相続税 2019.07.24
相続税が2割加算されるケースとは?
一度でも相続税の計算を自分で行ってみた人ならご存じの通り、相続税の計算は非常に複雑で、専門的知識のない人の手にはとても負えないものです。
基本の計算だけでもややこしいですが、多種多様な控除の適用や税額の加算制度があるため、正確な相続税計算は専門家でもミスをすることがあるほど難しいものとなっています。
相続税の計算では「2割加算」という特殊なルールがあり、相続に参加する一部の人にとってはとても大きな影響を及ぼすものです。今回は、相続税が2割加算となるケースについて解説していきます。
相続税の2割加算とは何か
相続税の計算は、相続人全員の課税価格を計算し、相続税総額を計算し、相続人それぞれの納付税額を計算するという順序で行います。
最後の段階で各人の納付税額を決定する際に、配慮されるべき事情を持つ相続人には相続税額の控除や特例を、反対に相続税額が加算されるべき人には2割加算が適用されるのです。
基本的に納税額が高額になりやすい相続税では、2割加算は大きな負担増を意味します。本来の相続税額が100万円だとすれば、2割加算の対象者は120万円を支払わなければなりません。
相続税を2割加算される相続人とは
相続税を2割加算されることがないのは、被相続人の配偶者、および両親や子どもなど、一親等内の血族だけです。つまり、それ以外の立場の人は基本的に全員が2割加算されることになります。
被相続人の祖父母
二親等の血族である祖父母は、2割加算の対象です。
被相続人の兄弟姉妹
二親等のため、兄弟姉妹も2割加算の対象となります。
代襲相続人ではない孫
孫の親が存命中であれば、孫は代襲相続人とならないため、2割加算の対象です。ただし、孫の親が亡くなっており、孫が代襲相続人となっている場合については、孫であっても2割加算の対象とはなりません。
被相続人の甥や姪
ごくまれに兄弟姉妹の代襲相続人として、被相続人の甥や姪が相続に参加することがあります。甥や姪は三親等の血族となるため、2割加算の対象です。
遺贈により財産を取得する他人
友人や内縁の配偶者など、相続人になり得ない他人が財産を取得する場合は、当然ながら2割加算となります。
なぜ相続税が2割加算になるのか
前項でご紹介してきた立場の人は、なぜ2割加算された相続税を支払わなければならないのでしょうか。
全員の共通点として、被相続人との関係が遠い、という点があることに気付かれたかもしれません。
一軒の大きな家に親族が集まって住むのが普通だった時代は過ぎ、現在は三世代が同居することも少なくなりました。血縁関係でいうところの二親等以上離れた親族の場合、別居していてたまにしか会わないということもよくあるでしょう。
では、繋がりの薄い親族が、被相続人が築いてきた財産の一部を手にすることは当然のことでしょうか。ほとんどの場合、偶然の要素が強いはずです。
反対に、被相続人の配偶者や親、子どもは、多くの場合被相続人と長年生活を共にし、様々な面で支え合って暮らしてきたと考えられます。経済的にも、被相続人に依存している部分が大きいことでしょう。そうであれば、相続税の点で優遇されるのは当然といえます。
まとめると、二親等以上の血族および他人が2割加算される理由は、それが多くの場合労力や代償を伴わずに偶然得た利益であるから、ということです。
なお、代襲相続人ではない孫が相続税を2割加算される理由には、一代飛び越えて孫に財産を渡らせることは、事実上、相続税を1回分免れることに等しいという点も含まれています。
養子は2割加算の対象になるか
被相続人との血縁関係が二親等以上だと相続税を2割加算されるのであれば、養子はどうなるのでしょうか。養子にも色々な立場がありますが、ここでは3種類の養子について取り上げます。
1.被相続人の養子
正式な養子縁組を結んでいる養子は、相続では実子と同等の立場となるため、相続税2割加算の対象にはなりません。
2.婿養子
婿のままでは相続に参加することはできませんが、婿養子となった場合は被相続人の実子と変わらない立場で相続人となることができます。
子の配偶者を養子にするという点では、嫁を養子にするケースもあります。嫁も婿養子と同様のルールで相続に参加することが可能です。
3.孫養子
養子の中で孫養子だけが、相続税の2割加算の対象となります。理由は、前項で解説した通りです。ただし、養子でもあり代襲相続人でもある孫の場合は、代襲相続人としての立場が重視されるため、相続税2割加算の対象外となります。
まとめ
相続税を2割加算されることは不満に思うかもしれませんが、働かずして利益を手にできるのですから、必要経費と割り切って考えましょう。どうしても相続税を一括で納められない場合は、延納など分割納付の相談も可能です。
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