相続放棄 2018.01.20
相続放棄しても遺品整理はしても良いのか
多額の債務など相続したくない財産の割合が多い場合、相続放棄によってすべての財産を放棄する手続きをすることになります。しかし相続放棄の手続きを行っていても、故人の財産を遺品整理してしまうなど、間違った対応をしてしまうと相続放棄は認められなくなり、その債務を相続しなければならなくなってしまうのです。相続放棄した場合、遺品整理とどう向き合えば良いのかを考えていきましょう。
相続放棄が意味するもの
相続放棄とは、故人の遺した財産すべての相続権を放棄し、法的にも相続人ではなくなることを意味しています。
財産には、現金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や他者への賠償義務などマイナスのものも含まれることがあります。相続も相続放棄も、これらすべての財産状況を正確に把握したうえで決定されなければなりません。
相続の場合も相続放棄の場合も、プラスの財産だけ相続してマイナスの財産は放棄するなど、相続する財産を選択することは不可能です。ですから、プラスの財産よりマイナスの財産の方がはるかに多いなど、確実な相続放棄が必要な場合は、それが滞りなく認められるために細心の注意を払う必要があるのです。
また、一度相続放棄をしたなら後になって撤回することはできません。相続放棄はこの上ない慎重さが求められる決定なのです。
遺品整理とは?
遺品整理とは、故人の遺した物品を整理・処分することを指しています。家電品や家具、衣類や食器などの生活に必要なあらゆる物品が遺品整理の対象物です。
相続人にとっては、故人が住んでいたのが賃貸物件で今後も住み続ける人が他にいないなら、物件の解約や明け渡しなどの役目も遺品整理と同時に行わなければならないでしょう。
世間一般的には、「遺品の中で資産価値のないものをゴミとして処分することは、遺品整理にはあたらない」という見解もあります。しかし、相続放棄をする場合はあらゆる遺品整理に慎重にならなければなりません。
相続放棄したなら、遺品整理はできない
先ほど、相続放棄は撤回できないことに触れましたが、次の行為をしてしまうと法的には相続することを認めたものと見なされる「法定単純承認」状態となり、相続放棄は無効とされてしまいます。
故人の財産を処分した場合
相続人が相続財産の全部又は一部を処分した場合(民法第921条第1号)
故人の財産を隠匿した場合
相続人が限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、ひそかにこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかった場合(民法第921条第3号)
相続放棄した場合、またはする予定の人が遺品整理と向き合う場合、この2つの規定には特に注意が必要です。2番目のように、故人の財産を故意に隠して使うことは常識ある人ならそうそう起こり得ない事かもしれませんが、1番目の財産の処分は要注意です。
遺品整理する場合は、遺品を片付けたり捨てたり売ったりと、どうしても財産の「処分」行為をすることになります。ですから、相続放棄した人は遺品整理ができないということになるのです。
しかし、相続放棄した人は遺品整理に一切関われないとか、遺品に指一本触れられないという訳ではありません。
過去の裁判例においても、相続放棄しており遺品整理ができない人にも、資産価値のない遺品を常識の範囲内で形見分けする行為は許されています。
また、ゴミ集積場に出されるような生ゴミや燃えるゴミなど明らかなゴミに関しては、相続放棄した人でも遺品整理したと見なされることなく処分できるとされています。
ただし遺品整理において、「資産価値のない遺品」や「常識の範囲内」の形見分けというのがどの程度なのかについての明確な定義は存在しません。遺品整理にはあたらないと認められるかどうかは、地域性や裁判所の判断次第という面もあるのです。
例えば、相続放棄した人がノーブランドの衣類や使い古した生活雑貨を数個もらう程度であれば、遺品整理ではなくただの形見分けとして認められるでしょう。しかし、ブランド物の衣類や家電品などを大量に持ち帰ってしまうと、遺品整理したものと見なされる可能性が高くなるでしょう。
相続放棄した人の遺品整理への関わり方については、法的にも非常にあいまいな部分があるというのが実情です。遺品整理になるかならないか判断に迷うような場合には、相続放棄や遺品整理に詳しい弁護士などに相談してみるのが安全策でしょう。
相続放棄した人が遺品整理を行ってしまうと、法定単純承認となり、マイナスの財産の金額に関係なく相続しなければならなくなってしまいます。この程度の遺品整理なら大丈夫、という明確な基準はありません。相続放棄した場合の遺品整理については、十分に注意したいですね。
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