相続税 2020.10.05

元カノに全財産を。税務署から贈与税を課税されたわけとは

皆さんは遺言書を書いていますか?
遺言書は書かなければならないものではありませんが、相続人以外の人に財産を渡したい場合は遺言書が絶対に必要です。
今日はそんな大切さがわかる事例をご紹介したいと思います。

記事ライター:棚田行政書士

余命宣告を受けた人のとった行動とは

主人公Xさんは60代で、すでに両親も他界していて天涯孤独な人生を送っていました。唯一いたのは姉ですが、すでに嫁いでいてほとんど連絡はとっていません。

そんな中、体調を崩して病院を受診したところ、医師から余命3ヶ月の宣告を受けることになったのです。

さて、もしも皆さんがXさんの立場だったらどうするでしょうか。

Xさんには人生に思い残すことが1つだけありました。

それは学生時代に唯一付き合っていた彼女Yです。

すでにもう何十年も合っていませんが、どうせ死ぬのなら一目会いたいと強く思ったのです。ですが、Yはすでに結婚していて子供もいました。

ただ、死が迫る中どうしても人生に悔いを残したくないと、XはYに最後に会いたいと手紙を書いたのです。

それを受け取ったYは、最後にどうしてもXを看病してあげたいと夫に相談しましたが、当然夫は大反対しました、そりゃそうですよね。

結果、どうなったかというとYさんは夫との籍を抜いてまでしてXに会いに行ったんです。

YさんはXさんの入院する病院にかけつけて、そこでかけがえのない数日間一緒にすごしたそうです。そしていよいよXさんの容体が悪化して、もう長くないという状況になりました。

 

最愛の元カノに全財産を

さあ、ここからが今回のポイントです。

Xさんは死ぬ前に会いに来てくれたYさんに全財産を託そうと考えました。

「自分が死んだら、遺産である3,000万円の預金は全部Yさんに受け取ってほしい」

「ありがとう。でもできるだけ長生きしてね」

こんなやり取りがありました。

その場に同席していたXの姉もその提案に同意して納得したのです。

そして数日後、XさんはYさんに看取られながら安らかに亡くなられました。

ドラマのようなストーリーですよね。

ただ、このままハッピーエンドでは終わらないんです。

Yは3,000万円を予定通り受け取りました。通常であれば相続税の課税対象になりますが、当該相続では以下の金額が基礎控除額となることから、相続税は課税されないと考え特に相続税申告はしませんでした。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数

法定相続人は姉1人なので3,600万円となり相続税申告は不要になります。

 

忍び寄る税務署の影と思惑

本来であればこれで相続手続きは終了のはずなんですが、驚くことに数ヶ月後Yさんのところに税務署から連絡がきて、Yさんが受け取った3,000万円に贈与税を課税すると指摘してきたのです。

さあ、これどういう意味か分かりますでしょうか。

Yさんとしては、Xさんか直接遺産をもらったという感覚だったのですが、税務署としては、Yさんは法定相続人でもなければ遺言書で遺贈されているわけでもないので、正確には遺産を姉が相続したうえで、Yに贈与したことになると主張してきたのです。

仮に3,000万円の贈与となれば、税率は50%ですから大問題です。

このように両者の主張は真っ向から対立することになりました。

皆さんならどっちの主張が認められると思いますか?

一見すると税務署側の主張が法的には正しい感じがしますが、この問題には一つ重要なポイントがあります。

それは亡くなる間際のXとYのやり取りです。

「自分が死んだら、遺産である3,000万円の預金は全部Yさんに受け取ってほしい」

「ありがとう。でもできるだけ長生きしてね」

このやり取りって、法的にいうと死因贈与契約といいます。要するに、死んだらあげるよ、というのが死因贈与です。死因贈与は書面である必要はありません。

そして死因贈与は遺言書による遺贈と税法上は同じように扱うので、死因贈与が成立すれば贈与税ではなく相続税の対象となるのです。

ただ、書面という確たる証拠がない点が問題だったのですが、同席していた姉が証言してくれたことで何とか死因贈与が認められて贈与税の課税は免れることができました。

 

まとめ:遺言書の重要性

遺言書というと遺産分割のトラブル防止というイメージがあるかもしれませんが、今回のようなケースでは税金の問題も大きく絡んできます。Xさんが亡くなる前に口頭ではなく、遺言書に書いておけば税務署から指摘されても簡単に退けることができたはずです。

遺言書は所定の様式に従って書けば、入院中でも作成することは可能ですので、遺産を渡したい相手がいる方は必ず遺言書を書いておきましょう。

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