相続税 2020.01.17
一律じゃない?気になる相続税の税率とは
2015年1月1日から相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられたことにより、以前は相続税が課税されていなかったご家庭にも課税される可能性が高まっており、相続税の大衆化が進んでいます。
一方で、相続税や相続税率に関する知識についてはまだそこまで浸透していないようで、将来の相続税に不安を抱いてはいるものの、そもそも相続税率が何%なのか知らないという人も少なくありません。
そこで本記事では、相続税の計算や節税対策をする上で絶対に知っていないといけない相続税率に関する基礎知識や、相続税率を用いて相続税を計算する際のポイントについて詳しく解説します。
相続税率は一律ではない
そもそも相続税とは相続する財産に対して課税される税金で、財産を取得する相続人や受遺者などが納税義務を負います。
相続税率は消費税率10%(軽減税率は除く)のように一律に税率が規定されているわけではなく、相続する財産の金額によって相続税率が高くなるように規定されているのです。
詳しくは下記表をご覧ください。
【平成27年1月1日以降の場合】相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 | 相続税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
※国税庁ホームページより
出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
このように相続税率は10%~55%まで大きな幅があるので、相続財産がどのくらいあるかによって適用する相続税率が大きく違ってくるのです。
相続税率と非課税制度の関係について
相続税率は課税対象となる相続財産の総額によって変化するため、課税対象価額を引き下げられる非課税制度は非常に重要な意味を持ちます。
そこでここでは、相続税の非課税制度について詳しく解説します。
相続税で非課税になる部分について
相続税は、いきなり相続財産の価額に相続税率をかけて計算をするのではなく、相続財産から一定の額を控除し残った価額に対して相続税率をかけて計算をする流れです。
相続税率を用いて計算をする前に、相続税が非課税になる控除制度として次の2つは必ず覚えておきましょう。
基礎控除
すべての相続において該当する控除制度で、次の計算式によって算出した金額について相続財産から控除することができます。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数
例えば、夫の相続において相続人が妻と子の2名だった場合、基礎控除額は次のようになります。
3,000万円+600万円×2=4,200万円
よって、相続税の基礎控除額は4,200万円となりこの額を超えた部分に対して相続税が課税されるのです。
ちなみに、2015年以前の基礎控除額は同じ条件で計算すると7,000万円になるため、法改正によって実質的に相続税の課税範囲が大きく拡大したことがわかります。
生命保険の非課税枠
基礎控除と並び相続税率を実質的に引き下げるためにとても有効なのが、「生命保険の非課税枠」です。亡くなられた方にかけられていた生命保険によって支払われる保険金については、一定の条件のもと次の計算式によって算出される金額まで非課税となります。
生命保険の非課税枠=500万円×法定相続人の人数
よって相続財産に生命保険金が含まれている場合については、上記の金額が非課税になるため実質的に相続税率を引き下げることが可能です。
相続税率をもちいて相続税をシミュレーションしてみよう
ここからは相続税率を用いて実際に相続税をシミュレーションしてみたいと思います。
相続税の計算方法はケースによっては非常に複雑でわかりにくいので、今回はポイントを抑えつつできるだけシンプルに解説していきます。
ステップ1:財産と債務を洗い出す
相続税を計算するうえで最も重要なのが、財産と債務の洗い出しです。
相続税を計算するためには預金や現金、土地などのプラスの財産はもちろんのこと、借金などのマイナスの財産についても漏れなく調べる必要があります。
課税対象となる財産は、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた残りがベースとなるため、どちらが漏れても正しい相続税は計算できませんので注意しましょう。
ステップ2:課税価格を計算する
土地や建物、株式などを相続する場合については、相続税を計算するために相続税評価額を算出する必要があります。相続税評価額の算出方法は非常に難易度が高く、税理士によっても差が出ることがあるくらいなので、早めに税理士に相談して計算してもらうほうがよいでしょう。
ステップ3:控除額を差し引く
課税価格から基礎控除額などを差し引いた残りが、相続税の課税遺産総額となります。
ステップ4:法定相続分で相続した前提で計算
課税遺産総額に直接相続税率をかけるのではなく、法定相続分で相続したと仮定してそれぞれの相続人ごとに相続税額を算出します。例えば、先ほどの事例で課税遺産総額が2,000万円の場合、相続税の合計は次のようになります。
妻:1,000万円×10%=100万円
子:1,000万円×10%=100万円
相続税合計額:200万円
実際は子がすべての財産を相続する場合でも、相続税は上記のように分けて計算したうえで、相続する割合に応じて各相続人が相続税を納税します。
まとめ
今回は相続税率を中心に相続税の計算方法について触れてみました。
相続税率は課税遺産総額に応じて税率が高くなりますが、計算する際には法定相続分で相続したと仮定して相続人ごとに計算するため適用する税率に注意しましょう。
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