相続税 2018.06.20
相続税が課税されるみなし相続財産とは?
相続税は、相続人が取得した相続財産の価額に応じて課税されます。一部、相続税が非課税とされる財産もありますが、原則として相続税は、遺産相続で相続人が取得する相続財産すべてに対して課税されます。
直接的な相続財産ではないものの、相続税を課税される相続財産もあります。これが「みなし相続財産」と呼ばれるものです。この記事では、相続税が課税される「みなし相続財産」とは何なのかについて解説します。
課税対象の相続財産と、みなし相続財産の違い
遺産として相続されるのは、被相続人が死亡当時に所有していた財産や権利、義務などのすべてです。被相続人の財産のうち、金銭的価値に換算可能なすべての財産は、相続税の課税対象になります。
相続税が課税される本来の相続財産の例としては、土地や建物などの不動産、現金や預貯金、自動車や貴金属、株式などがあります。物的財産以外にも、貸付金などの債権、著作権や特許権などの無体財産権も相続税の課税対象です。
一方、みなし相続財産とは、被相続人が所有していた財産ではないものの、遺産相続をきっかけとして相続人が取得可能になった経済的利益をもたらす財産のことを言います。
相続財産を取得したことと同然であると「みなして」相続税を課税するという意味で、みなし相続財産と呼ばれます。
相続税か課税されるみなし相続財産の具体例
相続財産として相続税が課税されるのか、それとも非課税なのか、みなし相続財産なのか、判断に迷いやすい、みなし相続財産の具体例をご紹介します。
被相続人の生命保険などの保険金
被相続人が保険料を負担していた生命保険や損害保険で、被相続人が死亡したことによって相続人へ保険金が支払われた場合、保険金は相続税を課税されるみなし相続財産とされます。
ただし、生命保険の保険金については、みなし相続財産とはならない部分があります。保険金のうち「500万円×法定相続人の数」に相当する金額については、みなし相続財産とはならず相続税は非課税になります。
被相続人の死亡退職金
被相続人の職場から被相続人の家族へ向けて支払われる死亡退職金も、相続税を課税されるみなし相続財産となる場合があります。原則として、被相続人の死亡後3年以内に支給確定した死亡退職金は、みなし相続財産として相続税が課税されます。
死亡退職金についても、みなし相続財産とはならない部分があります。退職金のうち「500万円×法定相続人の数」に相当する金額については、みなし相続財産とはならず相続税は非課税になります。
生命保険契約に関する権利
被相続人が他者を被保険者とする生命保険を契約しており、自ら保険料を支払っていたものの、契約者名義は相続人になっている場合があります。
相続税法では、被相続人が死亡した時点で契約者が保険契約の権利を相続する、または遺贈によって取得したとみなすことになっているので、みなし相続財産として相続税が課税されます。
一方、上記のケースでも契約者名義が被相続人になっている場合は、みなし相続財産とはなりません。
被相続人の死亡によって、解約返戻金の請求権などの保険契約の権利は相続人が取得することになります。そのため、みなし相続財産ではなく、本来の相続財産の一部として相続税が課税されます。
定期金に関する権利
年金のように定期的に支給される金銭がある場合は、前述の保険契約の権利と同じように扱われます。
つまり、被相続人が掛け金や保険料を負担しているものの現時点では給付事由が発生していない定期金給付契約があります。
契約者名義が相続人などの他者になっている場合は、契約者は定期金給付契約に関する権利を相続または遺贈によって取得したものとみなされるので、みなし相続財産として相続税が課税されます。
保証期間付き定期金に関する権利
被相続人が保証期間の付いた定期金(保証期間付き年金保険金など)の受給中、その保証期間内に死亡すると、残っている期間については遺族に定期金または一時金が支給されます。
被相続人が保険料を負担していた場合は、遺族が受給権を相続または遺贈によって取得したものとみなされるので、みなし相続財産として相続税が課税されます。
遺言によって経済的利益を受ける場合
遺言により、著しく低い価額で財産を譲渡してもらったり、債務を免除してもらったりした場合も、経済的利益を受けたことになるので、みなし相続財産として相続税が課税されます。この場合の相続税は、受けた経済的利益の相当額に応じて課税されます。
まとめ
相続税が課税されるみなし相続財産は、本来の相続財産との境界線が微妙な財産です。みなし相続財産について、相続税はかからないと思って遺産分けをしてしまい、後になって相続税のことでもめてしまう事例もあります。
遺産を分ける前に、みなし相続財産についての理解を深めておくことは大切です。
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