相続税 2020.06.04

遺留分侵害額で簡単に解決できないわけ

遺産相続において有効な対策といわれている遺言書ですが、実務においては実は返って争いの種になることが多々あります。
なぜなら遺言書のせいで遺留分を争うことになるケースが多いからなんです。
そこで本記事では、遺言書で揉めて泥沼化するケースと対処法について詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

遺言書が発端で揉めるケース

遺産相続の有効な対策といわれている遺言書ですが、専門家の間では実は逆のケースも多いという噂があります。

というのも、遺言書を書くケースというのはそもそも法定相続分通りではない分け方を希望しているから書いているわけなので、ほとんどのケースにおいて遺言書で指定されている取り分というのは「不公平」であることが多いんです。

それが相手の遺留分まで侵害していなければ特段問題はないのですが、「すべての遺産を長男に相続させる」といった極端な割合を指定している場合は、他の相続人の遺留分を侵害してしまうので、遺留分侵害額請求の問題に発展してしまいます。

遺言書の作成を弁護士などの専門家に依頼していれば、遺留分を侵害しないような遺言書を提案するのですが、初心者の方が自分で作成した遺言書の場合は、遺留分を考慮していないことが多いので、実際に相続が発生した時に揉めてしまうのです。

800万円の遺産で泥沼化

相続人が兄弟2人だったケースにおいて、遺言書で長男に全財産を相続させるという内容の遺言書が見つかった事例で、納得のいかなかった次男は遺留分があるとして遺留分侵害額請求(当時は遺留分減殺請求)を試みたそうです。

この場合、弟の遺留分は法定相続分の半分なので1/4で200万円です。ですから、遺言書があったとしても弟は遺留分侵害額請求をすることで、兄から200万円を受け取ることができます。

あくまで理屈上は。

ところが、現実はそんなにうまくはいきません。

遺留分侵害額請求にかかるコスト

仮に弟が遺留分侵害額請求の意思を示して、兄がそれにすんなり応じればいいのですが、ほとんどの場合、応じないことが多いので、弟としては調停や訴訟を起こすしかありません。

となると問題になるのが「弁護士費用」です。

相続に関する紛争は、調停や裁判になる場合弁護士を立てなければ実質的に解決することは難しいので、それなりの弁護士費用を払わなければなりません。

弁護士費用は弁護士によっても異なりますが、遺留分侵害額請求などの紛争は長期化することも多いので、100万円以上のコストがかかる可能性は十分にありえます。

しかも、弟が弁護士を立てるとなると当然兄も弁護士を立てることになるので、仮に弁護士費用が100万円だとしても裁判をすることで合計200万円という無駄な損失が出てしまうのです。

そもそも弟の遺留分が200万円ですから、裁判を起こして請求して仮に認められたとしても、経済的な損失を考えると訴える利益が少ないとも考えられます。

このように遺産相続における紛争は、法律でこう書いてあるからこうすればいい、という単純なものではなく、訴えた場合にかかるコストもきちんと考慮に入れた上で、できるだけ話し合いの中で解決させることが一番重要なのです。

 

遺留分侵害額請求のベストな解決法

このように遺留分侵害額請求が裁判沙汰になってしまうと、弁護士費用がかさめば訴えを起こす意味すらなくなってしまう可能性があります。そのため、まずは裁判外の任意の話し合いで決着をつけることを第一に考えるべきです。

任意での話し合いで決着をつけるコツは、妥協点を示すことです。

例えば先ほどの事例の場合であれば、仮に裁判になるとお互いに100万円以上のコストを負担することになってしまいます。

それであれば、お互いに妥協して本来遺留分で200万円請求できるところを150万円で我慢するから、裁判外で決着をつけよう、という感じで折り合いをつけるのです。

弟からすれば、本来遺留分は200万円あるんだからそんなの納得できない、と思うかもしれませんが、実際に裁判になると200万円回収できたとしても100万円以上出費がかさむ可能性が高いので、手取りとしては100万円を割る可能性も出てきます。

そう考えれば、150万円に妥協したとしても総合的に考えれば得と思えるのです。

遺留分侵害額請求の問題において重要なことは、今回ご紹介したように訴えた場合のコストも含めて考えた上で、ある程度妥協できるかどうかです。

相続はどうしても感情論になりやすいので、妥協することは簡単ではないかもしれませんが、経済的な利益がなければ訴えたところで時間の無駄になってしまいます。

適度なところで妥協することで、親族間の溝が深くなる前に解決できるので将来的なことを考えてもメリットは大きいといえるでしょう。

 

まとめ

遺留分侵害額請求権という権利があることを知っている人が増えてきていますが、現実的には相手が納得しなければある程度のところで妥協も必要になってきます。

遺留分で揉めそうな場合は、裁判するのことと妥協することを比較検討して、よりメリットがある方を冷静に選ぶことが何より重要なのです。

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