相続放棄 2018.04.04

相続放棄することのメリットとは

被相続人の財産に、価値のある財産だけでなく債務などの負の遺産がある場合は、相続人がどちらもまとめて引き継ぐことになります。
しかし、負の遺産が財産の額を優に超えているケースでは、相続人は有無を言わさず多額の債務を背負わされることになります。これでは、遺産相続はリスクやデメリットを持った、公平さにも欠ける行為になってしまいます。
そこで、相続人は「相続をしない」という選択をすることで、債務から逃れることができます。それが相続放棄です。ここでは相続放棄と、そのメリットは何かをご紹介します。

記事ライター:棚田行政書士

相続放棄とは?

相続放棄とは、被相続人の財産も債務も、すべての遺産を継承しないことを意味するものです。相続放棄をした人は相続人としての権利をすべて失い、はじめから相続人ではなかった人と見なされます。

相続放棄は、家庭裁判所へ相続放棄申述書を提出し、受理されることで完了します。

相続放棄に関してよく起きる間違いとしては、家族や他の相続人に「自分は遺産はいらないから相続放棄する」と宣言すれば相続放棄できると思い込んでいるケースです。これでは「相続分の放棄」に過ぎず、法的にはその人は相続人のままです。

よく似た言葉ではありますが、「相続放棄」と「相続分の放棄」はまったく異なる意味ですので、違いをしっかり理解しておきましょう。

 

相続放棄により、多額の債務を肩代わりせずに済む

相続放棄による最大のメリットは、被相続人の債務を一切相続しなくて良いというメリットです。

冒頭でも述べたように、相続人は欲しい遺産を選ぶことはできず、相続するなら財産も債務も一緒に引き継がなければならないというデメリットを抱えています。

相続放棄すると、価値のある遺産を相続することはできませんが、同時に負の遺産である債務を肩代わりする必要も無くなるというメリットが生まれます。債務がどれほど多額でも、相続放棄をした人はそれを一円たりとも負担する必要はありません。

被相続人が債務の返済を滞らせていた場合には、被相続人の債権者が相続人へ督促をする可能性もあります。しかし、相続放棄している人は相続人ではないため、督促対象から外れるというメリットもあります。

 

相続放棄により、他の相続人の相続分が増える

相続放棄で相続人ではなくなった人の相続分は、同順位の他の相続人の相続分へ振り分けられることもメリットと言えます。

例えば、被相続人の配偶者である妻と、3人の子どもが相続人になるとしましょう。子どものうち1人が相続放棄を選択した場合、本来3等分するはずだった子どもの相続分は2等分で良いことになるため、他の2人の子どもの相続分が増えます。

注意したい点は、同順位の相続人が全員いなくなると、次の順位の相続人へ相続権が移ってしまうというデメリットがあることです。

例えば、配偶者へ全財産を相続させたいからと言って子ども全員が相続放棄してしまった場合、子どもたちの相続分は配偶者には渡りません。次順位の相続人である被相続人の父母へ、相続権が移ってしまうことになります。

この場合は遺産分割協議で「相続分の放棄」をしたり、自分の相続分を少なくすることを承諾したりするなどすれば、自分の相続分を望む相手へ渡すことができます。

 

相続放棄により、次の順位の相続人が相続できる

先ほども触れた通り、同順位の相続人がいなくなると、次の順位の相続人へ相続権が移ります。

子どもが相続放棄すれば、被相続人の父母・祖父母に相続権が移り、父母や祖父母も相続放棄すれば、被相続人の兄弟姉妹に相続権が移ります。しかし、価値のある遺産が多くあるなら、そもそも相続放棄を選択することはないでしょう。

そのため、相続放棄による相続権の移行がメリットと言えるかどうかは微妙ですが、事情により次順位の相続人に遺産相続をさせたいと思う場合には相続放棄がメリットとなるでしょう。

ただし、相続放棄によって「代襲相続」は起こりません。代襲相続とは、本来であれば相続人になっていたはずの親が死亡または相続人としての資格を失った場合などに、その子どもや孫などが代わりに相続人となることです。

代襲相続は、本当ならば遺産相続ができたはずの相続人のための制度です。一方、相続放棄とは、相続人ではなくなることを意味しています。つまり、相続放棄によって相続人ではなくなる人の子どもや孫には代襲相続が適用されません。

相続人である親が、子どもに相続させてあげたいからという理由で相続放棄をする例もありますが、これはまったくメリットのないことなので注意しましょう。

 

まとめ

相続放棄は、被相続人の遺産の中で債務が多い場合に特にメリットを持ちます。

しかし、相続放棄は覆すことができない非常に重大な決定なので、債務以外の理由で相続放棄を検討しているなら、相続放棄以外の方法で解決できないかを模索したほうが良いケースもありますので、注意してください。

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