相続税 2020.07.15
ローンが残っている場合、相続税はどうなるのか
遺産相続というと預金や不動産などプラスの財産を取得するイメージがあるかもしれませんが、実はそれだけではありません。相続というのは、ローンなどのマイナスの財産についても対象になるので、そのことを踏まえて相続税を正しく計算する必要があります。
そこで本記事では、相続財産にローンがある場合の相続税がどうなるのかについて詳しく解説します。
相続税とローンの関係
そもそも相続税とは相続財産に対して課税される税金ですが、ローンなどのマイナスの財産もある場合についてはプラスの財産から差し引くことが可能です。これを債務控除といいその分相続税が低くなります。
例えば、相続財産で1億円の預金と5,000万円のローンがある場合は差し引き5,000万円をベースにして相続税を計算していくのです。
※ここからさらに、基礎控除などを差し引くことができます。
分割払いのローン
被相続人がローンを組んで分割払いで返済している途中に亡くなられた場合、残りのローン残高が債務控除の対象となり、プラスの財産と相殺することが可能です。
ただし、マイナスの財産が住宅ローンの場合は注意が必要です。
住宅ローンについては、ローンを組む際に本人が団体信用生命保険に加入している可能性があるため、たとえローンが残っていても相続税の債務控除の対象になりません。
団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んでいる人が途中で死亡した場合に、死亡時の住宅ローン残高相当額の保険金が下りるというものです。
そのため、住宅ローンについては死亡によってローン残高相当額の保険金が下りて金融機関に直接支払われるため、マイナスの財産とはならず相続税の計算において相殺する必要がありません。
住宅ローンを組んでいる人が亡くなった場合は、すぐに金融機関に連絡をして団体信用生命保険の手続きをとりましょう。
連帯債務はどうなる?
亡くなられた人が他の人と連帯して債務を負っている場合は、被相続人が負担すべき金額が明らかであればその金額が債務控除の対象です。
また、他の連帯債務者が自己破産などで支払いが不能である場合は、弁済不能部分の中で被相続人が負担しなければならない金額について債務控除できます。
連帯保証人はどうなる?
連帯債務と似ているのが連帯保証人です。
例えば、被相続人が誰かの賃貸借契約の連帯保証人になっている場合、連帯保証人としての地位自体は相続の対象となりうるのですが、相続税の計算においてはローンのように債務控除できません。
連帯保証人はローンのように負担すべき金額が確定していないことが多いので、相続税の計算においては控除できないのです。ただし、相続が発生した時点ですでに家賃滞納などが発生していて金額が確定している債務がある場合については、債務控除できる場合があります。
家庭内の借入はどうなる?
ローンなどの借入については、金額が確定していれば概ね相続税の計算において債務控除ができますが、個人間のローンについては簡単にはいきません。
原則としては個人間のローンであっても、問題なく債務控除はできるのですが親族など近親者相手の借入については、相続税の脱税の可能税も出てくるので細かく確認されます。
例えば、親族相手にローンを組んでいてその金額を債務控除したい場合、税務署から次の点について税務調査で確認される可能性がありますので注意が必要です。
・ローンを組んだ経緯
そもそもなぜ親族相手にローンを組むことになったのか、いきさつについて細かく確認されます。例えば、金融機関の審査が通らないなどの理由が考えられます。
・ローン契約書の有無
金銭消費貸借契約書などローンの内容がわかる書面の提示が必要になります。ローン契約書がないと、場合によってはローンではなく贈与とみなされて贈与税の対象としてカウントされる可能性もありますので注意が必要です。
・ローンの実態
預金通帳などで実際にローンを組んでお金を貸した痕跡があるか確認されます。現金手渡しだと履歴が残らないので、ローンの実態を立証することが難しくなります。
・ローンの返済状況
ローン契約書に従って返済しているかどうかを確認されます。返済の実態がない場合は、先ほどのようにローンではなく贈与とみられる可能性がありますので注意が必要です。
まとめ
相続税を計算する際はプラスの財産は比較的確認がしやすいものの、マイナスの財産については意外と本人が生前に隠しているケースが多いので、あとで発覚して問題になるケースがよくあります。
相続税の計算上、ローンなどのマイナスの財産は相続税を引き下げる重要な要素なので、本人宛の請求書や借用書などを徹底的に確認して漏れのないよう気をつけましょう。
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