相続税 2017.10.04
生前にできる相続税軽減対策
平成27年に相続税の制度が変わり、相続税がかかる人が大幅に増えました。主な財産は自宅不動産だけというような人でも、生前から相続税を軽減するための対策を考えて準備しておく必要があります。ここでは、生前贈与の非課税制度を利用した相続税対策を中心に、相続税を軽減できる方法をいくつかご紹介します。
配偶者に住宅を非課税贈与する
婚姻期間が20年以上など一定の要件をみたす配偶者に対して、居住用の不動産またはその購入資金を贈与する場合には、2000万円まで非課税になる制度があります。この制度は「贈与税の配偶者控除」と呼ばれています。
贈与税には年間110万円まで税金がかからない基礎控除がありますから、基礎控除と配偶者控除を合わせると2110万円まで無税で贈与できます。また、通常、相続開始前3年以内に行った生前贈与は相続税の課税対象になりますが、贈与税の配偶者控除を利用した贈与は、生前贈与加算の対象にならないというメリットもあります。
子や孫の生活費・教育費として非課税贈与する
相続税法では、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」については、贈与税は非課税とされています(相続税法21条の3第1項第2号)。
「扶養義務者」とは次に該当する人になります。
①配偶者
②直系血族及び兄弟姉妹
③家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
④三親等内の親族で生計を一にする者
また、「通常必要と認められるもの」とは、「被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産」とされています(相続税基本通達21の3-6)。
たとえば、直系血族である孫の入学金、授業料、制服代、教材費、塾費用などを出してあげたとしても、贈与税がかかることはありません。現金を子や孫の生活費や教育費にあててもらう形で生前贈与すれば、相続税対策になります。
なお、非課税の生活費や教育費として認められるのは、通常必要とされる額に限られるため、必要なった都度、必要な額を渡すことがポイントになります。私立大医学部の学費や海外留学費用などで1000万円以上払ったとしても、実費をその都度払っているのであれば、贈与税は課税されません。
各種非課税措置を利用して贈与する
贈与税については、期間限定で様々な非課税措置が設けられています。各種の非課税措置を利用して生前贈与することで、相続税対策ができます。
贈与税非課税措置の主なものは、次のとおりです。
・教育資金の一括贈与
平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、子・孫名義の専用口座に教育資金を一括入金した場合には、1人につき1500万円まで非課税となります。一括贈与できる教育資金には、学校の入学金や授業料のほか、学校以外の塾や習い事の月謝なども含まれます。ただし、学校以外のものについては500万円が限度となっています。
・住宅取得資金の贈与
平成24年1月1日から平成31年6月30日までの間に、子や孫に住宅の新築・取得・増改築等の資金を贈与した場合に、一定額まで非課税となります。非課税限度額は住宅の種類(省エネ住宅かどうかなど)や契約年月によって変わり、最大で1200万円となっています。
・結婚・子育て資金の一括贈与
平成27年4月1日から平成31年3月31日までに、20歳以上50歳未満の子や孫の専用口座に結婚・子育て資金を一括入金した場合には、1人につき1000万円まで非課税となります。
生前贈与以外の相続税対策
・生命保険を活用
相続が発生した際、相続人が受け取る生命保険金については、次の計算式によって算出された金額まで非課税となります。
500万円×法定相続人の数
現金や預金として相続すれば相続税がかかるケースでも、生命保険金として受け取れば、一定額までは非課税になります。預金などは、生前に相続人を受取人とした生命保険に預け替えすることで、相続税を軽減することができます。
・お墓や仏壇を購入
墓地、墓石、仏壇、仏具は相続税のかからない非課税財産です。たとえば、200万円分のお墓や仏壇などを生前に購入しておけば、200万円分の資産を相続税の課税対象から外すことができます。
まとめ
非課税で生前贈与ができる制度や生命保険の非課税枠を利用すれば、相続税の負担を軽減することができます。各種の制度には利用できる要件も決まっていますから、利用できるかどうかを確認したうえで、相続税対策を行いましょう。
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