合には、相続人全員で遺産分割協議を行って、電子マネーをどのように分けるかを決める必要があります。
電子マネーが相続財産になる場合には、相続税の課税対象にもなります。
相続税は、相続財産のトータルの額が基礎控除額(3000万円+600円×法定相続人の数)を超える場合にかかります。
電子マネーは現金と同様に評価されますので、電子マネーを含めた相続財産の額を計算し、基礎控除額を超える場合には相続税の申告を忘れないようにしましょう。
電子マネーの利用状況もエンディングノートに書いておく
ここまで、電子マネーも相続可能な場合があるということを説明してきました。
電子マネーはスマホを利用して決済することが多くなっています。スマホにはロックがかけられるので、亡くなった人のスマホの中身が確認できないことは当然あるでしょう。電子マネーを相続しようにも、そもそも故人が電子マネーを使っていたことを相続人が把握できないことも多いはずです。
普段から電子マネーに高額をチャージしている人は、自分にもしものことがあった場合に備えて、家族に電子マネーの利用状況がわかるようにしておくのが安心です。
1つの方法として、エンディングノートに自分の財産の明細を書いておく方法があります。
銀行口座や有価証券だけでなく、使っている電子マネーについてもエンディングノートに記載しておくとよいでしょう。
まとめ
キャッシュレス化により、個人が保有している財産の種類も多様化しています。
電子マネーにも高額をチャージできるケースがあり、相続できる可能性があります。相続手続きのために亡くなった人の財産を調べる際には、電子マネーの有無にも注意しておくとよいでしょう。
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