相続放棄 2019.11.11

話が違う!相続は放棄したのに、借金返済を迫られるのはなぜ?

遺産分割をする際に争いの火種になりやすいのが「借金」です。

相続財産は、預金や不動産など、プラスの財産ばかりじゃありません。中には相続したくない借金が多く見つかることもよくあるので、遺産分割をする前に相続の仕組みについて正しく理解しておく必要があります。

そこで今回は、1円も相続していないのに借金だけ背負わされる事態に陥ってしまった相続人の方の事例から、事態を避けるためにはどうするべきだったのかについて考えていきましょう。

記事ライター:棚田行政書士

相続財産が実家と借金のみだった事例

両親の相続で子供が相続人となる場合において、相続財産が実家である「不動産」と両親が残した「借金」のみというケースが時々あります。

今回ご紹介する事例も、母親の二次相続で長男と次男が相続人でした。

長男は実家に母親と住んでいたため、実家を単独で相続したいと考え、次男に対して次のように提案したそうです。

「借金は全部俺が相続するから、自宅も単独で相続させてほしい」

次男としては、実家を使う予定はなかったので「借金を全部面倒見てくれるなら」ということで、上記提案に同意して、財産は一切相続しないことにしました。

遺産分割協議書も作成して万全だったはずなのに

次男としては、あとから借金の返済を請求されることについて懸念したそうで、長男に書面にしてほしいと提案し、長男もこれを受け入れて、遺産分割協議書を作成して実印で署名捺印したうえで、印鑑証明書も添付しました。

書面で証拠も残して、一見すると無事遺産分割が完了したかに見えるこの状況ですが、残念ながらこの後、次男にとって予想外の状況に陥ってしまうのです!

 

債権者から突然の請求、次男は支払いを拒否できるのか

遺産分割も終わって半年ほどが経過した頃、母親の債権者から相続人として借金を返済するように請求書が届いたのです。

次男は驚いて長男に連絡したところ、すぐに借金が返済できず、督促状が届いている状況だとのこと。長男は自分が支払うといっているため、債権者に連絡をして遺産分割協議書のことも含めて伝え、長男が支払うと主張しました。

ところが、債権者の主張によると次男も相続人であることに変わりはないので、長男がすぐに支払えないなら、次男も法定相続分に従って借金の1/2の返済をする義務があるとのことでした。

遺産分割協議書という書面も交わしているのに、なぜこんなことになってしまったのでしょう。そもそも、次男は1円も相続していないのに、借金だけ返済を迫られる理由はいったい何なのでしょうか。

 

遺産分割協議書の落とし穴とは?

今回の事例で最も重要なのは、遺産分割協議書を交わしているのに債権者から借金を請求されたという点です。普通に考えると、遺産分割協議書は実印で署名捺印したうえで印鑑証明書まで添付しているから、借金は長男が支払うべきであると誰もが思うことでしょう。

確かに、遺産分割協議は法的に有効な書類なので、借金は長男に支払う義務があるのは明らかなのですが、実は重要な部分に見落としがあったのです!

遺産分割協議書は債権者に通用しない

遺産分割協議書はあくまで「相続人間での取り決め事項」なので、今回のケースでいえば、長男と次男については記載内容に拘束されるため、長男は単独で借金を返済しなければなりません。

ただし、債権者については相続人ではないので、相続人が遺産分割協議でどのような取り決めをしようが、基本的には関係ないのです!

例えば、遺産分割協議が終わった後に、長男がすぐ借金を完済すれば何事もありませんが、期限が来ても返済が行われないような場合、債権者はすべての相続人に対して法定相続分に応じた金額についての請求ができるのです。

長男と次男の法定相続分は1/2ずつなので、次男はたとえ「遺産分割協議で一切財産を相続しない」という内容で遺産分割協議書を交わしていても、債権者から請求されれば、最低でも1/2の借金は返済しなければなりません。

次男は債権者に1/2の借金を返済したうえで、長男に対して立て替えた同額を求償するしか方法がないということになります。

 

借金返済を回避する2つの方法とは

結局次男は一切プラスの財産を相続していないのにも関わらず、借金の1/2を返済させられてしまいました。

あまりにもかわいそうな状況ですが、このような事態を回避するためには、次の2つの方法があります。

回避策1:債権者の合意を得る

遺産分割はあくまで相続人間の合意なので、その内容を債権者にも主張するためには別途債権者の合意も得る必要があります。

たとえば、銀行から借り入れをしていた場合であれば、債務者の名義を長男単独とすることについて銀行とも話し合い、合意のもとで書面を交わしておくことで、のちに長男が返済に応じなくても、次男に支払い義務は発生しません。

回避策2:相続放棄をする

今回の事例のように一切の財産を相続しないのであれば、家庭裁判所で相続放棄の手続きをとることで、次男は相続人ではなかった扱いになるので借金についても一切の返済義務がなくなります。

ただし、相続放棄は相続開始後3ヶ月以内にしなければならず、今回の事例のように債権者に請求されてからでは認められない可能性があるため、注意が必要です。

財産を一切相続しないのであれば、借金のリスクを回避するためにも、できるだけ早めに相続放棄しておくことをおすすめします。

 

まとめ

遺産相続においてマイナスの財産については、遺産分割でどのような取り決めをしたとしても、債権者に対しては対抗できないので、あとから借金の返済を迫られるリスクを回避したいのであれば、先ほどのような回避策をとっておく必要があります。

今回ご紹介した次男の方のように、債権者から返済請求されるというケースがよくありますので、相続財産に「借金」がある場合は十分注意しましょう。

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